28話 《現代》えっ、お前ここで現代編に持ち込む?

「行かないよ」

「何故ですか!?」


 ミラは悲痛を帯びた声で悲しむ。


「待て待て。今すぐには行かないだけだ」

「今は、ですか?」

「やらなくちゃいけないことがあるんだ」


 そうして俺は、リーフィを見る。

 リーフィは俺の視線に気付き顔を赤くする。

 なんで赤くなるの?


「あのミラ様」

「どうしたのリーフィ」


 リーフィは息を吐き爆弾発言を飛ばす。


「実は竜王様は、、、私とデート中なんです!!」



「は?」


 

 ヒゥーーー



 辺り一体に冷たい風が吹く。


 アレクシオンの体中に汗が流れる。

 

(えっ、リーフィなんでそんな事を?せっかくナインとの事隠せたのに)



「お父様」


 ミラの目から赤い輝きが現れ出す。

 目の輝きと共に、身体中からドス黒い魔力が溢れ出す。


「その話は本当ですか?」


 その問いにアレクシオンは答えない。

 答えの選択を間違えれば、タダじゃ済まないことを知っているからだ。

 故に、慎重に答えを出さなければいけない。


「そうなんです!この後も街を散策する予定です。2人で!!」


 リーフィ!?

 何でそんなことを言うの?

 そんな事言ったら、


「そうですか」


 ミラから漏れ出る魔力は先程の比ではなく、魔力に当てられた鉄の柵が折れ曲がる。


「ヒッ」


 アレクシオンから小さな悲鳴が出る。

 折れ曲がった柵が、未来の自分の姿に写ったからだ。

 アレクシオンとは違い、リーフィの顔は明るい。

 その姿は、ミラにとっては挑発しているようにすら見えた。


 本来、今のミラの魔力に当てられた場合、常人なら発狂して死に至る程だ。

 そんな魔力に当てられ、何故リーフィは明るくいられるのか。


 リーフィは非常に鈍感であり、図太い性格をしていたからだ。

 なので、リーフィ自身ミラを挑発する気などは全くない。

 最初を除いて。


 竜王様とデートをしてる。

 これはミラを挑発するためについた嘘だ。

 何故そんな嘘をついたのか。

 理由としては、リーフィ自身も内心穏やかではなかったからだ。

 

 レミリヤの屋敷を出た後、竜王様と共に街を出掛けるつもりだった。

 それが突然、ミラに連れて行かれようとした。

 それはリーフィにとっては、看過できるものではない。

 そこにきて、竜王様から視線を向けられ、チャンスだと感じ嘘をつく。


 

 結果今に至る。


 

「何をしているんだお前達」


 呆れの声が聞こえてきた。

 声の主は、薄い青髪を靡かせた幼く愛らしい顔のレミリヤであった。


「レミリヤ・・・様」


 レミリヤの姿が視界に映ると、ミラは黒い魔力を抑え込んだ。

 ミラにとっては、レミリヤは昔お世話になった恩人であり、一緒に過ごした家族だ。

 そんな人に向けて、禍々しい自分を見せたくなかったからだ。


「柵まで壊して、後でお仕置きが必要そうだの」

「うっ」


 ミラは、反省の顔を浮かべながらこの先のお仕置きに少し怯える。


 取り敢えず、なんとかこの場は治ったってことでいいよな。



 俺達は今、小さな丘の上に立っていた。

 丘の下からは、国の全体が見える。


 賑わう街並み、種族問わない多くの生き物達、美しく建てられている建物の数々。


 10年前にも、ここに来て国を見た。

 変わったもの、変わらないもの、変わりそうなもの全てが見渡せる。

 俺はそんな景色を見るのが好きだった。


「この国ができてどれくらいたったのかな?」

「竜王様はご存知ないのですか?」


 隣にいるリーフィは不思議そうな顔を浮かべる。

 

 それはそうだ。

 仮にもここは竜王の国なのだ。

 そんな王が、自分の国がいつできたのか分からないのだ。

 不思議そうにするのも仕方ない。


「実は、気付いてたらできてたんだよ。この国」

「そんな事がありえるのですか?もっ、勿論竜王様を疑ってるわけではありませんよ!!」

「分かってるよ」

 

 リーフィの慌てた姿に笑うが、気持ちは分かる。

 知らないうちに、自分の国が出来てましたって俺でも信じられないよ。

 でも本当のことなんだよね。


「アレクシオン殿は、数多くの者を救ってきてな、その者達が作った国でのここは」


 レミリヤは、この国の成り立ちを簡潔に説明してくれる。


「国を作るにあたってお父様の為だと言ったら、各国からも支援があって直ぐに出来たんですよ」


 ミラは補足を入れる。


「なるほどそんな事が!」


 目を輝かせこちらを見るリーフィだが、俺にはその視線が非常に気まずい。

 だって俺も、自分の国の成り立ちを知らなかったからな。


「因みに、国の建設にはアレクシオン殿の子供達が数多く関与していての」

「眷族の皆様が!」


 興奮が強くなり、リーフィはレミリヤに駆け寄る。

 話の続きが気になって仕方ない様だ。


「私もこの国を作るのに手伝ったんですよお父様」


 褒めて褒めてとミラは頭を突き出す。

 俺はそんなミラの艶めいた黒髪を撫で回す。


 

「さてと」


 俺は撫でている手を止め、丘の先に視線を向ける。

 

 向けた視線の場所には、石の墓標が立っている。

 

「久しぶり、元気にしてたか」


 答えは帰ってこない。

 

 アレクシオンはそれからも墓標に向けて話し続ける。

 他愛無い世間話から、近況の事、感じた事、これからおこなう事と数多く話す。


 目覚める度に欠かしたことがない俺の日課だ。


 リーフィ達もその間、アレクシオンの話に耳を傾けていた。

 この時間の邪魔をしないように。


 暫くして、話終えたアレクシオンはその場から離れ、別れを告げる。


「それじゃあ今日はもう帰るね。

 

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