26話 へぇ〜君の心の中ではそんな事を思ってたんだ

 レアリア国では、5人の兄弟姉妹がいる。

 その長女に当たるのが、今俺の前にいる女性だ。


「久しぶりね。旦那様!」


 綺麗な笑顔で俺に微笑み掛ける美女。

 均等の取れた肢体に、黄金の髪色をストレートにしており、見るものを釘付けにする美貌。

 この国の第一王女レアリア=シル様だ。

 

「“様“はやめてって言ったよね」


 俺の心読んでる!?

 

「ええ旦那様の考えはお見通しよ」


 怖っ!


 この通りこの王女「シルよ」・・・シルは人の心が読める。

 

「旦那様は竜じゃない」


 うっさい。

 

「それに私は心までは読めないわよ。相手の性格や状況、仕草、眼差し、他の要素を考えて心を読んでるのよ」


 いやおかしいだろ。

 そう言うのをなんてゆうか分かる?

 そう言うのをーーー


「「怪物(よね)」」


 ・・・本当に怖いんだけどこの王女様〜。


「ふふ、怪物と竜ってお似合いだと思うのだけど」


 茶目っ気のある顔をするシア。

 クソっ可愛いって思うから悔しい。


「ちょっと待てよ!なんでシア様がその竜を“旦那様“って呼んでるんだよ!?」


 大声を上げるヒロ。

 シアは首を傾げヒロを見る。

 

「それはアレクシオン様が私の旦那様だからですよ」

「相手は竜だぞ!!」


 その言葉に一瞬だが、シアの瞳が暗くなった。

 しかし、それも一瞬だった為誰も気付かなかった。


「愛するのに種族が関係ありますか?」

「いや、それは、、」


 まぁ、それに関しては俺もシアに賛成だ。

 愛に年齢、性別、種族は関係ないと思う。

 関係ないとは思うが、一つ訂正がある。


「俺はお前の旦那じゃねえ」


 そうなんだよ。

 俺はシアの旦那じゃない。

 ましてや誰かと付き合っている訳でもない。


「そのうちなるわよ」

「なんでそう言い切れるんだ?」


 そこで一旦シアの口が止まる。

 やがて頬を赤くしながらボソッと囁いた。


「私の初めてを奪ったから」


 ・・・・・・取り敢えずみんな落ち着こう。

 こういう時はまずは深呼吸だ。

 ほらせーの!

 ひっひっふーー!ひっひっふーー!

 よっよよ、よしおてぃとぅいた!(めっちゃ焦ってます)


 違うよ!!

 俺はヤッてない!(ヤッてる奴が言うこと)

 本当だって〜信じてくれ〜〜!

 


 あれは仕方なかったことなんだよ!

 あっ、、、


「今、認めたわね」

「いっいや違」

「認めなさい。旦那様は私の初めてを奪ったの」


 クソ!心読んでくるとかチートだろ!


「旦那様がそれを言うの」


 可笑しそうに笑うシアだが、俺は全然笑えねぇ。

 何故って?

 あっちを見ろよ。


「おっ、お前!シ、シシシア様とヤッたのか?」


 信じられない者で見てくるヒロ君。


「だっ、だだ、だい、大丈、夫夫夫、、夫?」


 壊れたロボットみたいに、大丈夫ではなくなってるミライちゃん。


「流石お父様」


 感心した様な顔をしてくるグレン。

 んっ?

 待て待て、お前はこっちの味方しろよ!

 お父さん、今絶賛誤解されてるんだから!


「お前等、誤解だって言ってるだろ!」

「「「えっ」」」



「シアが言ってる初めてって言うのは、生まれてきて初めて俺に泣かされたって意味だよ!」



 焦って言い出したこの言葉が、さらなる誤解を発生させる。


 

 暫し、アレクシオン達の周りは静かになっていた。

 アレクシオンは、自分の言葉を振り返ってみて汗が止まらなくなっていた。


 ・・・・・ヤバい。

 この言い方はヤバいかも。

 だってこんな言い方したら、、、


「シア様を泣かせたってそれってつまり、ヤッて泣かせたってことだよな?」


 違うよヒロ君。

 

「わっ私だってアレクちゃんに泣かされたいのに!」


 おーいミライちゃん、自分が変態的発言してるって分かる?


「竜の姿で、シア王女と。凄いですねお父様」


 グレン、お前はもう黙れ。

 さっきのも含めて。(25話参照)


 

 ここから、誤解を解く為に苦労することになった。 

 その間、シアはずっと笑っていた。

 

 そうか!

 シアの奴、俺の困ってる姿を見る為にあえて誤解する言い方しやがったな!!



 嵌められた!!



「ふふ、そんなに睨まないで下さいよ」


 あれから誤解を解く事はできたのだが、すごく、すごく疲れた。

 相変わらずこの王女は、俺の嫌がる姿を見るのが好きなようだ。


「だって可愛いもの」

「嬉しくないぞ〜」

「そう言う所もね」

「はいはい」


 クスクス笑うシア。

 本当によく笑う様になった。

 昔は、表情を一切変えない子だったのに。


「旦那様のお陰ですよ。あの日、私の全てを受け止めてくれたのですから」

「あんな泣きたそうな顔をしたら放って置けないだろ」

「そんなにかしら?」

「そんなにだよ。事実、あの時一杯泣いただろう」

「そうだったわね」


 昔を懐かしみ酔いしれるシア。

 あの日あの時、彼と会い色のないこの世界に色彩を与えてくれた。

 嗚呼、今思い馳せるだけでも、私の心は踊る。

 好きだ。大好きだ。彼の事がとてつもなく愛おしい。絶対に彼と添い遂げたい。私の全てを賭けてもだ。


「好きよ旦那様」

「その好きな相手を困らせてるんだぞ」

「それが私だもの。それに、困らせたいのは旦那様だけ」

「はぁー」


 ため息と共にがっくしと、肩を下げるアレクシオン。

 シアはその姿にさらなる笑みを浮かべる。


「まぁでも、俺だけに向けるならいいよ。あの時は酷かったからな」


 あの時と言うのは、かつてアレクシオンを困らせたいが為に戦争を悪化させたことだ。


「あの事は本当に反省してるのよ」

「分かってるよ」


 シアは、過去の事に反省の色を表す。


「さっきの言葉の通り、困らせるのは俺だけにしろよ。どんな事でも受け止めてやるから」

「プロポーズ?」

「違うよ!」

「じゃあ旦那様はドMって事だ」

「だから違うって!」


 本当に旦那様は面白いなぁ〜。


 思うと同時にアレクシオンの顔を覗くシアはその心の中を読み解く。


(まぁシアが楽しそうに笑うならいいか)


 全く旦那様ったら、こんな時にまで心の中でそんな事を。

 もう本当に、本当に、、、



「大好き」 

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