12話 どうしたと思う?

「ご主人様」


 幼い少女の声が聞こえた。

 

「私強くなりたいです」


 少女、レイは自分の主人のアレクシオンに頼み込むのだった。


〜アレクシオン〜


 俺は頭を悩ませてた。

 何に悩んでるって?

 

『私強くなりたいです』


 これだよ。

 本当にどうしよう。

 こう言う時は、、、



「どうしたのだ。アレクシオン殿」

「レミリヤに相談があってね」

「相談?」

「実はーーー」


 俺は相談の内容をレミリヤに伝える。

 

「アレクシオン殿が魔法を教えればいいのではないのか?」

「それが俺には致命的に教える才能がなかったんだ」

「教える才能?」

「そうなんだよ。俺が魔法を使う時ってほとんど感覚でやっていたりするし、初めての魔法も大体成功するしね」

「・・・」


 どうした事だろう。

 レミリヤの顔が何とも言えない顔をしていた。


「なるほどのう、、、先生達は妾にこんな気持ちだったのだな」

 

 先生?

 そういえばレミリヤは英才教育を受けてるって言ってたな。

 そこで、圧倒的な才能を見せつけて僅か3ヶ月で教師を帰らせたそうだ。

 何でも、「教えることがもうない」とのことだ。


「それならば、変・・・ルーを呼んでみたらどうだ?」

「ルーさんか」


 そうだね。

 同じエルフ族みたいだし、ルーさんに聞いてみるのがあっていると思う。


「ルーさんは何処にいますかね?」

「ルーは冒険者だ。今頃冒険者ギルドにいると思が?」

「なるほど冒険者ギルドか」


 よし。

 それなら今日の予定は決まった。

 レイを連れてルーさんに会いに行こう。



「アレクシオン様〜!」


 相変わらずと言うか何というか。

 お馴染みルーさんが抱きついて来る。

 

 ちなみに今の俺はミニ竜だ。

 通常のサイズで街を歩くにはデカすぎるからね。

 それでも街のみんなは、俺が『略奪者』を倒した竜と認識されていた。

 色々な人に声を掛けられたりしたしなぁ〜。

 だが無理もない。 

 竜は珍しい。

 黒い竜ともなれば尚更だ。


「ル、ルー様っ!」


 レイは、アレクシオンに抱き着くルーを引っ張る。


「アレクシオン様から離れて下さい!」


 決して、羨ましくて言ってるのではない。

 ないったらない。

 そう自分に言い聞かせながら、どうにか引き離すことに成功した。


「わわ、あっレイちゃん久しぶり。怪我はもう大丈夫なの」

「はい。アレクシオン様のおかげで傷もなく」

「無事で良かった〜」

「ご心配していただきありがとうございます」


 ルーは元気そうにしているレイを見て頬を緩ませる。

 アレクシオンの時はだらしなく、レイに見せるその表情は母性に溢れていた。

 レイはそんなルーを見て心が温かくなった。


 レイとルーの出会いは、アレクシオンに助け出されたあの日までに遡る。



 俺はレミリヤにある提案をした。 


「森に行きたい?」

「庭で使える魔法には限りがありますから」

「確かにそうだの。特にアレクシオン殿の魔法規模を考えるなら尚更の」

「それで外に行く許可が欲しくてですね」

「何を言っておる?そもそもアレクシオン殿は客人であり恩人。おもてなしこそすれ、行動に制限をかけるつもりはない」

「それじゃあ」

「うむ。妾は忙しので一緒には行けないが」

「アレクシオン様〜!」

「ルーさん!?」

「ちょうど良いの。ルー、アレクシオン殿と一緒に森に向かってくれ」

「アレクシオン様と一緒に!?いいですよ!それでは行きましょうアレクシオン様」

「えっ、ルーさん早っ」


 

 はい、着きました。

 ルーさんと一緒に森の中です。


ードカン、ドカン、ドカン!


 ヒャッハーー!!

 魔法を乱発するとは何と気持ちいいことか!!

 今なら何者にもなれる気分だ!!!



 ・・・・・・・・うん。

 ちょっと落ち着こう。

 久々に思いっきり体動かしたせいか、変に興奮してたな。

 完全にヤバいやつだった。

 幸いと言うか何というか、ルーさんと離れ離れになって良かった。

 こんな姿見たら軽蔑されるよな。(ルーならアレクシオンの新しい姿を見たと喜びます。あの子はもう手遅れです!)


 

 ん?

 今女の子の叫び声が聞こえたような。

 あっちか、、、



 

 向かった先に見た光景は、倒れ伏し背中に傷を負った少女と剣の刃先に血が付いた男、切り付けられたのだろう。

 俺は、そんな光景を見たにも関わらず冷静だった。

 冷静に少女の顔を見つめ感じる。

 あの子達に似ている。

 あの子達、俺が前世で育てた10人の子供達だ。

 顔が似ているわけではない、纏う雰囲気がだ。

 絶望しているその瞳が何よりも・・・


 

 ブチッ!


 

 ああ、冷静だって?

 笑わせるなよ。

 お前は冷静にブチギレているじゃないか。

 今すぐにでも目の前の男を殺したいぐらいにはな。

 でも今はそれどころじゃない。

 少女の治療が先だ。

 お前は邪魔だ。


「なっ、何だお前は?」

「何だじゃねぇ。子供相手に何やってんだ!!」


 俺は目の前の男を蹴散らし少女の元まで向かう。

 ひどい傷だ。

 早く治療をしなければ。

 

「おいまだ死ぬな。今助けてやるから」


 俺は自分の皮膚を切り血を少女の背中に垂らす。

 少女の背中の傷は瞬く間になくなり、艶のある褐色の肌が映り込む。

 少女は、困惑した顔を浮かべながら俺の方を見る。


「貴方様が私を?」

「そうだよ。俺はアレクシオン。見ての通り竜だ」


 悪い竜じゃないよ〜


「アレクシオン・・・様?」

「アレクシオン様〜って、女の子!?」


 声が被ったな。

 この声はルーさんだな。

 ちょうど良かった。 

 

「ルーさんこの子をお願い」

「えっ、あっはい、わかりました」


 少女の事をルーさんに任せ、俺は気絶して倒れ込む男に近づく。

 さ〜て、コイツどうしてやろうか。

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