19話 ママ〜パパが浮気しに行くって!

「異世界召喚?」

「そうじゃ」


 食堂で子供達と食事をしていると、すっかりうちに住み着くようになった魔王リバライが、此処最近の王都の噂を教えてくれる。

 

 魔王リバライ

 幼女の見た目をしているが、れっきとした魔王であり何百年も生きるている。

 口癖は「のじゃ」と「のじゃあああ!」だ。(最後のはうるさい)

 数年前突如家の前に来て、「勝負じゃあああ!」と乗り込んできたのだ。

 俺はそれに答え(いやいやに)三日三晩戦い続けた。


 勝負の決着?

 お互いに負けたよ。

 空腹という形で。

 流石に戦い続ければ、お腹も空く。

 そこでご飯を提供したところ「うまいのじゃあああ!」との事ですっかり懐かれたのだ。


 

「それで、その召喚で呼ばれた者達が数多くいるのじゃ」

「へ〜どれくらい?」

「ざっと100人じゃ」

「ぶっ!」


 俺は驚きにご飯を吐き出す。


「うわぁぁ!汚いのじゃ」

「悪い」


 100人って多いな!

 普通多くても数人とかもしくは学校のクラスレベルじゃないのかよ。


「何でまたそんな人数を呼んだんだよ」


 というかそれは誘拐にならないのかよ。


「『略奪者』の力のせいじゃ」

「『略奪者』の?」

「そうじゃ。今回の『略奪者』の能力は召喚での、其奴が異世界人を大量に召喚したのじゃ。幸い直ぐに討伐された結果、それだけで済んだのじゃがな」

「なるほど」


 なんだ、てっきり俺は戦力欲しさに異世界人を呼んだのかと思った。

 何せ、異世界人は特別な力を獲得すると言われているからな。

 俺もそのケースだろ。


「それで、なんでその話を俺に?」

「うむ、実はなその異世界人達は力に溺れてる者が多くてな。躾に困ってるのじゃ」


 うわぁ〜。

 なんか分かる気がするわ。

 そういう展開、前世の漫画や小説でも見た事ある。

 “過ぎた力は身を滅ぼす“ってね。

 

「躾って、王国も強い人達がいた気がするんだけど」


 それこそ俺の子供達も何人か居た気がするんだけど。


「其奴らはちょうど出払っていてな。残ってる者もいるが手が回らんのじゃ」


 それで、俺が呼ばれたわけか。

 あの国の王様とは、飲み仲間だし俺の子供達が世話になってる所だ。


「仕方ない行くか」

「我も行くのじゃ!」

「えっ、お前も来んの?」

「人手は多い方がいいじゃろ」


 シュッ、シュシュシュと前方を殴るリバライ。

 幼子の見た目で可愛らしく見えるがとんでもない。

 一発二発と拳を前に出すたびに、とてつもない風圧が発生する。

 あっ、今も近くを通った子供が風圧に飛ばされた。


「おまっ、何やってんだ!」

「うぉおお、すまぬのじゃあああ!」


 幸い、飛ばされた子供はアレクシオンの尻尾に受け止められ大事になることはなかった。

 リバライも、慌てて子供の所まで走り謝るのだった。


 なおこの時の子供は、アレクシオンに抱き付ける機会ができリバライに感謝したとかしないとか。



「そういう訳だから行って来る」

「「「だめ!!!」」」


 アレクシオンは子供達に用事を伝え、離れようとするが子供達に止められた。

 

「パパ行かないで!」

「お父さん僕達を置いて行くの?」

「浮気ですかアレクシオン様!」

「父上〜」

 

 ああカオスだ。

 なんとなく分かっていたんだよ。

 こうなるの。

 自惚れた言い方になるが、子供達は俺にベッタリだからな。

 俺が出かけようものなら皆して付いて来るほどだ。

 でも今回はそういう訳にはいかない。

 何せ異世界人達の躾に行くんだ。

 子供達に何かしらの被害があったら異世界人ぶっ殺しちまうからな。


「お前達〜お父さん大事な仕事があるんだ。だから行かせてくれないか?」

「「「やだ!!!」」」


 参ったな。

 

「こら!ご主人様に迷惑かけない」


 助け船を出してくれたのはレイだった。

 レイの登場に一瞬子供達は怯むが、それでも子供達の不満は消えない。


「言う事を聞かない子はお仕置きです」


 パシンッ


 何処から出したのか、レイはムチを地面に叩き付ける。


「「「ひっ」」」


 子供達はレイのムチに怯える。

 怖がるのは当然だ。

 基本的にアレクシオンは子供達を叱らない。

 結果レイなどの年長者組が叱るのだが、それでも聞き分けのない子はいる。

 そこで、レイ達は行き過ぎた子供達に罰を与えていったのだ。


 痛みと恐怖で


 嫌々それはダメだろうって?


 甘ったれるな!!!


 ここは異世界だぞ!! 

 前の世界の法律とかモラルとか通用しないんだよ!

 

 大丈夫!!

 大抵の傷は治せるから!(逆に傷が付く程の罰なのだ)

 

 結果子供達はレイ達年長者に逆らえないのだ。


「「「分かった〜」」」


 ションボリとする子供達に悪いとは思うが、これで心置き無く王都に向かえる。


「それでは行きましょう。ご主人様」

「おう!・・・・うん?」

 

 飛び立とうする俺の背中に乗り込むレイ。

 勢いで返事をしてしまったが、言わなければいけない事がある。


「なんで俺の背中に張り付くんだレイ?」

「?、私もご主人様に付いて行く為ですが」


 不思議そうに首をかしげるレイだが、それはダメだろう。


「「「レイお姉ちゃんずるい!!!」」」


 ほらーー!

 子供達が騒ぎ始めた。


 ビシッビシっ!!


 ムチのしなる音が聞こえる。

 子供達の目の前では焼け焦げ抉れた地面。


「何か文句でも」


 ニッコリと笑うレイだが、その目に光はなかった。


「「「うわあああーーー!!!」」」


 そんなレイに恐怖(トラウマが刺激されて)を抱き屋敷に逃げる子供達。


「これで邪魔者はいなくなりました。行きましょうご主人様」

「あぁうん」


 アレクシオンもレイに気押されながらも翼を動かす。


「それじゃあ言ってくる!!」

「「「いってらっしゃい!!」」」


 子供達に見送られながら、アレクシオンは王都に向かうのであった。


 


「そういえば誰か忘れているような」

「気の所為ですよご主人様」

「そうだな」




「なぜ、我を置いてくのじゃあああああ!!!!」

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