10話 ちょっとお兄さん。さっきまでと話が違うよ〜

 「守り神様ー!」

 「アレクシオン様!」

 「街を救っていただきありがとうございます」


 あの後俺は、この街の領主アランからお礼をしたいとのことで街まで案内された。

 最初は俺が街に来て大丈夫かとも思ったが、どうやら杞憂の様だった。

 

 アレクシオンがここに来るまでの間に、街の者達には事の顛末が説明されていて皆が皆アレクシオンを救世主として見ている。

 因みに、こんなに早く街の者に知らせが届いたのは、《通信魔法》を用いて連絡が届いたからだ。


 (いや〜なんか照れるな)


 皆が皆俺に好意的な目を向けてくる。

 それは大変嬉しいのだが、ここまでの人数に見られるのは慣れない。


 「どうじゃ皆がおぬしを救世主として見ておるぞ」

 「圧倒されてるよ」

 「ハハ、それはいいのう」


 レミリヤは俺の反応に嬉しそうに笑う。

 それからもレミリヤの家に着くまで俺は街の人達に歓迎の声を掛けられた。

 足元に女性を貼り付かせながら。

 

 ん、女性?

 誰かって?

 ヒントは耳の長い女性です。

 それは答えだって?

 そうだよねだってその女性は、、

 

 「ルーさんいつまで抱きついてるんですか?」


 そう俺の足元に抱きついているのは金髪碧眼のエルフ美女のルーさんだった。

 ちなみにいつから抱きついてるって?

 レミリヤと一緒に俺の元まで来た時からずっとだよ。

 こういうこと言うのはどうかと思うけど、ルーさんってヤバいよね。

 本当になんでこんなに懐いてるんだろう。

 今も俺の足に抱きついて顔を押し付けてるし。

 もうなんだろうね、怖いよルーさん。


 「えへへ。アレクシオン様〜」



 レミリヤの屋敷までついたが問題が起きた。

 それは何かというと、俺の体じゃあ屋敷に入れないこと。

 門に入る事は出来るし、広い庭にいることも出来るが流石に屋敷に入るのはなぁ〜。

 どうしよう。


 「ほれアレクシオン殿」


 レミリヤは俺に何かを渡してくる。

 それは魔導書だった。

 

 「その魔導書には、体のサイズを変える魔法が書いてある」

 「おぉ〜いいね。でも取得するのに時間がかかるだろ」

 「アレクシオン殿なら大丈夫じゃろ」

 「何を根拠に」

 「『略奪者』を倒すのに使った魔法は我が贈った魔導書のものだろう?戦いの痕跡と炎の虎を見れば分かる」


 当たってる。

 すごいなこの子。

 確かに俺があの化け物に使った魔法の数々はレミリヤにもらった魔導書を見て使ったものだ。

 数々の魔法の属性、運用方法、最もたるものは『炎虎エンコ』だ。

 本当にレミリヤの本には助かったよ。


 「アレクシオン殿ならこの魔法ぐらいすぐ使えるのではないか」

 「そんな事言われてもまぁ取り合え読んでみるよ」


 

 それから数分して


 「おっ出来た・・・てかなんか暗いんだけど!」


 俺は無事に体を小さく出来たのだが、小さくなった瞬間視界が暗くなった。

 それに何だろうこの顔を埋め尽くす柔らかいのわ。


 「アンッ、あれアレクシオン様」


 ルーさんから色ぽい声が聞こえてくる。

 あっ、分かったぞ。

 何で視界が暗くなったのか。

 今俺はルーさんに抱きしめられてるんだ。

 しかも胸に。


 「わ〜アレクシオン様が小さくなってる可愛い〜❤️」

 「わぷ」


 ルーさんの抱き締める力が更に強くなる。

 顔だけじゃなく体まで柔らかいものに包まれる。

 ルーさん離して!

 身を捩る俺だがうまく抜け出せない。

 

 「何をやっておるのだ」


 呆れた顔を浮かべるレミリヤ。

 いやレミリヤこれ抜けねぇーんだよ。

 ルーさんの力なんか強いし。

 俺小さくなった影響か上手く力出ないし。

 それに正直抜け出すの勿体無いな〜って思うようになって来たんだよな。

 すけべ?

 ほっとけ!

 俺だって男なんだよ!



 それからも抜け出せない状況が続き、ルーさんが満足するまでその場で、みなが待機することになった。

 2時間もな!



 「アレクシオン殿、この度は『略奪者』の討伐ありがとうございました」


 アランさんからお礼を受け取るが、それは最初の方にも何度か言われた。

 それをこの場、謁見の広場だろうか?

 ここにいる人達にも改めて、俺の事を周知させたいのだろう。


 「したがってアレクシオン殿、何が望む物はないか?」

 

 欲しい物は決まってる。

 レミリヤから貰った様々な品物だ。

 『略奪者』との戦いで失ったからな。(涙)

 

 俺は失った品物を再度アランさんに頼んだのだが、それに対して周りは驚いた様子だった。


 「たったそれだけの物を!」

 「何と謙虚なのだ!」

 「素敵だわ!」


 むず痒い。

 俺としては、失った品物を頼んでるだけなんだよ。

 『侵略者』の討伐も、振り返ってみれば大した事なかった。

 俺、ケガしてないし。


 「アレクシオン殿それだけでは気が済まない。他にも何かないか?」


 えっ!?

 他にも頼めって?

 どうしよう。

 本当に何もないんだけど!

 無欲とかじゃなくて!

 だって俺この世界についてわかんない事だらけだし。

 は〜あ、家に帰りたい。

 家ないけど。

 ・・・あっ、


 「家が欲しいです」


 正直元のサイズならともかく、小さくなった今なら普通の家に入れる。

 森の中で暮らすのもいいけど、拠点は幾つあってもいいしな!


 「なるほど家か。わかったアレクシオン殿に相応しい家を用意しよう」

 「普通の家でいいですよ」

 「そんな訳にはいかない。

  アレクシオン殿数日程はこの屋敷でゆっくりしていってくれ。家の方はその間に完成させる」

 

 完成させる?

 探すんじゃなくて作るの?

 数日間で?

 そんな事できるのかよ。

 この世界すごいな。

 まぁ数日ならそこまですごい家はできないだろ。


 「ありがとうございます。

  数日の間お世話になります」

 

 それじゃあ家が完成するまでレミリヤ達のお世話になろう。

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