第37話 虫取りでもマイペース発揮
私は顔を青ざめながら、くーちゃんの時間割が書かれた紙をプルプル震わせた。
うちの小学校は毎週時間割が変わるので、次週の時間割が印刷されたプリントを週末にもらうのだが…。
日曜日の夜に、月曜日に特別課外授業″虫取り″があることを知った。
ばっと時計を見る。閉店の20時まであと30分ある!
『百均いくから、子供たちみといて』
と旦那に言うと、慌てて階段を降り、玄関の扉を開けて電動自転車に飛び乗った。
元々、虫が苦手な我が家は虫取りをしたことがないので、当然虫取り網とカゴが家にない。
金曜日に時間割をもらったのに、読まなかった私のミスだ…
いいやもっと前に、おたよりをもらっていたのだが、そこにも小さい字で書かれていたのに、夫婦で見落としてしまっていた。
呑気に前日時間割をみる性格を改めて、これからはお便りも時間割も早めにみようと反省した。
百均は二件目に、1つだけ虫取り網があり、カゴも見つけた。奇跡だった。
9月に入ったからもう店舗にはないと思っていた…
閉店の20時まであと10分だった。
本当に間に合って良かった。
もし家にその二つがなければ自分でそれらしきものを作って持ってくればいいと書かれていたが、そんな技術はない。
安心して眠り、当日をむかえることになった。
『くーちゃん、頑張ってきてね』
あれほど苦労?したのだから絶対忘れないように、網とカゴをわたして登校するのを見送った。
虫取りの目的は
″家で育て、命を大切にする″
とのことだったが、私に育てられるのだろうか…
旦那も大の苦手で、掴むなんて無理だ。
育てるとしたら私がくーちゃんと…
などと一人でシュミレーションしたのだが、全くの取り越し苦労でおわった。
暑そうに顔を真っ赤にして帰ってきたくーちゃんのカゴは空っぽだった。
詳しく聞いてみると
『暑すぎたけど、土手には日陰がなかったんだよ。くーは、一人でお水飲んで座ってたんだ!』
とのことだった。
「は?友達と座ってたんじゃなくて?みんなは虫取りしたの?」
『うん!みんな取りに行ってたよ!くーは一人でずっと座ってたよ!暑すぎて虫取りする気になれないよ』
と言うくーちゃんに、ここでもマイペース発揮するんかい、と笑ってしまった。
何しに慌てて買いに行ったんだかとは思ったが、旦那から
『虫取り網がなくて取らないのと、選択してとらないとでは全然意味が違うから、買ってあげて良かったよ』
と言われてほっこりした。
自分の仲良い友達にもこの話をしたら
『そもそも、虫をとらないことが命を大切にすることなんだから、くーちゃんが正しいよ』
と言ってもらえて笑いながら納得した。
まわりのみんなが優しくて、和んだ夏のイベントでした。
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