23話 俺も一度は力に溺れたい!!(作者の気持ち)

「なんだよこの酒高過ぎだろ!!」

「だから言ったじゃないの。ここは高いわよって」

「こんなにするとは思わねえだろ!!」


 なんだなんだ?

 異世界人のヒロ君が叫んでるぞ。

 酒だけに!!(つまんなかったですね。ごめんなさいごめんなさい。読むの辞めないでください)


「ぼったくってんじゃねえのかオカマ野郎!!」

「ああん!」


 おっ、マスターがキレた。

 やるのか!

 殺っちまうのか!


「テメエ一1度ならず2度までも俺の事を何て言いやがった!」


 マスターの野太い声に一瞬怯むヒロ君!

 負けるな!


「なっなんだよ!つうかお前キモいんだよオカマ野郎!」

 

 3度目来ました!!

 これはヒロ君マスターに殺されるね!!(因みにさっきからアレクシオンは酔っているのです)

 

「オメェ客だからと我慢してやったが、超えちゃあいけねぇ一線超えやがったな」

 

 マスターから全身に闘気みたいなのが流れ出す。

 ただでさえ、ゴリラみたいな体格をしているのにさらに膨れ上がる筋肉。

 これは、ゴリラを超えたキングゴリラだな!


「何だ!?やろうってのか!」


 ヒロは、腰に差してある剣を抜き放とうとするが、その前にキングゴリラ・・・・・マスターのでかい手がヒロの顔を押さえつけ、そのまま床に叩き落とす。


 流石マスター!

 元は高ランクの冒険者様!

 確か二つ名があったよな。

 なんだっけ?

 

 そうそう思い出した。

 確か、『プリティー』だったな!

 

 似合わねぇーー!!

 何だよ『プリティー』って。

 誰だよ名付けたの。(マスター本人がギルドに無理矢理つけさせた二つ名)



「うああ!痛えぇぇえ!!」


 のたうち回るヒロ君。

 おぉ流石異世界人!

 タフだねぇー。


「お前こんな事してただで済むと思うなよ」


 よろよろと立ち上がるヒロは、ダメージが大きいのか足が震えている。


「そこまでですよ。ヒロ」


 再度、マスターに挑みかかろうとするヒロをグレンが止める。


「誰だ止めんじゃねぇ!・・・ってグレンさん、何でここに!?」

 

 グレンの姿に驚くヒロ君だが、気付いてなかったみたいだな。

 まぁ周りを気にしてなさそうだったからな。

 うるさかったし。


「それはこちらのセリフですよ。この時間帯は訓練の筈ですが、また抜け出しましたね」

「うっ、あんな訓練、なんの意味があるんですか」

「貴方達は、力の使い方を学ばなければいけません。力を暴走させない為にも」

「力なら使いこなしています!」


 ヒロは、剣を抜き魔力を練り上げる。

 すると、剣は紅く輝き出す。

 

(へえ、あの剣触れると危なそうだな)

 

「どうです?《絶対切断》をちゃんとものにしてますよね」


 どうだと言わんばかりに胸を張る。

 そんな姿に、グレンはため息を吐きながらヒロに近づく。

 そしてヒロの頭をぶっ叩く。


「痛っ、何するんですか!」

「こんな場所でそんなものを使わない。何か起きたらどうするんですか」

「っ!!」


 ヒロは顔を下に向け震える。

 見間違えでなければ、下に向く瞬間顔を憤怒に染まっていたな。

 俺は、酒を飲むのを止めグレン達の元に向かう。


「っせぇ」

「ん」


 ヒロの呟きにグレンは耳を近付ける。

 

「うるせぇーー!」


 突如顔を上げたヒロはグレンに向けて剣を振り下ろす。

 グレンは、突然のヒロの動きに驚くが、すぐに冷静になり迎え打とうとする。


「はーーいそこまで!」


 そんな2人の間に挟まる様に現れたアレクシオン。(俺の為に争わないで!!)

 グレンは俺の存在に気付き手を止めるが、ヒロは止まらない。

 いや止められなかった。

 

 目の前に現れた竜に驚くものの、振り下ろし始めた剣は止められなかった。

 振り下ろす剣には、《絶対切断》が宿っており目の前の存在ごと切断する。

 かの様に思えたが、、、


「なっ」


 何と剣は、竜の爪先で止められていた。

 正確に言うのならば、摘まれていた。


「なっ、なんで」


 目の前の光景が信じられなく固まるヒロ。

 無理もないだろう。

 ヒロの持つ能力は《絶対切断》。

 名前の通り、剣に触れる物全てを切断する。

 それがどんなに硬くてもだ。

 そんな剣が止められている。

 一体どうして?


「お前の能力は凄いけど、お粗末だな」

「何だと!」

 

 激昂するヒロ。

 自信のあった自分の能力をお粗末扱いされたのだ。

 突如現れた謎の存在に。

 今ヒロの頭にあるのは怒りの感情だけだ。

 するとどうだろうか、まるで怒りに応える様に剣の輝きが強くなる。

 そんな剣を見てアレクシオンはため息を吐く。


「怒るな。冷静になって力を集中させろ」

「何を言って!」

「集中しろといったぞ」

「ッ」


 忠告を口にするアレクシオンに気圧されるヒロは、目の前の竜の言う通りに自分の能力に集中する。

 やがて剣の輝きは、少しずつ薄くなりやがて元の輝きに戻った。

 

(全く危ないやつだな)


 アレクシオンがヒロに忠告をしたのには理由がある。

 剣の輝きが強くなった際、明らかに力を暴走させていたのだ。

 あのまま暴走した状態で剣を振ろうものならば、周りに被害が及んだ事だろう。

 具体的に言うのなら、《絶対切断》は剣先だけでなく彼の体からも放てる様になっただろう。

 

 どう言うことかって?

 うーん。

 簡単に言うならヒロ自身が《絶対切断》になろうとしたってとこかな。

 

 余計分かんないかな?

 でも仕方ない。

 まさに言葉通りなんだから。


 とにもかくにも、俺が感じたことは一つ。


(こいつ鍛えると面白そうだな)


 

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