第32話 原因

「どうして、左手がないのかって言うとな、ほら、僕って元雷鬼と行動してたじゃんか。」


「そうのらね。それで私が無理やり、裏切り者と観測者を交換したのら。」


あのー…記憶の繋がり的にこの状況はおかしいんですけど…。だって、僕が最後に見た光景って頭を蹴り上げられて、綺麗な夕焼け空を見たんだよ。それで、次に意識が戻ったときには、ナイフも固定されていて、血も止まってて、それでなんか話し始めてるんですけど。一旦聞くか…


「それでな。市民陣営と、人狼陣営が逆転した時。そいつが、『道連れだぁ!』って言って、僕の左手をタッチしてきたんだよ。で、流石に死にたくないから、自分の左腕を切り落として逃げたって訳。あいつは体が崩れていたから多分死んだだろうな。」


切り落とせば助かるんだ。かなりの非常事態だけどね。それをやるってことは。


「あのー、話を聞く前まで意識がなかったんですけど、田中が倒れてるってことは、氷室さんと、大久保さんが倒したってことですよね。ありがとうございます。」


「うーん…倒したのは、たしかに私だけど、その時まで時間稼ぎしていたのは貴方のら。氷室さんは寝てたし。」


「うん。寝てた。」


え?じゃあ、私の中の誰がそんなに時間稼ぎしたの?時間稼ぎって言っても、安静にしている状態でもナイフのせいでめちゃくちゃ痛いんだが。


「私の中の誰がやったの?」


「その時の意識がなかったのかのら。…言って良いかのら?」


「え?いいけど。なんでそんなにためらっているのさ。」


「時間稼ぎをしていた人は、のら。その人が痛みを我慢しながら戦ってきたのら。」


?え?それは本当のことなの?お兄ちゃんは7年前に田中に襲われて死んだはずだよ?」


「あぁ、本当のことだな。確かに7年前に襲われて死んだ。だけどな、そのお兄さんが、楓の精神に憑依したんだ。貴方の家族の死というショックのせいでな。だから今、二重人格者なんだよ。君は。」


二重人格…?今まで出てこなかったんだけど…でも…


「そっかぁ…嬉しいなぁ…二重人格とはいえ、まだこの世に存在してるんだから…」


僕の顔がほころぶ。あぁ…今まで生きてきてよかった…


「楓、ありがとな。手当をしてくれて。こんなところに居たらいつか見つかる。移動をしようか。」


僕たちは歩き出す。そして、次の曲がり角を左に曲がる。だけど、僕たちは気づいていなかった。


「はっは…ゴホッ。トドメを刺さなかったことを後悔するんだな。『三風 龍勢』!詰めがあめぇんだよ!」


後ろから狂気に満ちた人間が追いかけていることを。


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こんにちは。むぅです。


今思ったんですけど、三風の体頑丈すぎない?いくらナイフを固定しているとはいえ、流石に歩けないと思うんだが…。まぁ!SFですから!そうやって認識しておいて下さい!


以上!

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