第10話 開戦〜無間地獄〜

【鬼視点】

「こいつへの復讐も終わったし、俺は戻らせてもらうわ。んじゃ。」


彼はそう言い残した。僕は彼に恐怖を感じていた。異様なほどのサイコパス性、それに戦闘力。とても12で死んだ子とは思えなかった。


〔彼に反抗したら死ぬ。〕


その一文が自分の頭によぎった。


「ん?んん?うわあっ!なんで死んでるの?というか、僕の服血まみれ…しかもグロい…」


彼が驚いた声を出す。それはそうだろう。いきなり目の前に死体が転がっているんだから。


「あ、あの、ありがとうございます。この連続快楽殺人犯を倒してくれて…あいつは私の大切なものを奪っていきましたから。」


彼が笑みを浮かべる。その笑みは、先程の龍勢の笑みよりも、優しく、温かく感じられた。それもそうか。


「あ、そういえば名前を聞いていませんでしたね。貴方の名前はなんですか?」


「ああ、僕の名前は…」


言いかけた途端、スマホから音声が流れる。


もしかしてこれって…


そう思ったときには自分は落ちていた。


「なんだよぉ!またかよぉ!もー!」


僕は近くにあったマンションに降りる。


「いてて…」


衝撃で足が痺れる。折れてはなさそう。


そういえば飛鳥はっ…


僕は上を見上げる。落ちてきてるっ…これくらいなら!


「親方!空から女の子が!」


ギリギリで飛鳥をキャッチする。そして、そのまま引き上げる。


「飛鳥…助けられなくて…ごめん…」


僕は飛鳥に縋り付く。すると、いまにも温もりが無くなりそうなものが僕の頬に触れる。


「飛鳥…?」


そして、微かな声で僕に話しかける。


「楓…あのね、鬼が治療してくれたんだよ。でもね、私はもう無理なんだ。」


「飛鳥!もう喋るな!これ以上喋ると…」


「えへへっ、優しいね。楓は。失血死しちゃうっていうんでしょ。はぁ…はぁ…どうせさ、長くないんだよ。私は。だから…さ?最後に言わせてよ。」


今にも聞こえなくなりそうな声で言う。


「大好きだよ。楓」


僕に触れる手の温もりが無くなる。


「あす…か?死んじゃったの?」


返事はいつまでも返ってこなかった。


「起きてよ…飛鳥…」


良い夢を見ているような満足そうな顔で寝ている飛鳥を見て、涙が溢れる。


「遅かったか…流石に無理だった。すまない。」


僕は涙を拭う。


「貴方が謝ることじゃありません。私が感謝を伝えることです。貴方の治療のおかげて飛鳥との最期の時を過ごせました。本当にありがとうございます。それと…気になったことがあるんですけど。」


「なんだ?僕の名前なら氷室 雅だが?」


「あ、そっちじゃないけどありがとうございます。どうして、鬼は私たちを襲うのかなって。少し気になっただけです。」


雅さんは少し考えて、


「OK。君なら信用出来る。教えようか。で起きたことを。」

そうして、僕は雅さんのことを聞いた。

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