第17話 僕とすーちゃんの演技対決始まる

僕の最大の敵(あ、あの大きな人間ではない方ね)黒きレディ、すーちゃんことすみ美さん


最初のうちはあんなにオカシャンにもオトシャンにも「喧嘩上等!」っていいながらちびってたくせに、


今やオカシャンにはベッタリと甘えて、夜になると僕の悪口をオカシャンに告げ口しています。


僕は悪いことなんかしていないのに、


オカシャンはそれを聞くなり「あら、大変でしたねぇ。そうなんですか」とすーちゃんの言うことを信じたように答えます。


冤罪だ!


先日なんてあの個室が消えた後、三種混合?の注射の事を事前に教えてあげたのに。


まぁ、オカシャンが僕たちがずっと健康でいてほしいって気持ちは分からなくないから嫌だけど仕方ないから来年も受けてあげますよ…。


あまりにも僕が悪者扱いされているのが気に喰いません。


ある夜オトシャンとオカシャンが随分遅くまでお酒を飲みに行っていて、


オカシャンだけが先に帰ってきました。


僕は帰ってきたオカシャンのお迎えに行きながら目の上の血が出た傷を見せました。


オカシャンはびっくりして「すーちゃんに負けたの?」と聞いてきました。


負けたと言われると一寸癪ですが、いつも悪者は僕みたいにすーちゃんはオカシャンに話しているからすーちゃんにやられた傷はオカシャンに僕が悪者なんかじゃないって証拠になると思っていたら


そこに日頃お迎えになんか来ない癖にすーちゃんがやってきてオカシャンではなく僕に「大丈夫?あんたケガしてるじゃないの」とオカシャンの前で「あたしじゃないのよ」アピールをし始めたじゃないですか。


オカシャンにも「あたしがこいつにケガさせたわけじゃないのよ」と言うしまつです。


こいつめ、白々しく嘘を付きやがったな…。


僕はまたオカシャンに捕まり傷薬を塗られました。


そして、朝になりオトシャンが帰宅しオトシャンにも傷を見せましたが、


酔っ払いすぎているオトシャンはだいたいそのままの服でその辺で寝てしまいました。


僕の話なんか聞ける状態じゃありません…。吞みすぎですよ。


そうして、オカシャンが目覚めたころ…外は明るく部屋の中を照らし、オカシャンが事件の真実を知ってしまったのです。


「すーちゃんの毛がこんなに散らばっている…。」


おかしゃんはそういうと、僕のところにやってきて、


「昨日のケガは自業自得でしたかじゃこさん」と。


僕は血を見るほどのケガを負ったのだ!被害者だ!と


拗ねてしまいましたが、


本当は夜にオトシャンたちが出かけたから、僕がすーちゃんに「スーチャンあそぼー」と追いかけっこしていたら、あまりにも威嚇してくるから、「あんなにも僕は君に危険を知らせたじゃないか」と


恩をきせてしゃべったせいか「バカな毛玉!」「寄るな!」と言われて腹が立っちゃって紳士な僕も少々我慢が効かずに前歯でおしりにアタックしてやったのさ!


その時に散々舞い散った黒きレディの毛が纏まって落ち、何度もアタックしたら「ウザいのよあんた!」と目の上を引っ掻かれたのが本当のところなのです。


オカシャンは怒ったりせず、「仲良くしてくださいね」と僕とすーちゃんを両方撫でながら言いました。


僕だって仲良くしたいもん。


でも、僕は可愛く甘えるはできてもどうしても、オトシャンやオカシャンの身体の上に乗ることは出来ません。


出来てもオカシャンを起こすときにおでこや瞼を叩く程度に触れるか、そっと伸びをしたついでに乗っけるかくらいが限界です。


すーちゃんはオカシャンにベッタリと乗りかかって喉を鳴らしています。


今日こそは…と思いオトシャンとオカシャンが一緒に眠る部屋(すーちゃんが居る部屋)に勇気を出して潜入です!


この前布団と毛布に隠れていたすーちゃんにダイブできたようにすればいいのです。


すーちゃんはオカシャンとオトシャンの間に居た…まずは挨拶ですね。


「ご機嫌いかが?」僕は黒きレディのおしりの匂いを嗅ぎ始めました。


するとオカシャンが「じゃこさんおしりの穴がダイレクトにお母さんの顔に…。」と言っていたが気にしません。


オカシャンに嗅がせてあげてるんだ僕の事を良く知れと!


すーちゃんはしばらくは気づいてなかったけど、嗅いでるのが僕だと知るなり逃げ始めました。


そして、追いかける僕、逃げ回る黒きレディの戦いは日々幕を開けているのです。


でも、そんな僕らが自らの意思で0距離にくっつき声一つ上げないこともあります。


オカシャンが僕の嫌いな狭い箱の色違いをすーちゃん用に買ってきたようで、今度はすーちゃんから「やばい気配がするわ!隠れなさい」とオカシャンたちには聞こえない声で警告が来ました。


僕も聞こえない声で「ここがいいよ…。」と賑やかな人たちが今は居ないけどその裏にすーちゃんを呼びました。


その時だけはピッタリくっついて喧嘩もしません。


でも、すーちゃんはオカシャンたちに尾行されていて、結局ふたり同時に捕まっていつものように病院に連れていかれました。


病院ではどんなかと言うと…。


僕は嫌々なので威嚇もするから首に輪っかを付けられて先生に抱っこされて武器を奪われおしり周りから足の裏まで毛刈りをされて、先日ケガした目の上の傷も診せられてしまいました。


すーちゃんは先生に甘えるポーズで腕にしがみつき顔を埋め、家では聞けないような可愛い声で「先生やめて…」と言っていました。


この小悪魔め…。


僕はと言うと先生に「おおじゃこ~大きくなったなぁ」と言われたりしながら傷口にやっぱり塗り薬を塗られました。


僕も演技派だと思っていたけど黒きレディの方が数段上の演技派でした。


帰る時は僕の真似をして狭い箱に自動的に入るので、


「ふっ(笑)僕のまねもするんだな」と思ったりもしました。


それにしても、オトシャンもオカシャンも僕らに何かあるたびに病院につれてくるんだから過保護ですよね。


まぁ、オカシャンの過保護は今に始まったことじゃないんですけどね…。


最期の最期まで本当に過保護なんだから…。寝る間も惜しんで美味しいものを新鮮なうちに口に運んでくれたりスポイトで…。


あれ?この記憶って…僕の記憶ですか?


そして、最近の夜のごはんにはレパートリーが増えて色んな美味しいものが食べられるようになってきました。


僕はお気に入りは鶏肉のやつが好きだな…あれ?んまぁいいや、


美味しいものを食べるとだいたいどうでもよくなっちゃうのが僕のいいところです。


季節は少し暖かい日と寒い日が何日か交互に来るそんな季節になってきました。


過ごしやすくでも寒くないようにとオカシャンはホットカーペットを付けて行ってくれるから温度調整は自分でできます。


もう少ししたら、またあの暑い季節がやってくるのかな…。


最強の敵…今年は会いませんように…。


そんなことを考えていたらある日僕はオカシャンに外に連れ出されました…。


そこで見たのは…春の風物詩である満開の桜と花吹雪でした。


僕が窓から見える桜の木に興味があるんだろうと思ったのかお花見に連れてきてくれたのです。


すーちゃんは病院だと思って隠れちゃったから僕とオカシャンだけの二人きりのお花見です。


外はまだ風が少し冷たいですね。でもオカシャンのお腹が当たってる場所は暖かいです。


帰ってきたらいつも通りとろとろの舌の止まらないやつを貰ってご機嫌でお昼寝をしました。


オカシャンはすーちゃんがなんて悪口を言おうが僕を信じてくれるんですね。


僕もオカシャンの願いを叶えてあげたいです。


ずっと一緒に居ますよ…オカシャン。

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