第46話 僕とオカシャンとトイレ
オカシャンが帰って来ましたが、様子がおかしいのです。
僕がずっと隣で眠ってあげているのに、動こうとする時はトイレにこもってしまうのです。
なので僕はもちろんトイレにもついて行きます。
実は僕がオカシャンのトイレについて行くようになったのは、オトシャンが居なくなった頃からなのです。
それより前、僕がちょっとおしりに飾りをつけただけで、オカシャンは僕を抱っこして個室に閉じ込めながらひたすら飾りを取ったり、ファーの手入れをしたりするので僕はとっても怒っていたのですが、
いざオカシャンしか居なくなるとオカシャンがトイレに入るだけで、トイレ以外の場所が一気に寂しい個室になってしまうことに気がついたのです。
僕は人が居れば人の傍に居たいのです。
大好きなオトシャンが居なかった間、そうやって始まった僕とオカシャンのふたりきりの時間。
オカシャンは最初の頃は「あら?じゃこさんついてくるの?」という反応だったのですが、
朝は毎回僕が付いてくることを知ったオカシャンは、これはチャンス!と一個のブラシをトイレに常備して、僕のファーの手入れをするようになってしまいました。
あれ?なんだか僕の寂しがりんぼが利用されている?
でも、オカシャンは手入れをしながら新しい僕の歌を歌い始めました。
「じゃこさんとーかーさんのーふたりきりのじかんー」
するとそれを聞きつけた闇の女王すーちゃんは闇から出でてトイレの前で大騒ぎ
「あたしだけ、のけものにするんじゃないわよ!」
それに気がついたオカシャンはトイレのドアをほんの少し開けると、ぬるぬるっとすーちゃんが参入してきました。
では、僕は退散しましょうと扉を押しましたが、いつもなら押せば開く扉。
間違いなく押せば開くんです!扉というものはだいたいそうです。
ところがオカシャンによってしっかりと閉められているため、僕が叩いても扉は開きません。
すると、何とこんな近くに怖い怖いすーちゃんがブチギレでいるじゃないですか。
とりあえずすーちゃんはオカシャンの膝の上に乗りたそうにしていて、おしりがこっちを向いています。
これはチャンス!おしりの確認です。
くんくん、ふむふむ、あれ?めっちゃ怒ってますね。
ふと、おしりから恐る恐る離れすーちゃんの顔を見ると・・・やっぱり睨みつけていますね。
僕は悪くないんです。オカシャンが扉を開けられなくするから仕方なく・・・。
「そんな言い訳が通用するわけないでしょ!」と怒られていたら
オカシャンの歌の歌詞が変わりました。
「じゃこさんとーすーちゃんとーかーさんのーなかよしのじかんー」
また出ました・・・自分も仲良くしてくださいね。
そういいながらも、扉を半開きにしてくれたので、僕はドン!と押してその場から逃げます。
オトシャンみたいだって?僕はオトシャン子ですからね。でも、僕の方がいい子ですよ。(サンタクロースさんへのアピールは忘れません)
そんな習慣が出来て、僕はオカシャンのトイレにはくっついて行くようになったのですが、
あれらの退治を終えたオカシャンはとにかく寝室とトイレの往復ばかりです。
いや、しろとは言いませんが・・・結構いつでも抱っこできるようなポジションで待ってるんですよ僕。
捕まったら、棒読みで「あーあ、うっかり捕まってしまったーいや、ほんとうっかりうっかり」と言いながらちょっとくらい抱っこさせてあげて、
オカシャンが居ない間に貰えなかったあの美味しいおやつを・・・という作戦を実行中なのですが、
オカシャンはすーちゃんが自主的に抱っこされに行ってもオトシャンに通報してすーちゃんを降ろしてしまうのです。
もしや、あれらはオカシャンの代わりにオカシャンの抱っこ欲を連れて行ったのか!?
それでも、諦めません僕は。
ヨタヨタといつもとは違う歩き方をするオカシャンについて回り、一緒に寝室とトイレの往復をします。
すーちゃんが来たら逃げます!
オトシャンに見られたら、忖度してトイレには入りません。
いいでしょ!!僕はオトシャン子なんだから!
今のオカシャンはしゃがむこともあまりしないので、ベッドの上で僕を撫でることくらいが今できるスキンシップのようです。
トイレについて行っても僕のファーの手入れもできないようです。
僕の・・・おやつ・・・。
あと残るおやつの条件は、毎月の病院ですが・・・オカシャンが居なくなる直前に行っているので当分先でしょう。
僕があの病院の日を待ち望む日が来るなんて・・・。
これではパブロフ・・・いやいや、そうだ!玄関の関所任務がありますね!
でも、オトシャンもあまり出かけませんね・・・。
そして、抱っこのおやつと、病院のおやつと、玄関のおやつはすべて違うものなので、僕が今欲しいのは抱っこのおやつなのです。
オカシャンが居なくなって色々考えて一番僕にとって損だなって思ったのは、抱っこは嫌でも、抱っこのおやつが貰えなくなったことだったのです。
オトシャンが僕を捕まえる事があるとするのなら、その日は病院なのです。
抱っこのおやつは何故もらえないのでしょう?
オトシャンがいなくなってから、オカシャンはオトシャンの部屋の物をリビングに移動したりしてパソコン作業をそこでやっていたりしました。
今、オトシャンはそのリビングのパソコンスペースでお仕事をしています。
なので、オトシャンになんとかそのおやつだけ貰えないかトントン叩いて請求したりするのですが貰えません。
すーちゃんは本当にずるい!あれだけオカシャンオカシャン言っていながら、オカシャンの居ない間はオトシャンと寝室でイチャイチャしていたし、
今だってそう、僕は出来ないけど、すーちゃんは僕がオトシャンに構ってもらおうとするとどこからともなく現れて、僕にぶつかりながらオトシャンの膝の上に乗っちゃったりして。
僕は抱っこがトラウマでパブロフなんだ!
あ、うっかり認めてしまいましたが、僕は頭がいいのでワンパターンなオカシャンのおやつの条件を知っているというだけのことです。
この際もう、オトシャンでもいいからあのおやつを・・・と思っていたら、オカシャンに気持ちが通じたようで、抱っこなしで特別にとろとろの舌の止まらないやつを貰うことに成功しました。
なーぜーかーすーちゃんまで。
そういえば、僕が抱っこを頑張っている時、すーちゃんはこたつとかいろんなところに隠れているのに、抱っこのおやつが出てくるとなぜかどこにいても飛んでくるすーちゃんとはんぶんこにされています。
すーちゃんは我慢してないでしょ・・・。
オカシャン曰く、「仲良しさんは、おやつをはんぶんこするんですよ」とのこと。
じゃあ、一袋ください。僕は散々罵られて可哀そうです。
でも、確か前回やや、仲良しであることを認めてしまったような気もするので仕方ないですねーはんぶんこしましょう。
オカシャンは僕担当、オトシャンはすーちゃん担当でとろとろの舌の止まらないやつを完食したら、僕もすーちゃんもひとりきりの場所で眠ります。
え?人が居れば人の傍に居たいんじゃないかって?
それは僕の気分でいるものなのです。
でも、オカシャンのトイレには何のおやつもないけどなぜかついて行ってしまうのですね。
なんでだろう?
僕にとってなんか居心地のいい場所なんですよね。オカシャンの居るトイレって。
オトシャンのトイレにはついて行きません。
あまり興味がありません。
僕はストーカーじゃありませんよ。
僕がオトシャンについて行くのはオトシャンのお風呂上りに立ち続ける場所と玄関ですね。
オトシャンとふたりきりの場所はそういえばあんまりありませんね。
オトシャン子なんですけどね。
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