第5話 涙の帰り道
手帳タイプのスマホカバーをそっと閉じて、ズボンのポケットに入れた。
「さっ、くーちゃん幼稚園にいこうか?」
明るく笑えていただろうか…
自転車に乗って、幼稚園に向かった。
声を出さずに泣いた。
くーちゃんにバレないように。
頭の中はぐるぐる思考が巡ってパニックを起こしていた。
(発達がゆっくり?知能は高いのに?)
意味がわからなかった。
もしかしたら発達障害なのかもしれない。
心理士さんは診断名を出せないから言えないだけで、そうなのかもしれない。
それだけは避けたかった。
自分自身がadhdなんじゃないかと何度も思ってきたから…生きにくいし、苦しかったし、こんな経験は絶対にさせたくなかったから。
涙をぬぐって、幼稚園に着いて、担任にくーちゃんをお願いして、門を出てからは思いっきり自転車を飛ばした。
大人になってから大声を出して外で泣くなんて、初めてかもしれない。
「くーちゃん、ごめんなさい、ごめんなさい」
ペダルを漕ぎながら何度も謝った。
主人じゃない、私の遺伝子だと思った。
くーちゃんが苦労したらどうしよう…
私のせいで、苦しんだらどうしようと思うと胸が痛かった。
コロナ禍の影響で在宅ワークになった旦那も、たまたまその日は出社でいなかった。
あまりにも心細くて、まだお昼にもなっていないのに風呂を沸かして泣きながら体操座りで浴槽に浸かった。
普段なんでも話せる先輩も、連絡したけどたまたま忙しくて翌日にしか電話できないと返信がきた。
(明日じゃなくて今がよかった)
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