11話 子供相手にそれは(引いています)

〜レミリヤ〜


 アレクシオン殿が屋敷に住み始めてから暫くがたった。

 アレクシオン殿は基本的にこの屋敷の庭で生活をしている。

 何でも「魔法が解けて元のサイズに戻ったら大変だ」との事だ。

 我は大丈夫だと思ったが本人が気にしてるのなら良いだろう。

 

 我は庭に着き、アレクシオン殿を見る。

 アレクシオン殿の近くには、1人のエルフがいた。

 変態るーでは無いぞ。

 銀髪のダークエルフの少女だ。

 彼女とは、色々あり今ではアレクシオン殿のメイドをやっている。

 細かい事はまた今度話すとしよう。

 少なくとも彼女、レイはアレクシオン殿に命を救われ今ここにいる。


 「アレクシオン殿」

 「レミリヤ、おはよう」

 「レミリヤ様おはようございます」

 「おはよう」

 「それで今日も?」

 「ああ今日もだ」 


 アレクシオン殿がここに来てから我は、毎日アレクシオン殿と一緒に魔法の修業をしていた。

 アレクシオン殿の魔法の上達には驚かされる。

 何せ一度見たものは、覚えると来た。

 呆れてものも言えん。

 我も天才など言われるがアレクシオン殿を見れば可愛いものだ。

 

 「こい『炎虎』」


 アレクシオンは炎を纏う虎を呼び出す。

 

 「相変わらずすごいのう」


 レミリアは呆れにも似た関心をする。

 アレクシオンが使う『炎虎』は召喚魔法に似ている。

 しかし実際の所は、アレクシオン自身が頭の中でイメージする虎に火属性を纏わせたものなのだ。

 プラスして、エンコにはまるで魂が宿っているのか自立して動くことができる。

 今も、アレクシオンに体を擦りつかせながら甘えている。

 

 (これはもはや“創造“だな)


 召喚魔法ならともかく、自身が放つ魔法に意識を宿らせるというのは今まで聞いたことがない。

 多分この世界でこんな事をできるのはアレクシオンぐらいだろう。


 「本当に凄いお方だ」


 レミリアは頬が熱くなるのを感じる。

 それは興奮によるものなのか、それともーー

 

〜レイ〜


 私の名前はレイです。

 人里離れた森で静かに暮らすダークエルフでした。

 でしたと言うのは、私が住む集落で突然火事が起きたのです。

 森という事もあり、火の手が回るのはとても早かった。

 仲間が焼かれる姿に目を背きながら、私は家族と一緒に走り続けた。

 何処まで走っただろうか、気がつけば家族とは離れ離れになり私は1人になった。


 「お父さんー!お母さんー!」


 帰って来る声はありませんでした。

 私は心細くなり、その場に座り膝を抱える。


 いつまでそうしていただろうか。

 近くの草むらから音が聞こえ顔を上げる。

 そこには、人相の悪い男がいた。

 その男は、私の姿を見ると下卑た笑みを浮かべる。


 「こんなところにダークエルフか」


 男は私に近づく。

 私は逃げようとするが、腕を掴まれてしまいました。

 私は非力で力がなく、抵抗も出来ないまま連れていかれました。


 


 男は盗賊だったようで、私を何処かに売り飛ばそうとしている。

 私はそれを知り必死にもがいた。

 もがいた際に男の下腹部に足が入る。

 

 「グァア!?」


 男は呻きよろつく。

 拘束が解け私は走り出そうとするが、突如背中に衝撃が走る。

 私は地面に倒れ伏す。

 襲った衝撃が何かはわからない。

 今分かる事は一つ。

 

 「ウッゥゥ〜アアアー!!」


 背中が熱い、痛い、焼ける!!

 私はうつ伏せのまま、その場に蹲る。

 何も考えられない。

 頭には痛み以外の思考を許してくれない。


 「やってくれやがったなクソガキが!!」

 

 男の手には剣が握られていた。

 その剣でレイの背中を斬ったのだろう。


 カツカツ


 近づく足音は聞こえるが、今の自分にはそれを気にしている余裕がなかった。

 男はレイの目の前まで近づく。

 そして剣を下に振り下ろす。


 「ッアアァー!」


 新しい痛みが体を襲う。

 足の方からだ。

 自分は足を斬られたのだ。

 痛い!痛いはずなのに足からは感覚が消えていく。

 これでは逃げれない。

 そもそも逃げた先に何がある。

 集落は消え、仲間は焼かれ、家族は行方が分からない。

 もしかしたら気付かないうちに死んでしまったのかも知れない。

 それに私は助からない。

 背中から滴る血が自分の命を奪っていく。

 先程まで熱く感じた背中は冷たくなっていく。

 背中だけではない。

 体全体が凍りついていく。

 皆、私もそっちに行くね。

 私は、全てを諦め目を瞑る。


 「なっ、何だお前は?」

 「何だじゃねぇ。子供相手に何やってんだ!!」


 怒声が聞こえて来る。

 その後に、男の悲鳴も。

 どうでもいい。

 私はもう助からない。

 

 「おいまだ死ぬな。今助けてやるから」


 その声が聞こえた後、背中に熱い雫が落ちてきた。

 すると背中に感じいていた痛みが消えていった。

 背中だけではなく足の方からも痛みが消えていく。


 (暖かい)


 私は、閉じていた瞳を開いた。

 開いた先には、小さな黒い竜がいた。

 

 「貴方様が私を?」

 「そうだよ。俺はアレクシオン。見ての通り竜だ」

 「アレクシオン・・・様?」


 これが私の生涯のご主人様になるアレクシオン様との出会いだった。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る