第6話 開戦〜堆圧地獄〜

体が宙に浮かんだときは、理解が追いつかなかった。天に向かって足から落ちてゆく。上の風景を見た時、すべてを察した。


「天変地異って…そういうこと…?」


このいべんと天変地異は世界そのものがひっくり返った世界になっていた。


慌てて僕はマンションの柵に捕まる。このままだと絶対に死ぬからな…


「やあ!皆げぇむを楽しんでくれているかな!?絶対に楽しんでいるよね!

さて、天変地異の意味を正確に知っているかな?国語辞典によると、

ーてんぺんちい【天変地異】〔竜巻や地震など〕天や地上に起こる、自然の変わった出来事ー

って乗ってるんだよね!そこで私達は考えたんだ!自然じゃなくても、天や地上が異変をきたせば天変地異ってなるってね!

だけど、流石に無策でこんないべんと発動するくらい私達は馬鹿じゃないよ!

もし、この中の誰か一人でも生き残ったら生き残った人数✕5人を復活させてあげるよ!だけど今はオニごっこ中!鬼もこのいべんとに巻き込まれているけど、タッチの能力は備わっているから気をつけてね!それじゃ!」


そう言って放送が途切れる。ふ、ふざけるなぁ!死にかけとんぞ!おん?


「でもなんとか…助かりそうだな…」


僕は逆上がりの要領で上の部屋に入る。親切に鍵は開けてくれていたから入るのが容易だった。これどういう原理で働いてんだよ…天と地がひっくり返るなんて…


「楓…?」


後ろから聞き慣れた声がする。


「飛鳥…よかった…会えた…」


僕は飛鳥を抱きしめる。もう離れたくない。その一心だった。


『参加者に触れたので、役職の入れ替えを行います。』


胸ポケットに入れておいたスマホから音声が流れ出てくる。


『あなたの役職は【裏切り者】です』


「は?」


思わず声が出る。


「か、楓…」


「ねぇ、飛鳥。私を騙そうとしたの?」


「いやっ…そんなことは…」


「ほんっと、嘘吐くの下手だよね。もういいよ。じゃあね。」


「待って!」


「妖、1時間以内に使わないと死ぬから。」


僕はそう言い残しベランダに立つ


「じゃあね。もう僕がいても君たちの邪魔だ。」


「行かないで!」


後ろで飛鳥が叫ぶが、僕は耳を塞いでベランダから飛び降りた。体が宙に浮く。これで皆の負担にならない…そんな甘っちょろい考えは一瞬で吹き飛んだ。


ただ怖い。ただただ速度を増していく体。この役職に自分がなったら皆のために死を覚悟していた。


だけどいざ飛んでみるととても怖い。だが、ここで予想外の出来事が起こった。


『天変地異、天と地の向きがひっくり返ります。』


僕と落ちているスマホからそう聞こえた。その瞬間、僕は頭から地面に向かって落ちていった。


「ちょっと待って!」


こんなハズじゃ…やっべぇ、意識が…


どんどん地面に近づいていく。あぁ、死んだな。これ…


「メンタリスト使用!宙に浮け!」


そう、下から声がする。地面すれすれのところで自分の体が浮く。


「チッ…ここでメンタリスト使っちまったか…まぁいい。こいつは手駒にして使う。」


中背中肉の体つき、坊主頭、特徴的な右耳、爪を噛む仕草…間違いない…


「田中 幸三!お前…なんでここに!?」


「あ?なんだい?坊っちゃん。もしかして君の家族とか殺したりしちゃったかなぁ?」


「お前…絶対に許さねぇ。」


「損な舐めた口叩いて大丈夫なのかなぁ?」


僕の首を掴んで締める


「あ、ぐっ…」


「命は俺が持ってるんだぞ?今ここで殺すことだって出来るんだ。さあ、選べ。俺に従って奴隷となって死ぬか、今ここで死ぬか。」


「し、従い、ぐっ、ま、す…」


「最初からそう言っとけばよかったんだよ。」


首の圧迫感がなくなる。


「ゴホッ、ゴホッ。」


「おら、早く行け。お前が先頭だ。」


無理やり前に行かせられる。絶対に許さない。この役職を使ってあいつを殺す。

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