第35話 夏休み②
泣きたくなった。
私は母に、全てを受け入れてほしかった。
私がくーちゃんを怒っても
『そんな怒らないであげてよ、元気があっていいじゃない。可愛い孫なんだから』
と言ってほしかった。
くーちゃんやるーちゃんが騒いだり迷惑をかけても
『孫は可愛いけど、こんなに手がかかるなんて、あなたは毎日二人も見て頑張ってるね。えらいね』
と言って欲しかった。
お母さんにありがとうと言いたかった。
大金はたいてまで、孫との思い出をつくるためにホテルとってくれてありがとうって言いたかった。
子供たちは可愛いけどヘトヘトだから休みたいよと甘えたかった。
夏休みは、母に会えるから嬉しいと言いたかった。
どうしてけんかばかりしているんだろう。
なんでうまくいかないんだろう…。
追い討ちをかけるように、新幹線にのるまえにるーちゃんが寝た。
もう3才にもなったから、ベビーカーを嫌がってのらないため、歩かせていた。
抱っこをするしかない…
16キロのるーちゃんを抱えて、くーちゃんを見ながら新幹線まで歩いた。
途中、義両親へのお土産も買った。
母は、私のキャリーを最初もってくれたからるーちゃんを抱っこ紐にのせるだけで済んだが
母もホテルに止まっていたため、大きいキャリーをひいていた。さすがに二つ持つのは、エスカレーターにのるときにきついと言ったため、途中からは抱っこしながらキャリーをひいた。
新幹線の改札口について、母にお礼を言って別れた。
今年は酷暑ということもあり、体力も限界だった。
くーちゃんの顔も真っ赤で、熱中症になったらどうしようと不安になり、新幹線を待つ駅のホームの自動販売機でアイスを買って食べさせた。
るーちゃんはタイミング悪く起きた。
どうせなら、新幹線で寝ていてほしかった…
これからが長いのに、新幹線がくる前に起きてしまうなんて…。
とりあえずるーちゃんにもアイスを食べさせた。
熱中症は防ぐことができ、無事に新幹線へ足を踏み入れたのだが…
なんと、宮崎県で地震が起こり、新幹線が止まった。
最初はどんどん新幹線内の電気が消えて暗くなり、速度が落ちていくことに、なぜなのか理解が追いつかなかった。
地震による影響で停電が起きたため、すべての新幹線の相談を停止したとのアナウンスが流れ、やっと腑に落ちた。
すでにヘトヘトだったのにこんなことまで起きるのか…
子供たちを不安にさせないためにも
『こんなときこそ、明るく行こう』と
盛り上げ?て、スマホを見せながら楽しく会話をした。
外は40°近いのに、エアコンが止まったため、カーテンをしめてくださいとのアナウンスも流れた。
(子供達が熱中症になったらどうしよう…というか、ここはどこだ?最悪、ここから降りて長い時間歩くことになるのだろうか…るーは抱っこして、くーには歩いてもらうしかない…)
明るい会話をしていても脳内ではマイナスな展開をシュミレーションしていた。
私は親だから子供は守らなければならないという本能があった。
結局、杞憂に終わり15分後には運転が再開された。
影響としては到着予定より30分ほど遅れただけだった。
だが…そのせいで、新幹線を降りたあと最寄駅まで帰る電車が退勤ラッシュだった。
子供二人と手を繋ぎ、むぎゅーとおしつぶされるような状態で電車はすすんだ。
子供なんて両足が浮くレベルに人の波に挟まれていた。
くーちゃんは笑っていて、るーちゃんは不安そうだった。
ごめんね…と謝りながらもこれもなんか思い出に残るな、なんて呑気に考えていた。
新幹線を降りた駅まで本当は旦那に迎えにきて欲しかったが拒否されていたので最寄駅までは来てもらった。
『料理するの大変だろうから』と旦那が言い
そのまま、子供達のすきなチェーン店のお寿司屋へ行った。
旦那の運転で心地のいい揺れを感じながらひどく安心した。
今回の旅で、どれだけそばにいて欲しかったか、新幹線が止まったときなんて、私が一人不安で潰されそうになり、どれだけ心細かったか、母に心無い発言をされて、どれだけ傷ついたか…
いかに旦那の存在が大きいかを再認識したし、私はいつまでも旦那に依存しているんだなとも感じた。
一人で子供二人連れて帰省してやると息巻いていたが…
余裕〜!といきがっていたが、旦那がいないと無理だった。
旦那も車の中で
『やっぱみんながいないと寂しいね。おれは3人がいてくれるから楽しい人生なんだ』
と言っていて、泣いてしまった。
普通は一人時間を楽しむんだけどね…
『出張とか、一人時間最高〜
子供がいると一人になれる時間なんてない』
と周りが言っていたことを思い出して、うちのだんなは一人をさみしいと感じるなんて素敵だなと思った。
寝かしつけもなく、隣で寝相悪くぶつかってくる子供もいなく、快適に眠れたはずなのに。
仕事を終えたら好きな時間に好きなだけ一人で風呂に入って、自由に外食もできてゆっくり味わえて、なんなら友達と飲みにもいけるのに。
と言ってみたが
『いや俺友達おらんし!』と返ってきて笑ってしまった。
いつだってこの人がいるから心が軽くなるし、楽観主義でいられるんだろう。
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