27話 可愛ければ作者的にはOKです!!(タイトルに書く事じゃないな)

「よくぞ参ってくれたアレクシオン殿」


 俺は今、王城の謁見場にてこの国の王様レアリア=ウォーガン様にお会いしていた。

 と言うのも、城に来たのに挨拶しないのは流石にまずいからな。

 それに俺が来た事はもう知られているわけだしな。


「お久しぶりです。ウォーガン国王陛下」


 アレクシオンは、宙に浮きながら頭を下げ挨拶をする。


「畏まる必要はない。私の事はウォーガンで構わない」

「しかし、流石に一国の王に向かってそのような事は」

「よい。この国で貴殿を咎めるような者はおらん。何せアレクシオン殿はこの国の救世主様なのだからな」


 ワッハッハとウォーガンは声を上げて笑う。

 

「そう言うことなら遠慮なく」


 俺は、口元を崩し改めてウォーガンを見る。


 獅子を思わせる風貌には、確かな知性を宿しており、只者ではないと感じさせる。

 髪色はシアの父親という事もあり光り輝く黄金だ。

 肉体は、豪勢な服の上でも分かる程太く逞しい。

 いかにも百獣の王という言葉が似合う男だ。


「本日はどのような件で来られたのかな?もしやとうとうシアと婚姻を!」

「違います」


 王座の席から興奮気味に立ち上がるウォーレンの言葉を即座に否定する。

 ウォーガンは事あるごとに自分の娘と、この国の救世主であるアレクシオンをくっ付けたがっているのだ。


「む、そうか。だが考えてくれぬかな。娘も貴殿以外には興味を示さんし、何より貴殿なら娘を安心して預けられる」

「確かにシアは綺麗だし聡明だよ。ただ性格がな」

「何を言うか!シアは天使の様に思いやり溢れた良い娘ではないか!!」


(俺以外にはな!!!)


 アレクシオンは心の中で叫ぶ。

 確かにシアは、表向きは民を思いやる素敵な女性だ。

 だがその裏では、俺を困らせて楽しむヤバい奴だぞ。

 お前に見せてる姿は猫被りしてるだけだぞ。


「それに俺は竜だぞ。流石にこの姿でシアと結婚するのは不味い気がするぞ」

「それに関しては心配いらぬ!」


 ウォーガンは自信満々に胸を張り、近くに居た兵に向けて何やら指示を出す。


「?」

「アレクシオン殿の心配はもっともだ。その姿では子作りが大変であろう」

「そこじゃねえよ!!」


 何言ってんだこの親バカは!


「しかし!!私達は見つけたのだ!!」

「何をですか?」

「貴殿を人の姿にする方法を!!」

「!?」


 マジか!

 それが本当なら凄い事だぞ。

 確かにこの世界には、魔物から人の姿になる存在は実在する。

 だがそれは、生まれつき身に着く能力であり後天的に身につくのは難しいとされる。

 俺も色々方法があるか探してみたが、そもそもなかなかお目にかかれる現象ではない為見つからなかった。

 なので俺は人になることが出来ない。

 その内習得は出来るとは思っているが。


「それでその方法とは?」

「実は、最近この国の近くで異世界人が召喚されてな」

「ほうほう」

「そこで、生物を人の姿に変える事が出来る能力者がいてな」

「それは凄いな」


 生物を人間化するのか。

 使い方によってはとてつもない事が出来るな。

 人間にする事で意思疎通が出来るようになったり、性別によっては美男美女も出来るようになるんじゃないかな。


「今、その者を呼んでるので待っていてくれ」

「分かった」


 それから暫くして


「しっ、失礼します」


 可愛らし声と共に、扉から小柄な女の子が現れた。

 

「あれ?」


 その子の服装は、学園の服装であり黒いズボンと白いシャツを着ていた。

 学園によって服装は変わるとは思うが、普通女の子はスカートじゃないのかな。

 それともズボンは借りているだけなのかな?


 そう思っていたアレクシオンに衝撃的な事実が舞い降りる。


「紹介しようアレクシオン殿。の名はハルカだ」

「ご、ご紹介に預かりました。ハルカって言います」

「ハルカちゃんって言うのか、、、ん、彼?」


 俺は、ハルカちゃんの姿をマジマジと見た。

 

 華奢な体に、真珠を思わせる白肌。

 目元はバッチリとしていて、髪型はオカッパ。

 もじもとした姿は何処か仔犬みたいだ。

 

 こんな姿で彼。

 彼って男って意味だよな。

 女の子には使わないよな。

 女の子は彼女って意味だし。

 でも、この姿で男。

 男?

 

 ダメだ。

 どう見ても女の子にしか見えない。

 見た目といい、雰囲気といい。

 でも本当なんだろうな。


 これがいわゆる“男の娘“ってやつか。

 初めて見た。


 そう思ってると、はるかちゃん、、、いやハルカくんか。

 ・・・・やっぱりちゃんだな。

 はるかちゃんは、俺の姿を見て目を輝かせていた。


「わ、わぁ〜黒い竜だ〜」


 はるかちゃんは、俺の前まで急ぎ足で向かう。

 前まで来ると、今度は俺の周りをクルクルと回る。

 竜の姿は初めてかな?

 この世界でもなかなかお目にかかれないだろうからな。

 

 ひとしきりアレクシオンの姿を見て満足したのか、改めて目の前に立ったハルカはウォーガンを見る。


「お、王様今日はいったい僕に何を?」


 ボクっ娘か。

 なんかいいな。


「実はハルカ殿に、そちらの竜を人間にしてほしくてな」

「りゅ、竜さんの!」

「俺からもお願いするよハルカちゃ・・・くん」

「は、はいぃ」


 コクコクと頷くハルカちゃんは、俺に手をかざす。

 そして呪文を紡いで魔力をかき集める。

 やがて、俺の体が発光した様に輝き出す。

 光は、俺の全てを覆う。

 暫くして光輝いた視界は、収まりだす。


「おおこれは!」


 ウォーガンは感嘆とした様な声を出す。


「わ、わぁ〜〜!」


 ハルカは、自分の類に熱を感じながら、見惚れていた。


「なんと!」

「これが救世主様のお姿!」

「アレクシオン殿!私の娘を!」


 声は2人だけに収まらず。

 周りの人達も騒ぎ始める。

 

 なんだろう。

 そんなに騒ぐことかな?


 俺は近くにあった鏡で自分の姿を見る。


「おおーー!!これが俺か!!」 

 

 

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