4話 自分の体を売り込む!(いやらしい意味ではない)
「えーと、血というのは血液のことでしょうか?」
「はい、貴方様の、、いえ、アレクシオン様の血を採取させて頂ければと」
「何で俺の血を」
「昔から竜の血は万病に効くとされていまして、とても貴重な材料でもあるからです」
へー、竜の体すごいんだな。
血液が万病の薬に。
そうすると竜は、人間にとってはかなり美味しい獲物なのかな?
俺も狩られたりする可能性とかありそうだしきおつけよう。
「血ってどれくらいるんだ?」
「一滴程で十分です」
そう言ってルーさんは、自分のポーチから細い入れ物を出す。
自分の体のサイズを考えて、一滴ぐらいでこの入れ物はいっぱいになる。
確かにこれなら一滴で十分そうだ。
血はどうやってだそう。
俺は自分の鱗を見ながら頭を捻る。
基本的にこの世界の竜の鱗は硬く丈夫だ。
この鱗は、魔法の攻撃も弾き飛ばし、相殺する。
強力な威力の魔法は、全てが相殺できる訳ではないが、それでも効果は薄く戦闘の際は、この鱗から剥がすか、傷つけていくのが常識だ。
「ふん!」
しかし、この竜にはその常識が通用しない。
自分の体という事も有るのだろうが、カッターのイメージで自分の指先を“鱗の上"から切り裂き、皮膚にまで届かせ血を滴らせた。
細い入れ物を一杯にしたと同時に、切り裂いた皮膚が塞がり鱗も元通りになる。
どうやら再生能力も常識外れのようだ。
戦闘の際も、せっかく鱗を傷付けたのに、ものの数秒で直すのだから溜まったものではない。
「ありがとうございます!」
血で一杯になった入れ物をポーチに入れたルーは感謝を述べる。
どうやらこの行動で、警戒心も無くなったようだ。
「お役に立てた様なら何よりだよ」
俺も役に立てた方が嬉しかった。
それにしてもどうしよう。
人間だったらルーさんに、人がいる所まで案内をお願いしたと思うけど、この体は竜だ。
人里に降りたら迷惑だと感じるし、湖近くを拠点にしていくと決めたが、多分暇になるんだよなー。
魔法の練習、拠点の改造などで暫くは大丈夫だと思うけど、暇が潰せる様なものが欲しい。
なので俺は、ルーさんに提案を持ちかけた。
「ルーさん、1つだけお願いがあるんだけどいいかな?」
「はい、何でしょうか?」
「ルーさんが暮らしている所には娯楽の様な物はありますか」
「娯楽ですか?そうですね、、、本などは如何でしょうか?」
「いいね!出来れば本が欲しいんだけどお願い出来ますか?」
「構いません。こちらの血もいただいた事ですし。寧ろ助けていただいてもらった上に、貰っていただいてばかりでしたので、申し訳なく感じていましたので。」
ルーは俺のお願い事に快く頷いてくれた。
それから俺は、ルーさんに本のジャンルや嗜好品のお酒まで持ってきてくれるとの事で、至れり尽くせりだった。
最初は断ってたりいていたが、竜の血は少量でも高い値段が付くとのことで、薬を作る際少しは残るだろうという事で、それを売り購入するとのことだ。
そういう事ならと、俺ももう少し血を出そうと提案はしたが、止められた。
「そんな!アレクシオン様にこれ以上傷を付けるわけには!」
「大丈夫大丈夫。すぐに治るしこれぐらい」
「ですが!」
最初の警戒はどこえやら、すっかりとアレクシオンを信頼する様になったルーは、目上の人に対する態度を取る様になった。
だがこれは仕方ない事だろう。
命の恩人な上に、依頼の協力、何より滲み出る優しさがすっかりと、ルーを安心させる結果になったからだ。
それからも、俺とルーの攻防?が続き結果としては、本の大量購入に加えて酒樽含め香辛料やハーブなどと嗜好品は持ってこれるだけ持ってくることになった。
そんな量をどうやって持ってくるのかと思ったが、荷車などに入れて持ってくるとの事だ。
道中の心配は無いかと思ったが、街の人に依頼を掛けて一緒に持ってくるとの事だ。
その際に、俺の事を話す許可が欲しいと言われたが、俺は討伐してこないよな?と心配になり聞いてみたが、ルーさんの話だと俺に勝てる者は街はおらず、人数を揃えても不可能だろうと言われた。
そんなにかと感じたが、俺が先程倒した蜘蛛の魔物は、1匹でも街に多大な被害が出るとの事。
その蜘蛛をあっさりと倒した俺の強さは強大の様だ。
俺はそんなルーさんの話を信じて許可を出した。
俺の拠点になる湖を合流場所として、ルーとは別れた。
♢
私はルー、ルールーフ・フルベル・ルクレルオンです。
みんなからは、ルーと呼ばれています。
これでも、少しは名の知れた冒険者です!
そんな私ですが、先程とても驚く事が起きました。
依頼の薬の材料を探す為に森の奥に入っていた私は、蜘蛛の
《スパイダーデビル》は1匹で街に多大な被害を巻き起こす危険な魔物です。
私は立ち向かいましたが、手も足も出ずに殺されそうな時現れたのです。
黒い竜、アレクシオン様に!
アレクシオン様は、《スパイダーデビル》を圧倒的な力で倒してしまったのです!
それだけではありません!
なんとご自身の血も分けて頂いたのです!
本来竜という生物は、誇り高く気高い生物です。
自分の鱗や血一滴に至るまで誰かに分け与えるという事はありません。
それを、つい先程会った私の為に!
なんと優しいのでしょう!!
私はそんな明るい気分で、街に着きました。
まずは、この血を使って薬を作り届けに行きましょう。
これで依頼は達成です。
そして残った血は、アレクシオン様の為に色々買いに行きましょう。
しかし後に、この血が原因であんなことが起きようとは、この時の私は知るよしもなかった。
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