第21話 【閑話】 縁 えにし∞
ああ、最初の大きさ…そして二番目の手間のかかる前歯。
なんてことだ…そして最初との違いは俺しか居ないってこと。
二番目との違いはやたらと無駄に走り回りたくなること。
1/20で生き残りド田舎で猫に喰われた俺は、耳と歯の長い姿になってラーメンを袋ごと食って死んだ。
そろそろ人生ってやつが来るんだと思ってたけど?
まだですかぁ…そうですかぁ…それにしても初回と二回目のダメなところミックスってどうしろってんだ。
スペック低くなりすぎじゃないか?
それでどうせあいつらみたいにガキにおもちゃにされてすぐ握りつぶされるんだろう…はいはい未来もう見えた~。
そんなこと言ってたら、4人家族の家に買われていった俺。
よく考えると俺よく売れるな。
まぁ、最初は二束三文だったけど。1/20だったけどさ。
最近だと一緒に居た奴らの中では売れなくてそのまま殺されちゃったり皮をひん剥かれたりする奴もいるらしいからな買われただけ俺は運がいいのだろう。
さて、行くか!
ああ、今度の入れ物はだいぶ小さいんだな。でも二つに分かれてる。
1Kってとこだな。キッチンはないけど食うところと遊ぶところが一部屋
寝る場所が一部屋。待遇は悪くないな。
今回はなんか飯が偏ってる上にガキたちは俺の飯を奪いやがる。
まぁ、いくらでも補充されるから多少は分けてやるよ。
旨いよなこの飯。
俺は気前いいからな。
俺からは見えないけどここには他にも人間じゃないやつがいるらしい。
上のガキがお祭りでおまけで貰った金魚が長生きしてちょっとした鯉くらいに育っているらしい。
なるほど、一応見えないけど仲間がいるわけだ。
まぁ、ほんの少し心強いかな。
ガキたちは俺に夢中だ…ああ、そうだ今回は俺の名前は「ちゅーた」になったらしい。
まぁ想像つくだろう。
下のガキはまだ学校に行く手前くらいらしいが幼稚園とやらに行っているらしい。
昼間は静かだ、人間は誰も居ない、金魚は遠いし多分何か言っててもわからねぇ。
前回の失敗も踏まえて、人間の居ない時間に俺は勝手な行動はしないことにした。
何か無性に走って飯食って寝てクソをしてりゃいいんだ。
時々部屋から出されて遊ばれるが小さい時のあいつよりも二人とも大きくなっているから触り方は前回同様に壊れやすいものを持つようにそっと持ってくれるがひたすら追いかけてくる。
飯で釣ってきたりもする。仕方ないから相手をしてやる…飯は食いたいし。
上のガキは何かと母親に怒られることが多い。
とにかく自分の飯を食わないで捨てるらしい。
そのせいかだいぶ歳の離れた下のガキと体重はあんまり変わらないらしい。
ガリガリじゃねぇか。
俺様を見ろ!このプックリと愛らしい姿を!お前もちゃんと食え。
俺の飯奪ってる場合じゃねぇ。
まぁ、お前も俺と前歯似てんな。こっち側か?
ガキは最初は食べたふりしてゴミ箱に飯を捨ててたのがバレて母親に散々怒られて考えたのが、窓から捨てる…そして下に住む人からクレームが来ちゃって更に怒られるという…怒られてばっかりいるけど、
こいつなんで食わないんだ?俺の飯は少し横取りするくせに、まさかそれで腹いっぱいなんてことはないよな。
下のガキはしっかり飯を食った上で俺の飯も横取りする。
まぁ、食って大きく育て。
一日に一回はガキたちと遊ぶ時間がある。
それにしても、あんなに騒がしく「きゃわいい」を連呼していたあいつ
今回は「ちゅーたいい子いい子」と撫で繰り回される。
痛くない。何なら気持ちいくらいだ将来は按摩師か?ってくらい良い力加減に俺はトロトロだ。
その頃流行っていたアニメの動物の係をさせられたりもした。
「大丈夫、怖くない・・・」怖いぞ。
ガキたちは仲がいいがたまに喧嘩もしているが基本的には
下のガキの心の成長の途中に、上のガキが反応しているようだが、
喧嘩がこいつが飯を食わない理由じゃないようだ…。
ある日下のガキが寝ている間に上のガキが母親に怒られている時に言っていた。
「あんたなんか産まなきゃよかった」「あんたの父親は最低な人間だったわ」
ああ、これか。原因。そういえばこいつケガも結構してんじゃねぇか。
まだ10年も生きてない人間がそんなこと言われちゃったら飯なんか食えないよな。
しかも、このセリフ初めてじゃないみたいだな。
一体何年そんな目に遭ってたんだ。
俺がうっかりラーメン袋ごと食わなきゃ支えられたのか…?
下のガキは大丈夫だろうか?
下のガキはどうやら俺を欲しがった割には飽きっぽいようだ。
毎日遊ぶのは上のガキだけのことも増えてきた。
まぁ、育ち盛りなんだから興味が他に移ろうのは仕方ないことだ。
理解のある俺だから下のガキはそれでいいが。
上のガキはどうしたもんかな。
とりあえず、かわいい俺を愛でることで少し癒されろ。
父親が帰ってきている時は上のガキに危害が加えられることはない。
かといって今のところ父親は上のガキの味方でもないようだ。
下のガキを溺愛している。上のガキとももちろん遊んでいる姿をみるが差が歴然としてるな。
上のガキこれ以上痩せたら死ぬんじゃないか?
そう思っていたら、上のガキが階段から転げ落ちた。
事故と言うよりもやってみたかったからやったらしい。
それ以外にもドアの蝶番側に指を入れて挟まれてみたり、指の間につまようじを刺してみたり、とにかく痛々しいことを次々とやり始めた。
たぶんこいつ、ガキながら生に対する執着をなくしちまってるみたいだな。
学校でもどうやら髪の毛の色が人と違うだけで虐められているみたいだ。
俺と二人きりの時にだけ話す。
親にも妹にも誰にも心配かけないように笑顔の仮面を被る。
俺との時間だけ仮面は外される。
こいつは愛情が不足している。
愛する力は不器用ながらも重いほどあるくせに、今はなぜ貰うのは難しいんだ?
俺はこいつをせめて見守る覚悟を決めた。
そして季節は冬を迎えた。
この体はなんと平均寿命2年らしい。
そして、覚悟を決めたはずの俺は越冬出来なかった。
次こそはこいつを守れる形にしてくれ!神様ってやつでも仏様ってやつでもいいから頼む!
爺さんたちから溺愛されていた時のこいつの「きゃわいい」を聞くだけじゃなく支えられる存在に作り替えてくれ。
いつものようにガキが俺の墓を建てている間に俺はこれが最期だということを知った。
俺はもう直接かわいいと言ってもらえなくなる。
そう、今やっと思い出した。俺はこいつの母親の、ばあちゃんだったんだ。
『本当はわたくしの可愛い孫であるこの母親を見守るために形を変えて何度も生まれ変わりつづけていたのです。
曾孫のことは最近人生を卒業したあの人に頼みましょう。
この曾孫の不器用な重いくらいの愛情は覚悟しなさいねと伝えておきましょう。
曾孫はもう一人いるわね。
ちょっとドライなこの小さな曾孫のことは、ああ、丁度良かった金魚さんお願いできますかしら?
息子と孫の子守りはもう十分ね。仲の良くない親子なのはわたくしと変わらないわね。
戦後でちゃんと愛情を注ぐ余裕がなかったせいかしら、どこから拗れてしまったのかわからないけど、素直じゃない子供にみんな育ってしまったわね。
生きて居る時にもっと愛情をあげられなくてごめんなさいね。
人と人の縁は繋がっている期間が決まっていて永遠の縁なんてないからね。
人じゃない間も縁がしっかり繋がっていたから何度でも会うことが出来たのよ。
そしてまた、愛する子たちと家族になることが出来てわたくしは幸せだったわ。
少し心配は残っているけど、バトンタッチの時が来たのなら仕方ない。
孫を溺愛してヒヨコを沢山買い与えちゃう息子もちょっと愛情に飢えて子供に愛情を与えるのが下手な孫も会ったことのなかった二人の曾孫も
わたくしは心から愛していますよ。幸せになってくださいね。
さて、わたくしはこれからどうなるのでしょう?仏教だと輪廻転生ですよね?
曾孫を守れる形にしてほしい!と願ったとたん目の前に現れた者たちに今までの忘れていた全ての記憶を受け取り、導かれてわたくしは進んでいくのです。』
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