第20話 晴れ舞台

卒園から3ヶ月ほど前の話に遡るが、担任へ感謝の思いがあふれた出来事がある。

12月に、くーちゃんの幼稚園では劇&音楽の発表会があった。

くーちゃんはとある生き物の役をした。

本当は違うのをやりたかったみたいだが、担任から

『それだと主役級だから、かなり練習量があるよ。大丈夫?』

と聞かれ

「じゃあ練習量の少ない役でいい。」

と答えたらしいのだ…。

どこか冷めているというか5才児らしくない発言に、聞いた時は笑ってしまった。

だがその役も人気があって、3人しか枠がないのでジャンケンをして勝って、勝ち取った役とのことだった。

そこでびっくりしたのが担任から

『くーちゃんには代表挨拶をしてもらいます』

と聞かされたことだった。

(え?え?なんで?)

とかなりびっくりした。

「くーが、立候補したのですか?」

と聞いたが

『いえ、私が頼みました!練習も、すっごく頑張ってくれているので!』

と言われてさらにびっくりした。

くーちゃんは親バカな私からしたら天才で可愛いし存在自体がもう花丸と思っている。でも同時に言うことを聞いてくれない問題児であることも自覚していたし、手がかかる園児だったはずだ。

なのに、代表挨拶!?

担任は、年中も年長も2年連続くーちゃんの担任をやってくださっていたのだが、そういえば年中のときの音楽発表会の練習でくーちゃんがすぐにピアニカを完璧にこなしたとき、びっくりされていたのを思い出した。

『ピアノ習ってるんですか?教えてすぐに完璧にひけていて驚いたんです。』

と言われた時に

「習っていないです。彼は努力家で…この前おもちゃのピアノを買って、家で毎日練習してるんです。」

と答えていた。

担任がくれた手書きの手作り楽譜を、ボロボロになるまで毎日何度も何度も手にとって見て練習したことを、気付いてくれていたのだ。

あの時から、くーちゃんが努力家だったことを、ずっと評価してくれていたんだ…。

代表挨拶を任されたことを聞いただけでもう目頭が熱くなってはいたが、本番は号泣だった。

とても大きな声で堂々と挨拶をしていて、誇らしかった。

(あの子ほんとは、じっとできないんです!なのにちゃんと話を聞いて、座って待って挨拶までしたんです!簡単にできることじゃないんです!家でもすごく練習して、緊張にも負けずに堂々と言えたんです!)

と周りに叫び散らしたかった(笑)

でも、adhdかどうかのテストを受けたとか私が勝手にくーちゃんのことをバラして、どこかでくーちゃんが,誰かから悪気なく何かを言われて傷付いたら…と思うと幼稚園のママさんたちには言えなかった。それは昔親が勝手に私がいじめられていたことを親戚の前でバラしたとき、すごく嫌な思いをしたことがあったからだ。

いじめられることが恥ずかしいと思ってるとかそれ以前に、勝手にプライバシーを侵害された気持ちになった。

子供は親の所有物じゃないのに!とよく親に対して思ったものだ。

じゃあなんで小説を書くんだという話だが、くーちゃんと会ったことのない方々に読んでもらう分にはくーちゃんが傷つくことはないと思ったからだ。

この時の、発表会での誇らしい息子の姿は目にも心にも焼きついていて、忘れることはないし、写真もDVDも買った。永久保存版になることは間違いなしです。

光をあててくれた担任には感謝でいっぱいだ。

ベストマザー賞があるのだから、ベストティーチャー賞も作ってほしい。

小学校へ送ってくれた就学シートも、それはそれは丁寧にくーちゃんのことを書いてくれていて、クラスに園児は30人ほどいるのに一人一人の個性をこれだけ知って向き合える先生はなかなかいないと思う。

夫婦で脱帽したし、るーちゃんが幼稚園へ入る頃にはまた担任になってほしいと思うくらい本当にいい先生だった。感謝が尽きません。


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