第34話 ちくりと痛い夏休み①
ついにくーちゃんが小学生になってからの初めての夏休みを迎えた。
正直とても楽しみだった。
もちろん、体力のない私にとっては不安な部分もあった。
くーちゃんは児童館や、学校に行きたがらない。
家で私と遊ぶか、ゲームかテレビだ。
つまり付きっきりの生活を1ヶ月半ほど過ごすことになる。
くーちゃんと、るーちゃんがいる中で頑張れるのだろうか。
旦那は仕事を頑張ってくれているし、特にお盆休みもとらないと言っていたので、頼ることはできない。
かと言って一日中テレビを見せるのも嫌だった私は、予定を詰めまくることにした。
新幹線の距離にある実家へ二泊かえることにしたし、知り合いの先輩とも一泊旅行することにした。
先輩との旅行は本当に楽しかった。
私は子供ふたりを連れて、先輩は一人で来たのに子供とたくさん遊んでくれて嬉しかった。
楽しい夏休みの一ページを綴れて、感謝でいっぱいだった。
実母との夏の思い出は、楽しかったがほんの少し苦いことにもなった。
まず母は働いているので、わざわざ3日も休みを取ってくれた上に、ホテルを用意してくれた。
父は平日に休みを取れないということで、母と私と子供二人の4人で泊まることになった。
夏休みシーズンということもあり、プールつきのホテルは2泊で10万をこえていたと教えてもらい、すごく申し訳ない気持ちになった。
新幹線でわんぱくな二人を約3時間乗せて帰ることも、私の中では軽く試練なので、綿密に計画を立てた。
お菓子、ジュースの用意はもちろん、静かに遊べるグッズを100均で揃えて、楽しく過ごせる工夫をした。
あえてお昼ご飯の時間に乗って、食べることで時間つぶしをすることにしたため、昼食も買った。
何度も
(旦那がいたらな)
と思った。
一人ではやはり、大変だった笑
着いた頃にはクタクタだった。
母は改札で待っていてくれたので、子供達は喜んで母の元へ駆けて行った。
そこからホテルまでも電車で距離があり、荷物も重いし疲れた…。
休む暇はなくプールではしゃぎ、その後は温泉。
夕食はバイキングだったのだが、母がくーちゃんと取りに行ったので、私はるーちゃんと席で待っていた。
母は、くーちゃんがまだ手がかかることをわかっていなかったのか、目を離した隙にくーちゃんが天ぷらをひっくり返したらしく…疲れた様子でテーブルに戻ってきて愚痴った。
もう小学一年生だから大丈夫だろうと思っていたみたいだ。
まだまだ大変だからねと最初に言えば良かったのだろうか…
申し訳ない気持ちよりも先に
(なんでくーちゃんをちゃんとみてくれないの)
という思いが込み上げてきたが、飲み込んだ。
なんせ今回は母が頑張ってお金を出してくれたんだ、感謝こそすれ文句は言っていけない!
そう思った。
温泉の時も私は自分の体を洗うなんて1分で終わらせて、子供をさっと洗ったあと母が洗い終わるまで子供ふたりと水風呂に入るという修行を受けていた笑
そのときも
(なんで母はゆっくり洗っているんだろう。どちらか一人をみてほしいのに。)
との想いを飲み込んでいた。
もしかしたら
『夏休みくらい、お母さんが子供みてあげるからあなたはゆっくりしなさい』
と言ってくれることを望んでいたのかもしれない…。
昔から両親から愛情が欲しくて仕方がなかった。
その思いが今になっても残っていたのかもしれない。
その日の夜は私が友人と会いたかったため、夕食が終わったあとは一人で遊びに行かせてもらった。
それは本当にありがたかった。
寝かしつけをしといてほしいとは思ったが
友達と居酒屋で一杯飲んで帰ってきたら
母と子供ふたりは、三人で寝転びながらずっとテレビをみていたみたいだった。
『お風呂入ってきていいよ』
と言ってもらえたので、甘えてひとりで温泉も入った。ありがたかった。
戻るとまだ子供たちはテレビをみていたが、もうすぐ22時になるのであわてて電気を消して寝かしつけた。
翌日もまたプール。でたあとはヘトヘトで、寝てしまった。母は気を遣ってふたりをつれて温泉に言ってくれた。1時間半ほど昼寝をさせてもらえてありがたかったが、戻ってきた母はまた愚痴っていた。
くーちゃんが温泉からでたあと脱衣所で水鉄砲をして、浴衣を着ている他の観光客のかたに水をかけてしまい、謝ったとのことだった。
(そもそも、なんで温泉に水鉄砲を持って行ったんだ)
と私は思ってしまった。
母は
『るーちゃんの方が聞き分けがいい』
と、くーちゃんと比べてきて嫌な気持ちになった。
いつも母は、私と弟を比べて弟の方が出来がいいと言っていたことを思い出したからだ…。
私には兄がいるのだが
『兄は、幼い時そんなイタズラ(水鉄砲のこと)しなかったの?』
と聞いてみたら
『お兄ちゃんは、殴られるってわかってるからそんなことはしない』
と堂々と言ってのけた。
私たち兄弟は両親から暴力で支配されてきた。
勉強や部活などやりたくないことも、殴られて強要されてきた。
それを反省してくれているはずだと思っていた。
だが母は違ったようだった…。
子は親の所有物と言う考えはまだ抜けていなかったようだ。
ここでも飲み込んだ。
母はこの旅行で、頑張ってくれた。
色々とわたしに指示を出してきたり、私をとろくさいと言ってはきたが、母なりに頑張ってくれた。
だが最終日に我慢ならないことが起きた。
ボウリングをしたのだが、先に私が受付をすませ、母は子供ふたりをつれてゲーセンで時間を潰してくれていた。
その時くーちゃんが、うまくいかずに癇癪を起こして母のお腹を叩いてきたという。
母はキレていたので
『くーちゃんには怒ってあげてほしいけど、暴力だけは振らないで』
と言った。
『もちろん殴っていない』
とのことだったが、母は我慢の限界だったようだ。
ボウリングが終わったあと、電車で新幹線がある駅まで向かったのだがそのときに
『癇癪をおさえる漢方薬を飲ませなさい。大きい声を出して恥ずかしい』
と言ってきた。
可愛い可愛い孫に、大人しくさせるための薬を飲ませろだと?恥ずかしいだと!?と私の中での我慢も限界にきた。
『久しぶりに会えた可愛い孫に,よくそんなことが言えるね』
と怒ったら
『本人だってしんどいでしょ。あれは薬ではなく漢方薬だし、あなたにも兄弟全員に飲ませてたから。あと、嫁にはこんなこと言えない。あなたが娘だから言っている』
とよくわからない理論で諭された。
『医者から、ADHDの薬は、頭を静かにさせると言われた。あれを飲むと自分は自分ではない感覚になるから嫌だと実際に飲んだことがある人が言っていた!そんなのを飲ませるわけがない』
と言うと
『そんな薬を飲ませろと言っていない。漢方の話をしている。漢方は体にいい』と言われた。
私はひどく悲しくなった。
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