第30話 情状酌量

「だから、そんな直線的な攻撃当たらねぇっつうの。いい加減学べよ。」


さっと躱して余裕そうに見せているが、実際には腹がめちゃくちゃ痛い。それはそうだろう。

内臓には刺さっていないとはいえ、ナイフが体に潜り込んでいるのに動いているから、ナイフの刃が周りの筋肉に当たって血が出る。これ続けているとヤバイかもしれん。


というか、さっきからずっと俺に直線的な攻撃を仕掛けては、受けられるか、こちらが反撃をして逃げるか、をずっと繰り返しているんだよな。こいつ、俺が出血多量で動けなくなるのを狙っているのか?それにしては地道すぎる作戦だな…


「あのなぁ。お前は知らされていないかもしれないけどなぁ、市民陣営の役職にちょっとが付いたんだよ。」


GMぅ?死に過ぎだからって急遽バランス取らないでもらえるかなぁ?こいつのせいで死にかけとんだけど。え?


「俺の役職、【メンタリスト】に付いたバフはなぁ…、自害しろとか、強力な言葉が使えなくなった代わりに、5使5だよ。それで今の今まで時間稼ぎをしていた理由が分かるよなぁ!?」


まずい。というか、今気づいたけど、【氷鬼】の能力で、普通にこいつ固めておけばよくね?


「おい!お前!こいつの周りに氷を…」


「ZZZ…」


あっ…終わった…こいつ、安らかに眠っていやがる。さっきの能力使用で、体力を使い果たしたか?


「【メンタリスト】使用!うご…ガボッ!ボゴッ!」


何故かあいつの口の中にが絶え間なく注入されていっている。


何なんだこれ?俺がこの体を使っているときは、楓の意識はその時だけ無くなって、楓がこの体を使っているときは、俺の意識は全く無いから、多分、楓が出会った奴なんだろうけど…


「大丈夫のらか?!楓くん?」


絶対に忘れられない語尾の人が来たんだけど。えーっと…仲間ってことでいいんだよな?


「ありがとな。あと、今は楓じゃねぇ。龍勢だ。簡単に言っちゃうと、楓の二重人格。」


「そうのらか。って!ナイフが刺さっているのらよ!あとで手当するのら。氷室さんが。」


人任せやなぁ…まぁいいや。田中が水を口から溢れ出させながら、こちらに走ってくる。肺に水が入っているだろうが。ご苦労さんってとこかな。


俺を止まらせて、ナイフを抜くつもりだったのだろうが、それが失敗した今、田中は素手で殴りかかってきた。だが、その拳が届く前に、田中が酸欠で倒れた。口からそんなに水を入れられ続けたらそうだよな。


「私は殺す必要がないのら。龍勢さんが、どうするのかを決めるのら。」


僕の方を見て来る。殺しておいた方が安全っちゃ安全なんだけど、一回死んで、しかも肺に水が入るとかいう苦しい思いをしたから流石に懲りただろ。死んだやつを生き返らせて、もう一回殺すとか、ただの死体蹴りじゃん。


「やめておく。流石にもう懲りただろうからな。」


「分かったのら。じゃ、放おっておくのら。仕方ない。手当をするから。動かないでのら。」


「あ、あぁ…ちなみに、どんな感じに手当をするのか?」


「え?まず、ナイフを引き抜いて、そこの中に水を入れて、その上を近くの病院にあった、ガーゼと一緒に縫うのら。」


「ちょっと待て流石にそれは死ぬから、あいつ起こす。」


俺は寝ている鬼を指差す。


「あ〜、氷室さんいるじゃないかのら。よし。」


あ…あぶねぇ…普通に殺されるところだった…


そうして、氷室っていうやつを起こすのだった。なんでこいつ左手無いんだ?


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

市民陣営の役職にちょっとが付いたんだよ。


どうもこんにちは。むぅです。龍勢、地味に20話ぐらいぶりの登場ですね。登場させる暇がなくて登場させてなかったんですけど、やっぱりかっこいいですよねぇ〜(自画自賛)

あと、ナイフを刺しても内臓に当たらない位置ってあるんかな?と思って探したんですよ。そうしたら、ありました。肝臓と、胃の間の隙間でした。なので、そこに刺さったって思って下さい。


以上!

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