第14話 市民と鬼の狭間で
【市民視点】
「んで、僕を連れてきたのには何か理由が?僕はただの市民だが。」
彼が不満そうに言ってくる。うん。返す言葉は決まってるのら。
「ムカついたからのら。ヤバそうになったら肉壁になってのら。」
彼が衝撃を受けた顔をする。当たり前のら。鼻についた者はこうなるのら。
「僕をなんだと思ってるんだ…」
「NIKUKABE☆」
「おい!……なぁ、どうやって探すん?俺が役に立つとは思わないが。」
少し不服そうに言ってくる。働きたくないというと解釈してよろしいのら?じゃんじゃん働いてもらうのらが。
「安心してのら。私の役職は【観測者】のら。説明はされていなかったけど、指定した鬼がどこに居るかが分かるのら。だから安心して犠牲になってもらえるのらぁ〜!」
私は安心してという意味も込めて、彼の肩を叩く。表情は変わらなかったが、殺意が漲っていた。あぁ、やばい。
「あっのなぁ!お前は人の命をどう思っとん?なぁ!のらのらのらのら言ってるけどさぁ!僕らはこんな極地に立たされているのによくそんな呑気でいられるよなぁ!肉壁になるならお前のほうがちょうどいいサイズだろ!チビ!」
あ?チビ…だとのらぁ?!復活させてあげたのに…こいつ…ほんっっとに許さんぞ
「チビって何のら!復活させてあげたのによくそんな生意気な口を利けるのらねぇ!大体私チビじゃないのらぁ!私の中では標準だし!」
「あ?なんだよ。復活はランダムじゃねぇかよ!お前が復活させたわけじゃないだろ!あと、お前の世界を標準にしたらどんだけ平均身長が低くなるんだよ!見た感じお前、身長140cmぐらいしかねぇぞ!」
「んだとのらぁ?」
言い合うという不毛な時間を過ごしていたら声をかけられる。
「あの…喧嘩はよしたほうが…鬼に見つかりますよ…?」
「ちょっと、これは私達の問題の…ら…」
振り返ると、そこには男女二人が立っていた。片方は女性の顔立ちをしていて、身長が高く、謎のロックの服を着ている鬼。そして…隻腕の運動服の男の人。この人は…
この人が二つ役職を持っている人だと認識したときには自分の体が動いていた。
絶対にこの人の妖を取って市民陣営にする!
彼も私の行動を察したようで一緒に走っている。なんだ。肉壁にしようとしたけど案外使えるのら。
「戻って来るのらぁ!」
私達は抵抗をしない二人に触る。
よし。これでどちらかは妖になっているはずのら!
「お前!妖になったのらか?」
私は彼の方を見る。絶対に彼は妖になっているのら。そう希望を持って見た光景はすぐに絶望と変わった。
「のらのら野郎。わりぃな。僕は先に逝かせてもらうぜ。」
彼は笑みを浮かばせたまま、結晶となって空に飛ばされていった。
「ごめん…反射的にタッチしちまった…」
私に向かって謝ってくる。どうして…どうしてのら…どうして妖にならなかったのら…
「でもさ。ちょっと話したいな。どうしてこんなことしたのかさ。」
男の人のほうがなんともいえない表情で話しかけてくる。私にはその表情が怖かった。笑っているような、なにか憐れむような。
怖い…怖いのら…何を考えているのら?どんな目に遭うのら?殺されるのかのら?
その時にはもう、恐怖でしっかりとした考えができなくなっていた。
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