40話 名探偵って呼んでいいよ(調子に乗ってる

 自分が居た事での世界の影響を知る事ができた。

 女神様にお礼をされてむず痒く感じるが、どうしても女神様に聞かなければいけない事いくつかある。


「女神様」

「はい何ですか」

「前の世界でイチカ達が戦った化け物は『略奪者』なんでしょうか?」

「その通りです」


 やっぱりそうか。

 予想はしていたが、女神様に改めて聞いて確信がもてた。

 

「『略奪者』は他の世界でも数多く存在します。世界によっては、言い方が変わっていたりもしますが」

「『略奪者』は一体何者なんですか?」


 ひび割れた空間から突如現れる存在であり、例外なく特殊的な力を宿している怪物。

 今までも何回か戦ってきたが、異形から人型、大きさと何一つ統一性がない。

 一度気になり、割れた空間に入ろうとしたが不思議な力に弾かれて入れなかった。

 無理矢理入ろうもしたが、その時にいた子供達に必死に止められて断念した。

 何があるか分からないから行かないでだとさ。 

 確かにどうなるか分からないし、戻れなくなる可能性もあるならやめるべきだろう。

 子供達にも申し訳ない事をしたな。


「実は『略奪者』は、迚ケ蜈典繧定イー縺縺滉ココです」


 !??

 何だ、今女神様の言葉をうまく聞き取れなかった。

 女神様も俺の反応を予測していた様で、ため息をつきながら暗い表情をする。


「やはり聞き取れませんでしたか」

「えっとはい、何を言っていたのか分かりませんでした」

「すみません。『略奪者』の事については、一定の権限もしくは条件を達成しないとダメでして、アレクシオン様ならと思ったのですがダメみたいですね」

「権限と条件」

「はい。『略奪者』は我々からしても禁忌中の禁忌であり、正体を知られる訳にはいかないのです。なので『略奪者』の事について話す際、権限か条件を達成しないことには、聞き取る事が不可能になります」


 申し訳なさに頭を下げようとする女神を止め、アレクシオンは思考する。


(『略奪者』の事については結局分からなままか)


 禁忌中の禁忌というのは収穫になるかもしれないが、答えが分かった訳ではない。

 少なくとも女神様が簡単に話せない存在ではあるみたいだ。


「なるほど。それではもう一つお聞きしていいですか」

「かまいません」

「"世界の意思"とは何者なのでしょうか?」

「そうですね・・・・・・」


 女神は暫くの間頭を悩ませる。

 "世界の意思"という存在に対してどう説明するか言葉に悩む。


「アレクシオン様に伝わるように言うのならば、"世界の意思"はA《・》I《・》なんです」

「AIってコンピューターやネットとかのですか?」

「その認識で間違いありません」


 “世界の意思“がAIだとすると、世界はデータになるのかな?

 

(・・・・・・・・待てよ)


 今の認識で考えるなら、もしかして『略奪者』は世界の、データを乗っ取るもしくは奪うウイルスという考えでいいのか?

 略奪者ウイルスが現れると世界データに被害が起きる、そう考えると説明がつくよな?

 流石に憶測を交えての考えになるから女神様に聞いてみよう。


「答えられません」


 聞こうとする前に女神様は答えた。

 心の中を聞く事ができる女神様は、俺の考えが聞こえていたのだろう。

 そしてその考えに答えられない。

 でもそれは、“答え“なんじゃないのか?

 

「ありがとうございます女神様」

「いえ、私の方こそあまり答えられなくすみません」


 頭を下げるアレクシオンに女神も頭を下げる。

 今回の話で色々な事が聞けた。

 解けた謎もあるし、分からないままのもある。

 それでも女神と話ができたアレクシオンは満足していた。


「アレクシオン様、謎が知りたいようでしたら権限と条件を得て下さい」

「それはどうやって?」


 疑問に女神は微笑みながら答える。


「簡単ですよアレクシオン様。今まで通り世界に貢献をして下さい」

「今まで通り、ですか」

「はい。貴方の存在が世界の貢献に繋がりますから」


 アレクシオンと出会ってから、1番の笑顔を浮かべる女神は、真に女神と言える程に美しく神々しかった。

 アレクシオンもその笑みに少しの間見惚れていた。



『あれが其方の選んだ希望か』


 アレクシオンがいなくなった空間に光る球体が現れる。

 突然現れた球体に女神は驚かず答える。


「はい、彼が私にとっての“最後の希望“です」


 アレクシオンがいたであろう場所に視線を向ける。 

 

『まさか、の《・》に適合する者が現れるとは思わなかった』

「私もまさか、彼が特典にあのカードを引き当てるとは思ってもいませんでした」


 今でも覚えてる。

 彼が特典にあのカードを選んだ事を。

 本来なら現れるはずがないカードを。

 私はその時に“希望“を見出した。

 事実それは、今までの彼の行動が証明している。

 彼がいなければ、多くの者が悲しみ、苦しみ、絶望し、死んでいたはずだ。

 彼自身そこまで自覚がなかったかもしれないが、今回の話で少しでも自覚して貰えたら嬉しく思う。

 貴方は、この世界を救っていると。


『私はもう行く。また違う世界であやつらが攻めてるのでな』

「はい、お気をつけください」


 球体が消えるまで見送りながら女神は心の中で思う。


(アレクシオン様、この先貴方に困難が現れるかもしれません。それでも貴方様なら乗り越えると信じております。貴方はこの世界の“希望“なのだから)

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竜王様と呼ばれるようになって 〜子供達よなんでそんなに引っ付いてくるのかな?〜 @Reiben0520

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