くーちゃんと私

@kinouemizuka

第1話 医者の診断



『ADHDの傾向性がありますね。』

ショートカットの物腰柔らかい女性のお医者さんだった。

少し目を細めて笑顔に近い表情だったと思う。目尻からは慈悲を感じられたし、ずっと聞いていられる小気味良い声だった。

私の心は、どう感じたかは覚えていない。というか未だに、はっきりとしない。

やっぱりなとも思ったし、ショックも少なからず受けたかもしれない。まず傾向性って何?どんな漢字だっけ…と、脳の情報処理速度が心と追いついてなかったと思う。


『診た感じでは…特に薬を飲んだり、療育施設に行く必要は感じられませんね。幼稚園に通うことが彼にとってのトレーニングなんじゃないでしょうか。』

こう言われてからやっとホッとしたのを覚えている。

そもそも、医者に診てもらおうと決めた1番のきっかけは年中の頃担任から保護者面談で、とあることを言われたからだった。

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