竜王様と呼ばれるようになって 〜子供達よなんでそんなに引っ付いてくるのかな?〜

@Reiben0520

1話 《現代》若者に聞かせてあげよう

 「竜王様起きてください!」


 暗い室内で響き渡る声に俺は目を開ける。


 「リーフィ」

 「おはようございます竜王様」

 「俺はどれくらい寝てた」


 俺はいつも起きる際に、どれくらいの月日が経ったのかを聞く。

 なぜなら・・・


 「はい、10年程です」

 「10年か〜」


 昼寝ぐらいのつもりだったんだけどなー

 この体になってから睡眠1つで何年も経ってたりするからなぁー


 この体?

 竜ですが何か。

 まっ、タイトル見れば分かりますか。

 ハハハハーーーー!


 「竜王様?」

 「ああ、悪いくだらないことを考えてた」

 「竜王様が考える事です!くだらなくありません!」

 「いや本当にくだらない事だよ!」


 はぁー相変わらずこの子は、いやこの一族は何というか、俺の事を美化しすぎてる気がするんだよね。

 先祖の時から全く変わらないよ。

 と言ってもその先祖まだ生きてるんだけど。

 俺から離れたくないと《不老》を手に入れるんだから凄いよな。

 そう言えば、目の前のリーフィも同じ理由で《不老》を欲しがってたったけ?


 「おーいリーフィまだか?」

 「はーい今行きます」


 室外から聞こえてきた声に反応するリーフィは、俺の方を向いて口を開く。


 「それでは竜王様向かいましょう」

 「ああ」


 俺は黒い鱗で覆われた巨体を上げ、リーフィの後に着いて行く。

 暫く着いて行った先に、大きな門があった。

 その門の前に2人の男女がいた。

 2人は双子なのかその顔はそっくりであり、髪の長さぐらいでしか見分けが付かない。

 2人は俺の方を見て一礼する。


 「「竜王様眠りから覚めるのをお待ちしておりました」」

 「・・・あー!お前等はあの時の双子か」

 「「覚えていただき光栄です」」


 思い出した。

 この2人は俺が昼寝をする前に助けた子達だ。

 

 「大きくなったな」

 「「あれから10年経ちましたので」」

 「そうだな10年だもんな」


 10年もすればそれは大きくなるよな。

 それにしても、この双子は全く同じ声で同じ言葉を使うな。

 さすが双子!


 「2人は門番になったのか?」

 「あの時の恩返しがしたく!」

 「竜王様にお会いしたく❤️」

 「ん?」


 あれ?

 同じ事言うのかと思ったら違った。

 最後の女の子方はなんか俺に熱い視線を向けてくるし。


 「竜王様、お二人共そろそろ」

 

 おっと少し話しすぎたかな。

 

 「悪い悪い、2人共門を頼む」

 「「かしこまりました」」


 2人は門に手を掲げ魔力を送り込む。

 この門は、内側から魔力を注がないと開かない仕組みになってんだよなぁ〜。

 

ーゴゴゴ


 門は少しずつ開き始め、外の景色を映し出す。

 森と街いやこの規模になると国かな?

 それ等が合わさった様な煌びやかで幻想的な景色が目に映る。

 そして門の前に並ぶ、人、エルフ、ドワーフ、獣人、魔族、魔物など色々な種族が俺を出迎える。


 「竜王様だぁー!」「お目覚めになったぞー!」「きゃー!竜王様よ」「何と神々しい!」「『眷族』の方達をお呼びしろー!」


 ん〜〜〜〜

 やっぱり慣れないなこれ!!

 俺祝い事や発表とかで、自分が主役になってみんなの前に立つのってそんなに好きじゃないんだよね。

 だって緊張するし!

 そんな事を思ってたりするけど、無視するわけにはいかない。

 俺は手を民衆達に掲げ左右に振る。

 竜だから手って言うのもなんかおかしい気がするけど。

 腕の方がいいのかな?

 そんな事を思っていると、


 ウオォォォーーーーーー!!!

 

 スゲェ〜耳に響く。

 ドームやスタジオに立ってる人もこんな感じなのかな。

 まぁー立った事ないから分かんないけど。


 ・・・あれ?

 そう言えばさっき、『眷族』って誰かが言ってたような〜


ーゾクリ


 『眷族』かぁ〜

 悪い子達じゃないんだけど、何というか“重い“んだよね。

 体重じゃないぞ、思いがだ。

 俺に向ける思いが半端じゃないんだよ。

 みんなして大なり小なり“重い“んだよ。

 ちなみにさっきのリーフィの先祖も『眷族』だったりする。


 「竜王様御言葉を」


 リーフィが俺に言葉を求めてきた。

 心なしか、先程まで騒がしかった民達の空気が硬くなっていく。

 と言ってもなぁー、何を言えばいいんだ?

 暫く考えても言葉が思い付かず、一周回ってどうでも良いと感じた俺は、アドリブで言葉を並べる。


 「皆の者久しぶりだな。俺、いや我はレクシオンなり。・・・あーこの喋り方はやっぱり合わないな」


 俺は途中で喋り方を変えた。

 それが結果的に良かったのか、民達の雰囲気が柔らかくなる。


 「今回俺は10年寝ていたみたいだ。ほんの昼寝のつもりだったんだけどな」


 10年

 人族にとっては決して短い時間ではない。

 エルフや魔族などの長命種にとっては、たったの10年と感じるようだけど。


 「10年、長く感じる者や短く感じる者などいると思うが、それほど日が経っているという事はこの国もだいぶ変わったと思う。」


 10年

 これほどの月日が経つという事はそれなりに色々変わってたりする。

 建物、ルール、発明、人や国の関係など変わっている物は多いだろ。


 「なので俺は、見て回ろうと思う。この国の全てを!だから魅せて見ろ!お前等がこの10年何をしてきたか!!」


 オオォォーーーーーーーーー!!!!


 「素晴らしい演説でした」

 「こんなのでいいのか?」

 「はい!」


 満面の笑みで喜んでくれるリーフィ。

 それを見て俺も嬉しくなる。 


 「さてと、宣言通りこの国見て回るかー」

 「道案内はお任せ下さい」

 「頼んだよ」

 

 毎度のことながら、眠った後の国の探索は楽しみだな。

 ここ最近の俺の睡眠はから5年から100年程で、長い時はもっと寝てたりするからな〜。

 でもだからこそ、


 「どれくらい変わって行ってるのか、楽しみで仕方ないんだよな」


 今回の探索では何が変わっているのか。

 新たな出会いがあるのか。

 長い年月を生きる俺にとってはこれが、数少ない楽しみだ。

 長い年月か、


 「もうあれからどれくらい経つんだろうな」

 「竜王様?」

 「うん、ああ昔を思い出してな」

 「竜王様の昔話!聞いてみたいです!!」

 「そっ、そうか」

 

 目を光らせるリーフィに押された俺は、どこから話すか迷いながら口を開く。

 

 「そうだな〜、そしたら俺がこの世界に転生したところから話そうか」

 「転生?」

 「そうだぞ。俺はこの世界に転生する前は人間だったんだよ」

 「人間だったんですか!?」

 「そうなんだよ。俺人間だったんだよ」

 

 人間だったとネタバレする時の、みんなの反応は相変わらず楽しいね。


 「あれは俺が転生して目が覚めたらーー」


 そうして、俺はリーフィと国を歩きながら昔を思い出し話していく。


 仮に今から話すことが本になって名前をつけるなら、「竜王様と呼ばれるようになって」でいいかな。

 もっといい名前は無かったのかって?

 うるせぇー!

 これは俺の物語だからいいだろ!

 いや違うな、これは俺と眷族こども達の物語だな。


 さあよってらっしゃい、聞いてらっしゃい

 これから話すのは、竜王様の出会いと別れが詰まった話だ。

 退屈はさせないよ!

 させても謝らないからね!


 さてさてあれは・・・

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