第47話 出会った頃のように
僕がオトシャンとオカシャンに出会った頃、
オカシャンは眠っている時間がとても短かったことを思い出しました。
夜はオトシャンとお酒を飲みながら朝になりそうな時間まで起きていて、朝寝起きが悪くて僕が吐き真似をして起こすようになったのはもう何年前でしょうか?
出会った頃の僕はオトシャンとオカシャンと成長の速度が同じだと思っていたので17歳くらいだと錯覚していました。
オトシャンとオカシャンの速度をすーちゃんに教えてもらうまで、一日を四日くらいに数えていましたね・・・お恥ずかしい。
出会った頃の僕はどうやら4歳くらいということになりました。
そして今僕は9歳・・・もう5年以上も一緒に居るんですね。
すーちゃんに出会った頃からももうすぐ5年の月日が経ちます。
あれから色んな変化が起きました。
何度も言いますが、僕は変化が嫌いです。
それでも、オトシャンとオカシャンに出会う前の変化とこの5年の変化なら、この5年の変化の方が・・・いいわけがない!
僕はオトシャン子ですがオトシャンもオカシャンも僕のお父さんですよーお母さんですよーと言ったんだから、
僕の事を大切に思うなら、もっともっと笑顔で傍にいてください。
もちろん、捨てられたくありません。
もちろん、狭い個室に閉じ込められたまま生きていたいわけがありません。
もちろん、もうたらい回しもされたくありません。
出会った頃のように僕の事をもっと可愛いと言って、もっとウザったいくらいの重い愛情で二人とも包んでください。
すーちゃんの分の愛情を返してなんて、せこいことは言いません。
ただ、僕の分の愛情が減ってきていませんか?
オトシャンもオカシャンも喧嘩すれば家出しちゃうし、片方が家に居れば一安心なわけじゃありません。
僕だっていっぱい考えました。
すーちゃんが死んじゃったらどう感じるのか。
オカシャンが死んじゃったらどんな気持ちになるのか。
答えは、僕が幸せだと感じていたこの家族に大きな大きなそして辛い変化が訪れるということだと分かりました。
僕だってすーちゃんと喧嘩します。
でも、すーちゃんと喧嘩したって僕は出て行きません。(個室からは逃げます)
僕はオトシャンとオカシャンとそしてすーちゃんの家族なんですから。
だから、もうこれ以上変化しないで・・・。
僕は出会った頃のオトシャンとオカシャンにまた会いたいです。
今のオカシャンは出会った頃とは真逆で一日のほとんどを眠って過ごしています。
オトシャンとお酒を飲むこともありません。
僕の事も捕まえようとしません。
すーちゃんのスキンシップも断るほどに、僕への愛情だけではなく家族みんなへの愛情が減っていませんか?
今のオトシャンは出会った頃とは真逆で僕を全然スマホで写真に撮りません。
すーちゃんがエンジン音のような警戒音を出していた頃よりも、今の方がすーちゃんとベッタリじゃないですか?(嫉妬)
オカシャンへの態度も出会った頃は二人で同じ部屋で眠っていたので、僕が一緒に眠るにはベッドの枠に乗って寝るしかありませんでした。
そのくらい毎日一緒に眠っていたのに、もう何年も別々で眠っています。
オカシャンのいびきがうるさいという理由がオトシャンにはあるみたいですけど、オカシャンの方は、すーちゃんが来たばかりの頃僕と距離を置くために別々に寝始めてから僕やすーちゃんと一緒に眠る方が安心するからという・・・甘えん坊な理由です。
ん?二人が別々に寝ているのは僕と一緒に寝たいからか・・・。
では、それはいったん良しとしましょう。
では、起きている時の態度です。
オカシャンはおうちの中にいるのにオトシャンを呼ぶときはスマホでリビングから声が出るものを使って呼び出して、自分ではオトシャンのところに行かなくなりました。
出会った頃のオカシャンは僕に対してもオトシャンに対しても重い愛情で常に賑やかで大笑いしたりしていました。
今は大笑いもしてくれません。
僕がどんなにほっぺたを叩いても瞼を叩いても、目覚めますがトイレ以外に起き上がって来ません。
僕の紐すら振ってくれません。
出会った頃のオトシャンは僕があらゆる紐を持っていけば気づいて振って遊んでくれましたし、
オカシャンともこれまた大笑いしていました。
二人で「お腹痛い!お腹痛い!」というほどに。
それが今ではパソコンに向かって話すばかりで、僕が呼んでもオカシャンが呼んでも反応がないうえに、出かける回数が減っています。
オカシャンがヨタヨタし始めてからは更に出かける回数が激減です。
それでも、約一年前の年末出て行ってしまった時よりはおうちにいてくれるので僕は嬉しいのですが。
その前の険悪な状態よりは、少しだけマシにも見えますが・・・これ期間限定なんですよね?
僕もすーちゃんにちゃんと愛情表現しているかと言われれば、一応しているつもりですよ・・・。
すーちゃんの僕への愛情はなさそうなので結局受け入れてもらえなくて、腹立っちゃって叩いちゃうんですけどね。
そんな僕が言うのもなんですが、オトシャンとオカシャンはもっと出会った頃のようにいっぱいお話して、いっぱい傍に居る時間を持てばいいと思うんです。
さぁ!オカシャン!寝てばかりいないで起き上がって元気にオトシャンの元に行って僕に紐を振って、抱っこのおやつをくれるのです!
「ねぇ・・・あんたバカなの?」
急にまた罵られましたね・・・可哀そうな僕。
すーちゃんはオトシャンとオカシャンのこの変化に苦言を呈したくはならないのかな?
「オカシャンはあたしのことが好きじゃないからあたしがお腹に乗った時引きずり降ろされたわけじゃないわよ」
僕は人の上に乗ることはあまりないので引きずり降ろされると言えば、
病院の台の上で狭い箱の中から引きずり出されるくらいしか経験がありません。
どんなに抵抗しても引きはがされる安全地帯という点では分からなくもありません。
「オカシャンが今大笑いしないのも、寝てばかりいるのも、今はお腹が痛いからできないだけよ」
なんと!オカシャンはお腹がいたいのですか!いつの間にか大笑いでもしたのでしょうか?
でもお腹が痛いだけなら僕も経験があります。
すーちゃんが便秘だった時から貰うようになったごはんを食べすぎると僕はお腹が痛くなってゆるゆるになってしまいます。
「まぁ、オカシャンはあんたみたいにゆるゆるじゃなくて、あたしと同じ便秘で大変みたいだからトイレと寝室を行ったり来たりしているみたいなのよね」
オカシャンはいざという時の弾丸を溜め込んでいるということですね。
「もう少しあたしも諦めずにオカシャンの上に乗って早く治るように治療してあげるから、あんたはブーブー文句ばっかり言ってるんじゃないわよ」
まるで僕が心が狭い甘えん坊みたいに言われていますね・・・。
それにしても、お腹が痛いオカシャンのお腹に何度も乗っては引きずり降ろされるのに、懲りずに乗るすーちゃんは・・・それでいいの?
「いいに決まってるでしょ!オカシャンはあたしの事が好きなんだからあたしが傍に居たいって思えばそれでいいのよ・・・家族なんだから」
なんていうか僕にはできない強引な愛情表現・・・どことなくオカシャンに似ていますね。
!!!ということは、オカシャンがお腹が痛くなくなればいい!
それなら便秘によく効く僕のごはんを少し分けてあげます!
オカシャンは僕のごはんを大抵味見していますが日常的に盗み食いはしません。
さぁさぁ!どうぞオカシャン食べてください!とオカシャンにひとつあげました。
よく噛んで一口食べたオカシャンは「なんかすごく口の中の水分持っていかれる」とそうそう、そのごはんは噛んじゃダメですよ。
ゴックンでするんですよ。
「あんたはそれやりすぎて吐きまくってるじゃないの・・・ごはんはちゃんと噛んでよく水を飲めばいいのよ・・・まぁあたしも吐くけどね」
とすーちゃんは今日は饒舌です。
もしかしてこれが家族の仲良しの秘訣「会話」なのでしょうか?
それにしても、僕はいつも罵られることから始まるような気がしますが気のせいでしょうか?
そして、満足げなすーちゃんはまた闇に消えていきましたとさ。
めでたしめでたし・・・?じゃない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます