第2話 人間観察そして僕、オトシャンを救う

僕の新しい家政婦さんと執事さんは自称「お母さん」と自称「お父さん」


僕は「オカシャン」と「オトシャン」と呼び、天才扱いを受けていながらも二人が丸々1日引きこもる部屋の扉を開けることができずにいます。


仕方ないので、しばらくこの二人を観察してみることにしました。


どうやら、思い返せば彼らだけではなく今までの数多く出会った家政婦さんや執事さんは暗い日は眠る習性があるようです。


僕は暗い日だろうが明るい日だろうがちゃんと寝てちゃんと起きているんだけど、彼らはずいぶんと長く寝て、その分長く起きてもいます。


僕が寝ている時間でも起きていることが多々あります。


そして、数週間様子を見て分かったことは、彼らは明るい1日と少しは大方このおうちからも出ていくということです。


オカシャンはオトシャンよりも先に目覚めて僕に「おはようじゃこ」と挨拶をしたあとにごはんを用意してくれます。


久々の再会なので僕も甘えていっぱい傍にいます。


「じゃこさんはいい子だね、かわいいね」といいオカシャンも何かおいしそうなものを食べては僕のほうに例のアレを向けてくるので、


すぐ逃げます。


どうもアレはいいものじゃない気がします。


ご飯を食べ終わったオカシャンは早々に出かけていきます。


その頃、オトシャンはというと…まだ眠っているようです。


ごはんを食べてオカシャンと少しお話をして満足して僕が眠りについた頃、オトシャンは目覚めては慌ただしく僕に「おはようじゃこ」と言って濁った水を飲んで出かけて行きます。


僕もまだ眠いのでとりあえず二度寝です。


まだ明るい日、よーく寝たなぁーと思っていたらオカシャンが帰ってきました!


もしや、先日遺憾の意をしてやったことが効果あったのかもしれません。


やってやるもんだな…とちょっと嬉しい気分になりました。


帰ってきたオカシャンはごはんをくれていっぱい撫でくりまわしてきます。


ちょっとならいいけど、調子に乗ると僕を捕まえようとする癖があります。


なのですぐ逃げます。


僕は彼らが居ない暗い1日の間にこの場所のあらゆる物を調べつくしてあります。逃げ場所なんて簡単に見つけられるのです。


バレない自信だってあります。


帰ってきたオカシャンは僕がまた寝る頃には出かけて行きました。


僕は眠りがとても浅いのですぐ分かります。


そして暗い日になると二人とも帰ってきて僕に、とっておきのごはんをくれます。


絶品なのですそのごはんは!


それからの1日はオカシャンもオトシャンも僕の傍で僕にアレを向けたり触ろうとしたりもしますが、とっても安心できる日です。


だけど!ものすごくうるさい時間でもあります。


オカシャンやオトシャンの声とも違いなんだか賑やかな家政婦さんや執事さんが沢山いて同時に話している場所がこのおうちの中にあるようなのです。


その人らの傍に行って確かめたのですが、その人らは僕に触ってきたりしないので特に害はないと判断しました。


オトシャンは特にその人たちをよく見つめています。オカシャンは見つめるよりは例のアレを触っていることが多いです。


気を抜くと僕に向けてくるアレはどうやら家政婦さんや執事さんの多くが所持しているものらしいのですがなんなんでしょうね。


基本的に彼ら二人のパターンは暗い日一日目は僕と過ごし暗い日二日目には眠り、明るい日一日目には出かけて行き暗い日になるまではオカシャンがたまに帰ってくるという習慣があるようです。


美味しいごはんがもらえるのでとりあえずは満足しておいてあげます。


時々オトシャンもオカシャンも明るい日にずっと家にいることがありますがだいたい月に数日です。


僕は自分が遊びたいときに遊び、眠りたいときに眠る、ごはんの心配はないそんなこのおうちがなんとなく、好きになってきました。


透明な扉もあってそこからは空も見ることができます。


僕専用の遊び場もあって高いところに上って透明な扉を見るとなんだか動いているものなども見ることができます。


オカシャンが出かけている日にオトシャンがおうちにいることもあるのですが、そんなある日透明な扉から取り込んだ洗濯物をドサッと籠に入れて出かけて行ったオカシャン、そしてそれを片付けようとするオトシャン。


そして事件は起こったのです。


僕は初めて見るとても小さな来客に胸を高鳴らせていたのですが、オトシャンは悲鳴を上げて「じゃこさん助けて!」となんと怖がっているのです。


小さなお客さんは羽を持っていてでも体が重そうでそんなに高くは飛ばないので僕はひたすらご挨拶をしました。


だって初めて見るんです。僕の手ほどの小ささのお客さんです。


大歓迎ですよ!でも彼?あるいは彼女?は僕のご挨拶を素直に聞いてくれません。部屋中をグルっと回って結局透明な扉の傍に戻ってきてしまいました。


ただ匂いを嗅いだだけなのに…。


するとオトシャンが大喜びで透明な扉からせっかくのお客さんを帰してしまいました。


僕の友達にはどうやらなってくれなかったみたいです。


それにしてもオトシャンはなんであんな小さなお客さんに悲鳴なんて上げていたのでしょう?意味が分かりません。


帰ってきたオカシャンにオトシャンが僕の武勇伝として話をしていました。


「取り込んだ洗濯物の中からでっかい蛾が出てきてじゃこさんに助けて!って言ったらひたすら蛾の匂いを嗅いで蛾を窓まで追いつめてくれて助かった!」と


どうやら小さなお客さんの名前は蛾というらしく、透明な扉は窓というのだと知りました。


そして、オトシャンは僕がオトシャンを助けたと勘違いしたようでご褒美をくれました!


暗い日に食べるごはんとも違い日ごろのごはんとも違う、なんだろうこの、


とろとろで舌が止まらないご褒美は・・・。


兎にも角にも、このおうちでの大事件その1は無事僕の活躍のおかげで解決したようです。


僕ってすごいじゃん!

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