15話 食べすぎ?はよくありません!
〜奴隷解放から数日後〜
「お父さん!」
「パパ!」
「父上〜」
今アレクシオンの目の前には、多種多様な種族の子供達が集まっていた。
アレクシオンの体は元のサイズに戻っており、子供達は全員体のどこかに触れていた。
「む〜」
少し離れた所で、ダークエルフの少女レイは頬を膨らませて見ていた。
そんなレイを見据えてレミリヤは声をかける。
「混ざりたいなら一緒に行けばいいじゃろう」
「いえ私は」
「それなら妾も混ざろうかの」
「だ、ダメです!」
レイは、アレクシオンの方に向かうレミリヤの腕を抑える。
「何じゃ?」
「あっい、いえ、その〜」
「お主も素直じゃないのぅ〜」
レミリヤは溜め息を吐きながら、アレクシオンに群がる子供達を見る。
(何人か、危うい者がいるの)
レミリヤが見る子供達の何人かは瞳のハイライトが消えていた。
その瞳は絶望などで消えておらずもっと禍々しく、粘着的であり狂気的な瞳をしていた。
あの瞳には見覚えがある。
いつの日か、とある教会にて神に祈りを捧げる狂信者と同じ瞳だ。
そうなのだ。
奴隷から解放され、生きる理由を与えたアレクシオンに対して、何人かの子供達は大なり小なり崇拝の気持ちを抱いていた。
アレクシオンが、ただの一般人ならここまでの気持ちを抱かなかったかも知れない。
しかしアレクシオンは竜なのだ。
自分達より遥かに上位の存在であり、圧倒的強者であるからだ。
今も、獣人族の少女がアレクシオンの鱗に自分の体を擦り付けていたりする。
これは一種のマーキングだったりする。
違う所では、吸血鬼の子供がアレクシオンに血を強請っていたりする。
ちなみに吸血鬼は太陽に当てられると弱ってしまうが、アレクシオンの血により種族的に進化したのか太陽の元でも元気だったりする。
そして、血をもらった際にすっかり虜になってしまったのかよくねだるようになった。
もう一方では、ドワーフの少年がアレクシオンの体を様々な角度で見ていたりする。
これは何をしているのかというと、純粋にアレクシオンの体に見惚れているのだ。
素材として、、、
仕方ないのだ。
ドワーフとは発明を尊ぶ種族であり、竜の体はまさに素材の宝庫なのだ。
鱗、爪、牙、臓器、肉に至るまで使えない場所が全くないのだ。
こうして様々な理由はあれど、みながみなアレクシオンを求めている。
そしてそれは子供達だけではない。
「アレクシオン様〜」
魅惑的な肢体でアレクシオンに抱き付くのは、金髪エルフのルーであった。
「全くあやつは」
レミリヤは嘆息しながらルーを見る。
(お主そんな奴ではなかったじゃろう)
アレクシオンに会ってからルーはおかしくなってしまった。
日常生活では特に問題はない。
だが、アレクシオンが絡む事になると豹変してしまう。
主にずっと抱き付いて離れなくなったりする。
「まぁよい。あやつはもう手遅れだしの」
レミリヤはルーから視線を外しアレクシオンを見る。
今も子供達に抱きつかれているアレクシオンは何を思っているのだろうかと。
「動けない」
思っている事は単純で、動けない不便さを感じているが、無理矢理子供達を退けられない不便さだけだった。
♢
私は吸血鬼のミラ。
お父様、偉大なる黒き竜アレクシオン様の家族です。
お父様には、感謝しかありません。
私達を奴隷から解放してくれただけではなく、生きる理由を与えてくれた。
本来、太陽の下では生きていけない私達吸血鬼に、血を与えてくださり進化させて頂きました。
お父様の血はこの世のものではない程に美味しく、正直他の血では満足出来なくなったかもしれんません。
それは私だけではなく、他の吸血鬼の子達もだと私は思います。
あっほら、今もお父様に血をおねだりしてる。
ずるい!!
私もお父様の血が欲しい!!
かぷっ
〜〜〜〜〜んんん!
美味しいよぉ〜〜!
お父様もっと!もっと!もっと頂戴!!
血を飲んで感じるのは、美味しさだけではない。
飲んだ瞬間、体全体に全能感を感じる。
自分が今この瞬間も強くなっている。
お父様の血で、自分が生まれ変わっている。
この感覚が堪らなく心地よい。
そんな私にも不満はある。
今もお父様に抱き付いている
ナインちゃんは隙あらば、お父様に抱きつき体と尻尾を擦り付けている。
私は、あの行為を知っている。
あれは、求愛行動だ!!
間違いない!
ナインちゃんはお父様を雄と見てる。
何故だろう?
それを理解した瞬間心の中がモヤモヤする。
ああ!
今ナインちゃん私を見て鼻で笑った!!
ムカ〜〜!!
ナインちゃんにお父様は渡さないもん!
かぷっ
「おわ!?何だミラおかわりか?」
お父様の驚いた声が聞こえるけど今はそんなこと気にしない。
お父様は私のだもん!
美味しさと万能感に酔いしれながらミラは心の中でそう思うのだった。
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