6話 本っていいよね!だから読んでくださいお願いします!!

 あれかもルーさんとは談笑をして、また今度会おうと言う事でルーさんとは別れた。


 「にしても驚いたな〜。まさか、ずっと抱き着いてくるなんて」


 そうなのだ。

 ルーさんは、別れるその時まで抱きついていたんだ。

 何であんなに懐いてるんだろう?

 そういえば、地球にいた頃も懐いてくれた子供達は、隙があれば抱き着いていたな。

 それこそお風呂やトイレ以外はずっと一緒だった、という事もあったな。

 今考えてみてみれば狂気を感じるな。

 ルーさんからもそこまでといわなくても近しい物を感じる。

 はぁー、本当に出会って1日なんだけどね。

 何であんなに懐かれたんだろ。


 まぁ考えても仕方ない。

 今は、届けに来てくれた品を見てみよう。

 先ずは本だな。

 魔法は勿論のこと、歴史や地理も学べる。

 俺は、この世界のことを知らないからな。

 

 そして次に酒。

 俺のサイズに合わせて酒樽に入れてくれている。


 次に調味料。

 いくら生で食えるからといって、俺は元人間なんだ。

 焼きもすれば、調理もする。

 とわ言っても、調味料のほとんどは塩だ。

 これに関しては仕方ないよな。

 俺体でかいし。


 他にも彫刻等や置き物などといった家に飾る様な物など用意してもらった。

 これは俺が、暇つぶしに何かを作る際の御手本にするためだ。


 さて、それじゃあ最初は本だな。

 本の種類は色々あるが先ずは歴史だな。


 1冊の本を取り出しページを捲る。

 どうやって本を捲ってるかって?

 ふっふっふ、風魔法さ!

 いや〜便利だよねこれ。

 本を風で浮かせ、ページを捲る際に右から左、左から右に風を送るだけ。

 これで簡単に本を読むことができる。

 

 「どれどれ」


 1匹の竜は、本を読み始める。

 

 

 この世界は、天界、地上、魔界の3つに形成されていて、天界には主に神々と天使が暮らしている。

 地上には、人間、エルフ、ドワーフ、獣人、竜人などといった多種多様な生物が暮らしている。

 魔界には、魔族、悪魔が暮らしている。

 

 過去には、天界、地上、魔界の3つで戦争があったようだ。

 戦争は苛烈さを増し、皆疲弊していった。

 長く続く戦争に辟易したのか、各場所の王は和平を願い暫くの平和が築かれた。

 しかし、今度は天界、地上、魔界それぞれの場所で同じ種族での戦争が起きてしまった。

 天界では、神々は善なる神と邪なる神に分かれる。

 地上では、人類が覇権を築く為、各種族に戦いを起こした。

 魔界では、力の強き者が頭角を表し魔王と呼ばれる様になった。


 こうして成り立つ3つの世界は、ある日を境にお互いが協力をしていく事になる。

 3つの世界を侵食する謎の存在、『略奪者』に。

 

 『略奪者』は、人の姿をしていたり、異形の怪物だったりと様々だが、共通しているのは突如空間に割れ目が起き、一定時間が経つとそこから『略奪者』が現れる事。

 

 『略奪者』は、どれもが強力な存在で存り、割れ目が起こり備えようと、壊滅的な被害が起こる事もよくある。

 そして、逃し討伐できなかった者も存在する。

 

 その者は、その後3つの世界にありとあらゆる災いを起こした。

 3つの世界は、手を取り合いその者の討伐に成功した。

 

 それ以来、各場所で小競り合いはあれど、『略奪者』を共通の敵として、3つの世界は共存している。


 これからもこの世界に平和が在らんことを。



 アレクシオンは、ひとしきり読み終わった本を閉じ息を吐く。


 「この世界、やばくね?」


 一言。

 しかし、それは嘘偽りのないこの男の感想だった。

 この世界の生い立ちを知り、危険な存在がいる事。

 その存在は、これからも現れる可能性が十分にある事。

 これから先、どんな事が起こるかはわからない。

 だが一つ決意した事はある。

 

 「平和に暮らそう」


 えっ!?

 『略奪者』を倒そうじゃないのかって?

 やだよ!

 俺は別に物語の主人公って訳じゃないんだよ。

 一般人。

 10人の子供を持っていた一般人!!

 あっ、今は竜だった。


 兎にも角にもやる事は変わらない。

 此処を拠点に暮らす。

 

 よーしそうと決まれば、酒だ酒。


 「それにしても、俺の転生をしてくれたのは、天界の女神に当たるのかな?」


 考えても答えは出ないだろう。

 それに俺からしたらあの女神は、ただのポンコツだしな笑


 「美味い!」

 

 この世界のお酒はとっても美味しかったです。



〜レミリヤ〜


 とある屋敷で、2人の人物は向かい合い話し合っていた。


 「どうだった、例の黒竜は?」

 「凄まじい、その一言だの」


 レミリヤは目の前の父アラン・ボーン・ブルクに先程までの事を話していた。

 レミリヤの父アランは、この街の領主であり、それなりの歳を取っているはずが、見た目は若々しくレミリヤと2人で並んだ際は、歳の離れた兄妹に見えるだろう。

 そんなアランは、娘が会っていた黒の竜に興味が深々だった。


 竜

 天界、地上、魔界含め上位的な存在に立ち、誇り高い生き物であり、1匹1匹が強大な力を持つ。

 それこそ『略奪者』すら単体で屠るほど。


 それが、街の近くの森に住み着き友好的ときた。

 会ってみたいと思うのは仕方ない。

 

 それにこの男、アランは領主になる前は、各地で名を轟かせた戦士だった。

 ある戦争で、功績を上げ今は、この街の領主になった。

 そんな男は、強い者に目がない。


 「凄まじいか。レミリヤが言うのなら間違いないのだろう。それで、なぜそう思う?」

 「ほれ」


 レミリヤはアランにある物を投げつける。

 それは、黒い鱗が入ったケースだった。


 「道中その鱗に何度か本気の魔法を打った」

 「ほう」


 アランは目の前のレミリヤを見据える。

 戦士の自分の元に産まれたのが不思議なぐらいに、魔法の才に愛された娘。

 その才は、この国でもトップクラスだ。

 その娘が放つ魔法は強力だ。


 「傷一つ付けられなかった」

 「!?」


 アランはまじまじとケースに入ってる鱗を見つめる。

 光沢を帯びる黒い鱗には確かに傷一つない。

 娘が本気で放った魔法をだ。

 幾ら魔法に耐性があるとはいえ、鱗1枚。

 これが意味する事だけでも、件の竜の硬さが桁違いだと分かる。

 

 「それだけではない。我はあやつを、いやあの方を見て初めて、、、」


 

 そこで言葉を切ったレミリヤは、改めてアレクシオンを思い出しその華奢な体を震わす。

 

 「畏怖した」

 「・・・」

 「戦おうとすら思わなんだ。いや違うな、戦う資格すらなかった」


 アランは初めて見る娘の姿に固まり、内心驚く。

 

 (勝気なレミリヤにここまで言わせるとは、ますます会いたくなった)


 アランは、密かにその胸に決意を決めた。


 「それで、お前はこれからどうする」

 「何これからもあの方、アレクシオン殿に会うつもりだ」

 「そうか、迷惑はかけない様にな」

 「分かってる」


 レミリヤは、そう言いその場を去る。

 

 「ん?」


 アランは首を捻る。

 気のせいか、レミリヤの頬が赤く感じた様な。

 まさか、、、


 「嫌、そんなはずないか」


 アランは首を振り、自分の考えを否定した。


 


 一方その頃


 「ん、なんだ〜?」

 

 俺は目の前の空間にヒビが入った事に驚いた。

 何だこれ?


 初めて見る現象に頭を捻るアレクシオン。

 仕方がない事だろう。

 地球では見ることのない現象。

 しかし、これは先程読んだ本に書かれていた内容に一致する。


 この先、アレクシオンは対峙する事になる。

 この世界の敵『略奪者』と。

 

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