39話 アレクシオン貴方に感謝を

「お、お久しぶりです」


 気が付けば俺は、白い空間にて女神様に会っていた。

 

「えーとお久しぶりです」


 先程まで、イチカと話していてそのまま一緒に寝たはずなんだけどな。

 今日は一緒に寝たいって甘えられた時のイチカと言ったらすごく可愛かったな。


「あの〜余韻にひたってるところ申し訳ありません」


 あっ、そう言えば女神様は心の声が聞こえるんだったな。

 さっきの聞こえてたのかぁ〜、ちょっと恥ずかしい。

 シアとは違って完全に俺の心が聞こえるんだもんな、まぁシアの読みも外れたことないな、少なくとも俺のことに関して。


「実は貴方に、アレクシオン様にお話があってきました」

「ちょうど俺も女神様に言いたい事があったんです」

「私にですか?」

「はい」


 俺は、一呼吸置いてから頭を下げる。


「子供達にまた合わせて頂き有難うございます」

「気にしないで下さい」

「いやでもーー」

「気にしないで下さい」

「あの」

「気にしないで下さい」


 女神にとってその事は、地雷になっていた。

 突然現れたアレクシオンの子供達に、脅される形とはいえ禁を破ってしまった。

 あの後に“世界の意思“が子供達を連れてきたと知り、幸いペナルティを受けずに済んだのだが、それを知るまでは怖くてしかたなかった。


「話というのは?」

 

 アレクシオンもこれ以上この事について話す事は辞めた。

 この話をした時の女神の顔が暗く沈んでいたからだ。

 まだ話したい事はあるのだが、取り敢えず女神の話を優先させた。


「まずはこちらからもお礼をさせて下さい」

「お礼ですか?」

「はい、アレクシオン様のお陰でこの世界の被害が抑えられました」

「被害とは?」

「『略奪者』のです」


 女神は語る。

 アレクシオンの貢献を。


 アレクシオンが転生した事により様々な被害が抑えられた。

 最初にアレクシオンが戦った初の『侵略者』、能力は相手を眠らすだけの力だが、その効力が強力だった。

 能力に当てられた生物は、例外なく永遠の眠りにつかせてしまう。

 アレクシオンは、圧倒的な耐性により無事だったが、耐性や対策を持ってしないとあの『侵略者』には戦う事すら許されなかったのだ。


「本来あの場にアレクシオン様がいなかった場合、世界に多大な被害を及ぼしてました。それこそレアリア王国はシア王女殿下を残し滅んでいたことでしょう」

「何でその事が分かるんですか?」

「女神の力の一つに様々な未来を視る能力があるのです」

「凄いですね」


 関心と驚きを持って呟くアレクシオン。


「他にも奴隷を解放するために壊滅させた盗賊団」

「アイツ等もそんな被害をもたらすんですか?」

「正確に言いますと、盗賊団の中にいた奴隷の一人です。名前はナイン」

「ナインが」


 狐人ルナール族でありアレクシオンの子供の一人。


「ナインさんは、盗賊団での生活に絶望していました。ある日盗賊団の一人に辱められ、人間を世界を恨む様になります」


 アレクシオンが存在せず、盗賊団が壊滅していなかった場合。


 ナインには大きな潜在能力があった。

 辱めらたその日、ナインはその力を覚醒させてしまう。

 破壊と殺戮に。

 盗賊団は壊滅され、奴隷の子供達を残し魔物、種族、年齢関係なく殺戮の限りを尽くし、やがて殺される。

 殺されるまでに、一つの種族と数国もの国が滅ぼされた。

 数々の強者も殺され、『略奪者』に対抗する戦力も大きく減ってしまい、世界に多大な被害をもたらす。



「と、このような事が起きていたのです」

「ナインがそんな事を」

 

 確かにナインには、凄まじい潜在能力を感じていた。

 実際子供達の中でも最上位に位置するぐらいにはな。

 強さランキング的にはこんな感じかな。


 1位:??

 2位:ナイン

 3位:??

 4位:ミラ

 5位:レイ

 ・・・・

 ・・・・

 ・・・・

 18位:グラン


 と言った感じかな。

 ただしこれは、純粋に単体としての戦闘力を意味する。

 多対一、支援系、厄介さ、策略などで強さのランキングは変わっていく。

 

 レイは、アレクシオンに対する忠誠心、恩義、家族の長女としての自負で強くなっていった。

 ミラは、アレクシオンの血を定期的に吸うことで種族としての進化を繰り返していった。

 これらに対してナインは、ただの才能だけでここまで上り詰めた、まさに才能の怪物だ。


(今度ナインを甘やかしてあげよう)


 違う未来線の話ではあるが、ナインの人生が不幸に見舞われたんだ。

 だからと言うわけではないが、ナインが喜ぶ事をしてあげよう。

 

(それにナインは盗賊団を壊滅した後に奴・隷・だった子供達を見・逃・し・たんだよな)


 俺はそこにナインなりの優しさを感じた。

 


「他にも言えばきりがありませんが、一番大きいもので言えばアレクシオン様が育てた子供達です」

「子供達」

「はい。アレクシオン様が育てた子供達は、みな世界に多大な貢献をしています。『略奪者』の討伐は勿論の事、商業、開発、問題ごとの解決などで、数多の国が大きく発展、救われてきました」


 あー、確かに子供達は色々な所に行って様々な事をするな。

 手紙や噂、人伝に子供達の活躍はよく聞く。

 贈り物だって凄いんだぞ、家の拡張した倉庫をパンクするぐらいに。


「本当に重ねてお礼をさせて下さい、世界への多大な貢献“管理者“としてお礼申し上げます」


 頭を下げる女神様。

 そこに込められた感謝の気持ちに、俺はむず痒さを感じるのだった。

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