第13話 二つの役職

「僕は今、裏切り者と、妖だ。だけどそれが都合が悪くてね…。」


「都合が悪いって…そういうことか。役職が交換できなくなるのか。」


「御名答!」


僕は手をパチパチと叩いてみる。表情はあまり変わらなかったけど、頭のところからブチッていう音がした気がするけど、気にしない!気にしない!


「そう、役職が交換できなくなるっていうデメリットがあるんだよね…。自分の役職が妖だったときに、誰かと役職を交換してしまうと、妖は他の人に移ってしまう。そこがこの『るぅる』の難点だよね。」


「カッコつけているところ悪いんだけどさ。今更だが、他人の指もってんの怖くね?」


な、なぬ〜!カッコつけてなんかないし!僕はできる限り貴方に分かりやすいようにしていただけなのに!もう!

あと僕はサイコパスとかじゃないからね!?必要だから仕方なく持ってきただけだからな!?


「し、仕方ないじゃん!この作戦を実行するにはこれしかなかったんだもん!僕だって焦ったよ?急に『ピコン』って音がなって、スマホを見たら役職が妖だったんだもん!それで、好奇心でちょ〜っとね。試してみたら行けたから、何故か入ってたナイフを使って切ったんだよ!分かった?だって…」


「はいはい、分かりましたよ…とにかく妖の使い方には気をつけるんだぞ…」


頑張って弁解しようとしているのをさらっと流され、雅くんが先に歩きだす。


「あ!まてや!」


僕はそう言って走り出す。だがそこには…


「や、ヤバイのら。あの子を止めなきゃなのら…。とりあえずみんなに知らせなきゃいけないのら…」


物陰から覗いていた一つの影に気づいていなかった。


【逃走者視点】

「大変なのら〜っ!」


私はドアを思いっきり開ける。あっ!蝶番が壊れたっ!


「何をしてんだよ…んで、何のようだ?裏切り者でも見つかったのか?」


淡々と彼が言葉を並べる。感情ってものがないのらね。


「そうなのら。私が街を索敵していたら赤いリストバンドを着けている人と、一緒に歩いていた人がいたのら。」


「…それだけ?僕たちに危害を加えようとしたわけじゃないじゃん。めんど…」


喋ろうとしていたのに邪魔すんなのら!本当に空気が読めないよなのら…。


「それでさ、裏切り者の話を聞いていたのら。すると彼はこう言っていたのら。

『僕には二つの役職を持っている』って!

その2つの能力は【妖】と【裏切り者】のら。だから今から彼に触って妖を取るのら。」


「あっそ…。好きにすれば。適当に数人連れてって。」


あ〜?そういう態度をとるんだのら。


「誰でもいいのら?」


「いいぞ。」


よし。面倒くさいことにしてやるのら。


「じゃあ、貴方で!」


「おっけ〜。……ん?ちょっとま…」


「いくのらよ〜!」


「ああああああああ!めんどい!やめろ!」


そういう彼を連れていくのであった。

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