29話 あれ、主人公の見た目は?

「見て見てあの人!」

「すっごいイケメン!」

「あんな人いたかしら!?」

「わっ私、今あの人と目があっちゃった!」


 きゃーきゃーと騒ぐメイド達を尻目に、アレクシオンは落ち着かない気持ちでいた。


 人に見られる事は、竜になってからよくある事ではあるし、感謝、尊敬、畏怖、崇拝などの視線はよく向けらてきた。

 しかし、今の俺の姿は人間であり竜ではない。


「はわわ、本当に綺麗ですアレクシオンさん!」


 キラキラした目で、俺を見てくるハルカちゃん。

 見た目だけなら女の子のはるかちゃんに、そんな目で見られると変な気分になってくる。

 

 この子、本当に男なのか?


 確かめてみたい気持ちはおおいにあるが、確かめ方によっては変態扱いされそうだ。


「それにしても、本当に人間の姿になるなんて驚いたよ。凄いねハルカちゃん」

「えへへ、それほどでも」


 感心を浮かべるアレクシオンに、ハルカは顔を下げながら顔を赤くする。


 ハルカちゃん、そういう所だぞ。


「人間の姿になったことだし、控え室にいる皆を驚かせにいこう」


 王様のウォーガンに謁見してる間、ヒロ君達には近くの控え室で待ってもらっていた。


 シアあたりは、一緒に付いて来ると思っていたのだが、ウォーガンに会いに行くと伝えた所断られた。

 理由としては、「お父さんに会いたくない」とシンプルな理由。

 反抗期なのかな?


 俺の子供達は特に反抗期は無いな。

 なんなら親離れもしないが。

 でも、俺の記憶が正しければ、年頃の女の子は気が難しく、お父さんを嫌うって言うからな。


 あれ、なんだろう。

 子供達に嫌われる想像をしたら、胸が締め付けられる様に痛い。

 本当に痛い!(涙)



「さてどうやって入ろうか」


 ヒロ君達が待つ、控え室の前まで来た俺は頭を悩めかせる。

 折角驚かせるのだから、登場は大切にしないとな!


「あ、あの〜アレクシオンさん?入らないんですか」

「ああごめんねハルカちゃん。でも折角この姿になったんだから驚かせたいんだ」

「そ、そうですか」


 そうなんだよ。

 特に、シアの驚いた顔は絶対に見てみたい。

 さっきもそうだが、あの子は俺の困った顔を見る為に色々な事をしてくるのだ。

 少しぐらいの意趣返しをしても、文句はないだろう。

 

「よし、ここは普通に入ろう」


 考えた挙げ句、俺は扉をノックしてから入る事に決めた。


 えっ?

 さっきまでの考える時間は何だったんだって?

 それはですねえ〜と・・・・・アレだよアレ。

 ん〜〜と。(言い訳を必死に考えています)


 文字稼ぎ?(考え付いた挙げ句最低な理由です)


 

「気を取り直して開けようか」


ーコンコンコン


「失礼します」


 ノックの後、俺は扉を開けて、、、、、直ぐに閉めた。


「あ、あの〜」


 扉を閉めた俺を不思議そうに見るミライちゃん。

 でも待ってくれ、俺は衝撃的なものを見てしまったんだ。


 俺は深呼吸をして、もう一度扉を開く。

 

 ガチャ


 部屋の中には、高そうなテーブルとソファが置かれている。

 置かれているが、問題はソファーにある。


 重なり合っているのだ。

 何がって?


 半裸の男2人が!!!


 バタン!!


「わ、わわ、ほ、本当にどうしたんですか。アレクシオンさん?」


 ハルカちゃんは、2度同じことをした俺を心配そうに見つめるのだが、仕方ないことだと思う。

 誰が見たいよ?

 野郎が濃密に絡まってる姿を!!


 し・か・も!!

 絡まっていたのが、がっしりとした筋肉に覆われてる2人なのだ。

 100歩譲ってこれが、ハルカちゃんみたいな見た目の子ならそこまで険悪感を感じなかったかもしれない。

 

 本当何やってるんだが、グレンの奴は。

 グレンの、奴?・・・・・


 ガチャ!!


「俺の息子に何やってるんだ!!」


 男の1人がグレンと知り慌てて駆け込む俺は、もう1人の男を問い詰める。

 因みにグレンは押し倒されてる状態だ。

 いやほんと誰得だよ?


 グレンを押し倒してる人物は、獅子の髪型をした姿で、まるでウォーガンを若くした姿の青年だ。

 

「ん?なんだ貴様は、、、ほう貴様、いい肉体をしてるな」

「ヒエッ」


 青年は、俺を見るなり獰猛な視線を向けてくる。

 まるで、美味そうな獲物が目の前に映り込み、ご馳走を前に待ち構える獣。 


 俺は、全身に冷たい風を感じた。

 初めての感覚で、俺は情けない声を出してしまう。

 

 でも仕方ないだろ!

 俺竜だけど一応男なんだぜ。

 子供達からもお父さんって言われてるし。

 そんな男の俺が、ギラついた視線を向けられてるんだぞ!!

 今も全身を舐め回すように見てくしさ。

 もう恐怖の感情しか湧いてこないよ。


 それでも俺は、グレンを助けなければならない!!


「お邪魔しました。ごゆっくり」


 バタン!


 まぁ、グレンも俺と離れている間に新しい性癖に目覚めたんだろ。(おい逃げるな)

 お父さんとして、息子の趣味を否定するのは良くない。(お前息子を見捨てたぞ)

 いいじゃないか同性愛!(早く助けてられよ!)


「おい何を逃げてる」

「ッ」


 いつの間にか俺のすぐ後ろに立つ青年。

 コイツいつの間に、、、只者じゃないな。

 二重の意味で!!(お前意外と余裕あるだろ)


「あの〜貴方は一体誰ですか」

「む、俺を知らないのか」 


 青年は、意外そうな顔を浮かべた後、胸元を前に突き出す。(それいる?)


「俺の名前は、オルガン。レアリア・オルガン」


 レアリアって事はもしかしてこの変態は、、、


「この国の第一王子だ!!」


 ウォーガン、お前の子供達はヤバイ奴しかないのかよ。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る