第5話アジトへ向けて出発

「それで、どの方向にいくの?」


「ねぇ、仁志なんで私たちがここで待ち合わせしてるか分かる?」


なんでここで?ふむ、ここは崖


「おいおい、待て待て、何する気だお前」


「安心して、私風魔法得意なの、それに仁志の能力もついてより完璧な策戦になったわ」


「それじゃあ、レッツゴー」


不敵な笑みを浮かべたルナが言い終わると同時に、目にも止まらぬ速さでセレーに抱えられ、いつのまにかメイドとお嬢様と普通の高校生の俺、3人で空を飛んでいる意味不明で、怖くて・・・そして、なにより面白い状況になっていた、思わず笑いが漏れてしまうくらいに


「ふっ、ふふ」


「いい笑顔」


「崖から落ちるの、意外と楽しいでしょ?」


「ああ、自殺趣味があるわけでもなかったからやって来なかったらけど、こりゃ、やらなきゃ損だな」


そんなくだらない、けど崖から落ちた経験がないと分からない、楽しさがある


「お嬢様、仁志様楽しむのもよいのですが、もう少しで地面です。備えてください」


「了解」


「自信わないが任せろ」


そう応え、俺が着地地点の重力を下げて、その上にルナが風魔法で風域をつくり、ゆっくり、今度は勢いとスリルではなく、まったり、どこまでも続く森の果てを見ようとしながら、地面にゆっくり、安全に着地した


何か嫌な予想が、いやそんなはずない、ないんだ


「ねえルナ、確認なんだけどさ」


「なに?」


「今から、この森を越えるとかいい出さないよね」


「安心して、仁志」


ほっ、流石にそんな意味わからん距離の森を進んだりしないよな


「森を越えたりはしなよ、この森の中心、飛んでる時に見えた距離の2倍くらいの位置まで進むだけだから」


はっえっはっえっ、なんて言った今この娘、飛んでる時に見えた距離の2倍⁉︎まぁ、休憩とかは、あるのかなぁ、あるといいなぁ


「お〜い仁志〜、あちゃー、口半開きで白目剥いちゃってる」


(お姫様を目覚めさせるには、王子様のキスが必要、じゃあ王子様を目覚めさせるには?ちょっとイタズラでほっぺにでも)


と思いながら無意識に唇を舐めて、不敵な笑みを浮かべながら仁志のほっぺに顔を近づける


「何しようとしてるんですか?お嬢様、それはイタズラでやるべきではないかと」


「わっわかったわよ」


はっ俺は、そうか今までショックのあまり気絶していたのか、早く目を開けよう


・・・どういう状況だこれ、ルナがほっぺを膨らませて、セレーがほっぺを両手で挟んで、こねてる、俺が気絶している間に何があったんだまあいいや、ほっぺ膨らませてるルナかわいいし


てか、今までしっかりセレーのこと見てなかったから気づかなかったけど、綺麗な顔と肌だな、それにまとめられてるから質感とかは分からないけど、綺麗な金髪だな


「あっ、仁志が目覚ましたよ」


「ずいぶん、早かったですね、それでは進みましょう」


そういやなんで逃げてるんだ、「好きでもない相手と結婚するのが嫌だから」って言ってだけど本当にそれだけか?いやまぁ、それが理由で逃げていてもおかしくはないけど、何かあるような気がする、聞くか


「なぁルナ、なんで逃走したいって思ったんだ?」


「バレちゃうか〜すごいね」


「ただの勘だ」


「そっかまあなんでもいいや、理由はねぇ、嫌いなのよね、王族が、貴族が、何にも考えずに偉い人を持ち上げることしかしない平民が、特に王族、まぁ一応家族みたいな奴らが嫌い、私の実力を否定して、理解が出来ないからと言って、全て虚言の一言で終わらせて、私の研究を否定するあいつらが、物心ついた時から、政治の道具として私を育てたあいつらが、全部嫌いなの、だからセレーと一緒に逃げ出したの」


辛さが、憎しみが、悲しみが言葉の節々から聞こえてくる、ごくごく普通の生活しかしてこなかった俺じゃ、完全に理解することなんて不可能だと思えるくらいの憎しみが感じられる、理解は出来ないけど、そんな奴らのせいで、ルナが逃げ続ける、潜み続けるような生活を送る必要ない、もうかける言葉は決まってる


「俺じゃ、その辛さも、憎しみも、悲しみも完全に理解することはできない、けどこれだけは分かる」


「ねぇルナ、潜んで暮らすのってさ、窮屈じゃない?」


「えっ、う、うん窮屈だと思うけど」


「ルナが話たようなやつらのせいでさ、ルナが窮屈な思いするのは違うと思うんだ、だからさ、その国・・・転覆させてやろうぜ」


「ぷはははは、ほんと予想外のこと言うね、でもそれ楽しそう、いいね乗った」


ほんと、世界一かわいい笑顔をするなぁ、こいつは


「はぁ、その顔、止めても無駄っぽいですね」


「「当たり前じゃん」」


「ではまず、アジトに戻って作戦を立ててから、ですよ?」


「よーし、くそ遠いアジトにレッツゴー」


「めんどくせぇー」


そんな会話をしながら、あったばかりのお嬢様と、メイドと、俺こと普通の元高校生の三人の国家転覆までの旅が、今始まったのだった


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