第36話 遂に我が家に到来した魔の手
年が明けてひと月が終わった頃、オカシャンが自らの身体の異変に朝から気が付いたようです。
節々の痛み、喉の痛み、何よりも体温計の数値が42.3℃。
オカシャンは慌てて人間の病院に電話をし始めました。
運よく当日の予約が取れたオカシャンはあっさりと強制自宅療養が始まったのです。
最近は外に出てないからあんまり関係なさそうですけどね。
オカシャンは高熱がでると動き回るタイプで困ります。
帰ってくる前にオトシャンに同じ病院に検査に行かせて部屋中を大掃除し始めたのです。
いい匂いのするあの液体であらゆるところを消毒しています。
加湿器もオトシャンが嫌がるからつけない日が多かったけどいい匂いの液体を入れてむんむんに炊き始めました。
オトシャンは陰性と言われて帰って来ましたが一緒に強制自宅謹慎です。
ならば!とより一層の隔離をとトイレ周りやお風呂周りやらカーテンあらゆるものを掃除し始めたオカシャンでしたが、
翌日オトシャンの電話が鳴り「PCR検査は陽性でした」と二人して自宅療養が始まりました。
オカシャンは身体は健康の塊だけど、オトシャンには10代の時からの持病があり、それはずっと治らないものなのです。
今回到来したのは世界を脅かしていた例のパンデミックの魔の手だった
のです!
二人とも出来たばかりの注射を二回受けていました。僕は注射が嫌いです。
オカシャンは動き回ったせいか疲れ果てていますが、今回の魔の手の一番の心配事は「肺炎」らしくオカシャンは昔、海外で買った高性能の聴診器で小まめに肺の音を聴いています。
更に翌日肺の音を聴いたオカシャンは「ゴロゴロ音がする・・・」と言ってオトシャンは訳も分からず連れていかれました。
オカシャンの日頃からの趣味が報われた瞬間でした。
自分の身体(身近な身体)でいつでも実験それがオカシャンの趣味です。
大きな病院先で検査を受けたオトシャンは見事に肺炎初期で入院することになりました。
電話がオカシャンにかかってきて、「奥さんが聴診器で診断したと伺いましたが・・・」と言われて
「すみません・・・パラメディカルが診断してはいけないのは重々承知ですが急を要したので。」と低姿勢な様子です。
オカシャンにとっては仕事をしていなくても、パラメディカルであることにかわりはないのです。
電話先の先生は責めているわけではありませんがちょっと人見知りな先生みたいでした。
そんな中、オトシャンはというと、最新の点滴で治療されながら持ち込んだゲームなどを快適な個室で楽しんでいたそうですよ。
オカシャンはというと、オトシャンの陽性が判明するまでの間にリビングに最近取り付けたあの、ぞうを映し出す照明器具を移動してもらっていたので観たいものを好きなだけ観ながらも、
ネット注文で「置き配」の便利さに感動していました。
オカシャンの平熱は37.2℃多少動いても37,6℃程度そこから5℃近く上がるなんてもう酔っぱらっているようなものです。
僕たちのごはんがなくならないようにネット注文お願いします。
国や自治体は僕たちのごはんまではくれませんからね。
自然にしていて熱を下げる事が条件だと言われて、オカシャンは氷枕などで対策を練りましたがなかなか思うように下がりません。
オトシャンはというと個室生活中に誕生日を迎え、個室生活が終わると、
「同室の人のいびきがうるさい、シャワーすら浴びられないのが嫌だ」という理由で退院したがったそうです。
オカシャンのいびきも実はとってもうるさいんですけどね。
お医者さんがあと一週間いてもいいし、帰ってもいいという言葉にすんなり帰ってくることを決めたのでした。
僕の事が恋しかったのでしょう。
オカシャンはそれを聞くなり・・・こっちはまだ発熱状態なんじゃ!帰ってくるなーとグッタリと言い放ちましたが時すでに遅しです。
それでも帰ってきたオトシャンはテレワークをしながらオカシャンの面倒を時々見て送られてきた支援物資の中のもので食事を用意していました。
オカシャンの外出許可の条件は37.5℃以下に下がること。
平熱が37.2℃のオカシャンにはかなりハードルの高い設定ではないですかね?
でもまぁ、38℃後半を夜になると出すのだから、オカシャンの身体の中はまだ戦っているのでしょう。
そうこうしているうちにもう今年が二か月終わってしまいました。
今度はなかなか発熱が治まらないオカシャンが運ばれていきました。
運ばれた先で発熱があってももう外出してよしと言われたオカシャン。
そして、その日はオカシャンのお誕生日の前日だったのです。
それぞれにお誕生日プレゼントですかね。
たまには一人になりたいオトシャンは病院で快適に過ごしたお誕生日でした。
ではオカシャンのお誕生日はというと、
お誕生日になった瞬間に二人で呑みにいきましたとさ。
本当にしょうがないですね。でも元気になったみたいでよかったよかった。
その後もオカシャンの熱は毎月の倒れる前あたりに38℃近く跳ね上がるのですが、
その原因が後々分かる事をオトシャンもオカシャンもまだ気づいていません。
とりあえず、オトシャンが今までで一番長く居なくなったので、僕は遺憾の意を玄関にして、すーちゃんは意思表示をソファにして、オカシャンにとっては大慌てな自宅療養だったようです・・・。
また部屋の模様替えも近いなこりゃ。
でも、僕はいつものように具合の悪いオカシャンに寄り添い眠っていましたよ。いい子ですから。(サンタクロースさんへのアピールは忘れません)
オカシャンはなんだかんだとこの魔の手を自分で自分の肺の音やら、脈やら診て実験に忙しなかったですけどね。
でも、魔の手のおかげでオカシャンは少し心の病から解放されたように見えてきました。
そして、あのぎゃんぎゃん五月蠅かった音たちがなくなり鳥たちが帰って来ました。
どうやら「ぞう」は我が家に到来せずにどこかに帰ったようでした。
匂いもだいぶなくなりやっとこさ落ち着きを見せたと思ったら、まさか、家族が離れ離れになる日が来るなんて・・・。
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