32話 生意気な子は分からせるのに限る!!

「よく俺がアレクシオンって分かったな」

「私がアレクシオン様を見間違うなんてありえません!」


 フンッと胸を張るルー。

 服越しでも分かる豊満な胸を揺らしながら。


 因みに、ルーは珍しい事にアレクシオンにはくっついていない。

 アレクシオン相手には、文字通りずっと引っ付いている彼女がだ。


 アレクシオンはこれに対して、年月が経つと変わるものなんだなぁーと思っていたが、そんな事はない。


(はわわ、私ったら一体何を!!)


 ルーの心の中は、現在進行形で混乱の極みだ。

 ルーが人間状態のアレクシオンに気付いたのには理由がある。


 アレクシオンの気配を感じた。

 本当にそれだけなのだ。

 

 数年間に渡りアレクシオンに会えてない。

 会えそうな時には、仕事や依頼ですれ違う。

 いくら強くなって会うとは言ったものの、会えるなら会いたい。

 そんな日々が積み重なり、いつしかルーはアレクシオンの存在を探知出来るようになっていたのだ。(いやどゆこと?)

 結果、ルーは見事アレクシオンの判別ができたのだ。

 

「やはり旦那様だったのですね」

「その反応からして、シアも俺の事を?」

「私は、貴方の事ならなんでも分かるわよ」

「怖っ」

「ふふ、まぁそれにハルカ様もいるなら状況は察せられるわ」


 シアの目線を避ける様にハルカは、アレクシオンの後ろに隠れる。 

 

 ハルカは、たまにシア様が自分に視線を向けてくることには気付いてた。

 最初は、偶々視線が自分に向いていたり、偶然視線が重なっただけだと感じていたが、自分に向ける視線と、他の人に向ける視線が違った為怖く感じていたのだ。


 まぁ、アレクシオンを人の姿に出来ると思いよく視線を向けていただけなのだが。



 とまぁこんな感じで、無事に皆と合流する事が出来たのだった。



〜翌朝〜


 騎士団の訓練所では、様々な年齢の人達が集まっていた。

 彼、彼女達は、此処とは異なる世界の住人であった。


 『略奪者』の召喚で、100人という人数が召喚されたのだ。

 そんな異世界人達には、一人一人に特別な力が宿っており、この国でその力をコントロールする訓練をしたいたのだが、突如異なる世界に呼ばれた事、特別的な力を手に入れた事もあり増長していたり、反発したり、協力的でなかったりする。

 勿論、全員が全員非協力的というわけではないのだが、協力する人達が少ないのも確かだ。


 国としては、大きな力を持つ異世界人達をこのまま野放しにするわけにもいかず、どうにかしてその力を活かせないかを考えた。


 まずは、力の制御を身に付けてもらおうと訓練をするのだが、100人もの強い力を訓練するというのは、中々に厳しく頭を悩ませていた。

 それに重なり、国の強者達は諸事情により出払っていたりする。(ほとんどは、シアが原因です)

 そこにきて、アレクシオンの存在は渡りに船、異世界人達の指導に全権を持つ事になる。(シアの計画です)



 一人の騎士が訓練場の台に立ち上つ。


「皆よく集まってくれた!昨日報告にあった通り、今日から訓練の指導には特別ゲストを呼んでいる!」


ーヒソヒソ


「特別ゲストだって」

「え〜グレンさんじゃないんですか〜」

「どうせ大した奴じゃないんだろ」

「訓練とかどうでもいいから」


 あまり良い反応ではない事は、この会話だけでもよく分かる。

 

「成る程これは苦労する訳だ」


 実は俺、声を出してる騎士さんの横に立っているんだ。

 透明人間としてな!!(光の屈折を利用した魔法です)


 紹介されるにあたって、やっぱり第一印象は大切だと思うんだよ。

 なので、驚かせる意味も含めて紹介と同時に姿を出そうと思ってる。


(へー、あの子俺の事見えてるね)


 俺は100人の集団の中で1人の子供と目を合わせていた。

 歳は12歳程の見た目で丁度中学生って所かな。

 そんな少年が、騎士の隣にいる俺にずっと視線を向けてくる。

 だがその視線は友好的なものではなく、どちらかというと見下す様な視線だ。

 

 なんだかんだで、子供に見下されるのは初めてだな。

 大体の子供達は俺に好意的だからな〜。

 なんか新鮮でいいって感じるのはおかしいかな?(おかしいです)


「それでは紹介しよう。この国の救世主であり、グレン近衛隊長の父君にあたるアレクシオン様だ!」

「どうも紹介に預かりました。アレクシオンです!」

「「「ッ!?」」」


 突如、騎士の横から姿を現した俺に驚く異世界人達。

 

 よし、皆驚いてるな。

 これで俺に対しての第一印象は強烈なものになっただろう。

 続けていくよ〜!!


「っ!!」

「うっ、あ」

「嫌あ〜!」


 自己紹介の後、異世界人の皆は地面に這いつくばる事になった。

 膝を付くだけの者もいるが、顔色は良くはない。

 可哀想に。


 

 まっ、原因は俺なんだけどね!!

 威圧を放ってるのだよ。


 なんでこんな事をしてるのかって?

 ふっふっふ。

 舐められたら終わりなんだよ!!


 異世界人達の大半は、根本的に舐めてるんだよ。

 この世界を、人々をね。

 自分達は特別だ、この世界の人達より凄いんだ。

 とね。


 俺が、この子達の教育をするにあたって大切だと思ったのは、異世界人達の鼻っ柱を折る事だ。

 上下関係というものはハッキリしてこそだよ。

 それにあたって、嫌われ者になっても構わない。

 この国の為になるのならね。

 

「それじゃあこれから宜しくね」







 アレクシオンは気付いていなかった。

 地に伏してる人達の中に、自分を知る者がいるとは。


「やっと」 

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