第32話 とっても困っています
新しいおうちに引っ越してきてから、すーちゃんとの距離が近いことが多々あり、
僕が遊んでほしくてオトシャンに話しかけに言っても邪魔しにきますし、オカシャンの寝かしつけをしていても乱入してきます。
オトシャンとオカシャンが同じ部屋で寝ている時には僕は同じ部屋のベッドの下で眠ります。
すーちゃんはちょっとだけオカシャンたちのお布団に入って気が済んだらこたつに戻っていきます。
こたつがあるのはリビングなのですが、前の家ではリビングと言えば僕の部屋だったのが今ではそうはいきません。
リビングが好きなのは家族みんな同じです。
特に夜には僕は紐を振ってもらう催促をしますが、すーちゃんは撫でてくれと催促に来て僕の紐遊びを邪魔します。
それを見ていると僕も撫でてほしくなってくるもんで不思議です。
僕が撫でられると嬉しい場所は顔から頭、あご回り、背中などですがもちろん気分によってはすべてがNGです。
それに比べてすーちゃんは最初こそオカシャンの指に大穴を空けた割に、今はどこを触っても大喜びです。
特におしりを撫でられるのが大好きなようなので、僕もすーちゃんのおしりにはいつも鼻で刺激してあげるのですが、なぜか僕がやると「何してんのよ毛玉!」と怒られてしまいます。
それでも懲りずに挑戦していっていますが、僕とすーちゃんは基本的に朝は仲良しでお鼻でチューをするほどです。
でも、それ以外は基本的に顔を見れば取っ組み合いの喧嘩になるか各々一人の時間を過ごせる場所にて休みます。
こたつが取られたので僕は基本的にベッドの下に居ましたが、ベッドの下もすーちゃんが来ることがあるため僕だけの場所として新しい空間を見つけては、
かくれんぼの鬼をやらせたら絶対見つけるオカシャンに見つかるまで、おとなしくしています。
ある日寝室に居たらすーちゃんが来たので扉をうっかり押してしまいました。
それもちょうどオカシャンもオトシャンも出かけたここ最近では珍しい日に。
僕は扉は押して開けるものだと思っているのですべての扉をうっかり押してしまいます。
お水もごはんもトイレももちろんありますがこの部屋に僕とすーちゃんがふたりきり。
恐怖しかありません。
そして閉じ込められた時の僕は逃げ場がないためすーちゃんに喧嘩は売りません。
ひ、ひよっているわけではありませんよ。
僕は密室でレディに喧嘩を売ったりしません紳士なので・・・。
いつもなら「じゃこさーん」と呼ばれても体の一部を揺らして返事をするくらいめんどくさがりな僕ですが、その日はオカシャンが帰ってきたのに出迎えに来ないことを不審に思ったのか探し回った結果「じゃこどこー?」に
「はーい!はーい!僕はここで閉じ込められています!早く開けてください!助けてください!すーちゃんとふたりは怖いです!」
と即答しました。
日頃即答しないのでオカシャンは嬉しそうに扉を開けてくれました。
年末から仕事に行かないオカシャンは退屈かと思いきや、頭はフル回転していますが、身体は相変わらず一人で家から出ることが出来ません。
なので家での僕たちとの遊び方が変わって来ました。
とにかくすーちゃんはオカシャンにベッタリなのでひたすらおしりを撫でさせています。
それだけでは飽きるかな?とオカシャンは寝っ転がってすーちゃんに「飛行機のポーズ」で両手両足を使って「ブーン」と言っては下ろす謎の遊びにハマり始めました。
僕は抱っこも飛行機ポーズもNGです。(小袋の美味しいおやつがあれば多少我慢します)
それにしても、すーちゃんと対等?な関係になったことにより、僕の抱っこされ率も上がってしまいました。
大変困っています。
僕は最初のおうちで子供のうちは沢山抱っこしてもらえましたが、数か月した頃今と同じくらいの大きさになり抱っこされることよりも、蹴り飛ばされたりすることの方が多くなりました。
当時は、抱っこされるのかなと思ったら邪険に扱われることも増え、抱っこには恐怖を感じてしまっています。
いわゆるトラウマというやつだと思います。
オカシャンは邪険に扱うことはしませんがとにかくしつこいので僕が許してあげられるのはほんの数秒が限界です。
フラッシュバックが起きてしまいますからね。
それでもなぜかそのあとの小袋のおやつを持ったオカシャンにはうっかりついていって、しっかりおやつは食べるのですけど、きっとオカシャンは甘やかすと図に乗るタイプなので適宜という秒数にしています。
パブってなんかないですよ・・・。
とりあえず一人で外出しないオカシャンは、とにかく調べものと誰かとの話し合いをするくらいの元気は出てきたようです。
オカシャンは何をそんなに調べているのだろう?
オカシャンはお仕事が大好きだったはずなのに今はこんな感じで、家でもほとんど動きません。
本来ならばお仕事を変える転職などを慌てる方も多いと言われる心の病。
オカシャンは転職するどころか、まだ会社を辞めることが出来ていません。
辞める覚悟は出来ていますが、どうやら辞めるからにはやっておかなければならないことがあるようです。
オカシャンは今の仕事についてから長い年月が経っていますが、ここまで劣悪な環境は初めてだったようで、
その劣悪な環境が当たり前になってしまったまま誠心誠意大事に育てた若い同僚にオカシャンと同じ思いをさせないように策を練っていました。
オカシャンの身の回りにはあらゆる専門家が揃っています。
アドバイスを受けることには遠慮なく甘えるタイプです。
一人の頭脳で考えるよりも沢山の人の頭脳を借りたほうが建設的であると思っている節があります。
なので、限界がくると僕やすーちゃんを吸いに来ます。
まったく困った甘えん坊です。
オカシャンと会社の争いが落ち着いたのは、年が明けてから4か月もかかりました。
第一条件が満たされるかは、この先の未来にならなければ分かりませんが、これでオカシャンは心をいっぱい傷つけられたままではありながら、
オカシャンの要望をすべて伝えて何とか会社と縁を切ることが出来ました。
迂闊に「死ぬまで働け」とか言えちゃう職場はオカシャンがやろうと思えばいくらでも潰すこともできたと思います。
でも、オカシャンはその言葉を聞く前に、あの日の夜の会話で、同僚含む職場の方々の職場環境を改善する案を経営者である上司に提案する予定だったので、
辞める条件としてそれらを改善することが、最後にできる唯一の貢献であると潰さずに約束を法的に定めて落ち着いたようです。
さあて、やっと動き出すのか!?オカシャンは・・・。
ある程度燃え尽き症候群がまたやってきましたが、オカシャンは次のお仕事ではなく違うことに手を付け始めました。
人生には時としてバカンスが必要である。
オカシャンの中の人間万事塞翁が馬という座右の銘でもあります。
オカシャンは戦いのあと働き続けた長い時間にほぼ休暇も貰えず、友が旅立とうが親戚が旅立とうが
「そんなことで仕事を休まれたら困る」などと言われ、旅立った友や、今も元気ではあるものの会いに行けていない友に片っ端から会いに行ける時が来るまでゆっくりと休むことにしたのでした。
ところがどうやらそうも行かず、一円にもならない事を始めることとなったのは、会社との縁が切れた翌月からでした。
無理やり押し付けられる事を避けるため、立候補制の方の事を休んでいる間にやってしまおうという作戦を、戦いのさなか決めていたようなのです。
全く、オカシャンは休暇をちゃんと休むことができないタイプなんだから・・・。
僕のごはんの質は下がらないように手も打ってあり、隙はないオカシャン。
オトシャンは通常通りお仕事でテレワークをしています。
時々外出しますがさほど長い時間いないことはありません。
僕はすっかり今の生活に慣れてしまいました。
オカシャンは僕が起こさなければ一人で起きることもできません。
本当に困ったオカシャンです。でも、二人ともいるのは僕にとって今は寂しくなくてとてもいい環境なのかもしれませんね。
変化の多いオトシャンとオカシャンと、変化が嫌いな僕とすーちゃん
そんな違いがあれども、家族は一緒に暮らしていくのですね。
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