第37話 『畳みかける不安の数々』
あたしはオカシャン派であり、オトシャンを布団として認識しているわ。
ソファに限定したらね。
あたしにも、毛玉にもプライベートルームは必要なの。
でも、オトシャンにも個室があるわ。
でも使わないの。
だいたいがリビングに居るオトシャン。
最近はオトシャンの方がリビングで眠ることが増えたわね。
病み上がりとはいえ、オトシャンは仕事で出かければついでに飲んで帰ってきて家は寝に帰るようなもの・・・。
それに反して、治りきらない心の病を持ったオカシャンはオトシャンが居なければ呑みにも行けないみたいよ。
一人で誰もいないような暇な店に呑みに行くのが大好きだったオカシャン。
オカシャンが行く店はなぜか次々とお客さんが入ってきて満席になってしまうのでオカシャンは逃げ出すか、ただただ歌い続けるらしいわ。
なので好みの混んでないお店に行くことはなかなか難しいオカシャンなの。
早く一人で飲みに行けるようになるといいんだけど。
オトシャンとたまに呑みに行っては、帰ってくるけどオカシャンはすっかり、「お酒と飲んではいけません」という薬を乗り越えすぎて、酔うことも出来ず、ただ歌ってくるだけだったりするのよ。
お薬は用法容量をしっかり守りましょうね。
どんなにお酒を飲んでも冷静で居られてしまうオカシャンが病み上がりなのに、ある日、事件が発覚してしまったらしいの。
それを知ってもしばらく何も言わず、普通の生活を続けていたわ。
その頃オトシャンの中では「やべぇバレた早く消さなくちゃ!」というオカシャンがしばらくチャンスを与えているっていうのに真逆の対応をしたみたいなの。
無意味なの分かってるでしょうに。
というか、比較的最近オカシャンを激怒させて家出までされたのに、何をしでかしたのかしら・・・オトシャンは。
因みに前回の家出の原因はオトシャンがオカシャンの作ったカレーを捨てたというものらしいわ。
オカシャンの怒りは段階性なの。
大抵の事には笑って「そろそろしっかりしないと大変な事になりますよ」と前もって伝えているわ。
それを聞き流されたとわかったら、あとは溢れんばかりの怒りの器に表面張力限界の最後の一滴が、たとえどんな些細な出来事でも溜め込んだ怒りの証拠をみせて、オトシャンが苦手な論破術で攻めてくるのよ。
怖いタイプでしょ?
でも、オトシャンは目を瞑り黙すこと・・・数時間・・・質問内容を変えても同じ「聞きたくない、怒られたくない、この場をとりあえず収めたい」
それしか考えていないようね。
オカシャンの怒りはもう何年も前からみたいね。
オトシャンは何も変わらなかっただけじゃないわ。
オカシャンが嫌がることをずっと隠れてしていたみたいなの。
オカシャンは「独身気分なら出て行って!」とかなりご立腹よ。
ここに来てだいぶ経つけど、どうやらこの二人は番いだった事に今気が付いたわ。
そうなってくるとだいたいやらかした事は想像がつくわね。
オカシャンには夢があったの。
その夢を叶える協力を条件に番いになったらしい二人。
でも来年にはオカシャンが自分で決めたタイムリミットがやってくるわ。
そして、真実を知りたいオカシャンは
絶対に行くなといいつづけた場所に「行ってこい!」と言って強制的に眠りについたの。
この喧嘩で三日三晩ろくに寝ていない二人。
オカシャンはそれでも眠るには薬が必要なんて・・・。
オトシャンに眠るまで手を繋いでいてほしいと寝かしつけを頼んでオカシャンは眠りについたわ。
オカシャンが眠りにつくと、オトシャンは意気揚々と眠いはずなのに出かけて行ったの。
そして数時間後帰ってきてオカシャンの目覚めと共に大切なものを、
「行ってはいけない場所」に置いてきたことを思い出し焦っていたわ。
そして、オカシャンはその場所の近辺のごはんを食べたくてついていったわ。
オカシャンは元々大好きなその町でよくごはんを食べていたから懐かしさから穏やかに飲み食いしながら感想をオトシャンから聞いてみたらしいわ。
その感想を聞くなり「それでは君の目的は果たされていないよ。明日またちゃんと確かめてきてほしい」とオカシャンは言ったけど、
本当の大正解は「繋いだ手を放さずに行かなかった事」なのに、そんなことにも気づきもしないで自由を与えられたと大はしゃぎしたオトシャンは、
「二日続けて行っても結果は同じだ」などと言っていた割に
オカシャンを待たせて楽しんできて、
「とっても楽しかった!また行きたいと思った。」とオカシャンに言ってしまったわ。
「それが答えだね」と言われ
オトシャンのオトシャンとオカシャンに「息子さんをご実家に連れて帰ってください。もう無理です。」と伝えたみたいよ。
そういえば、以前毛玉が僕を囲む会の人って言ってた人が来て「そんな昔の事をいつまでもいっているお前が悪い!息子はこんなに反省しているじゃないか」とオカシャンを責めたのよ。
のちのち、「娘さんに対しても同じ状況で同じ言葉が吐けますか?」と問うオカシャンにその囲む会の人は
「紙に書いた言葉は消すことが出来ても口から出た言葉は相手の心から消すことが出来ないというのをTVで見ました。申し訳ありませんでした」と連絡が来たらしいけど、オカシャンはそれを見て
ずっと「お前はうちの娘だ」と受け入れてもらえたと思っていたオトシャンの家族もオカシャンが求める家族ではなかったのだと諦めてしまったの。
そうして数日が経った頃、実家に帰ったはずのオトシャンは仕事を口実にオカシャンに数日でいいから家に置いてほしいと願い出てきたわ。
でも、その仕事が終われどなぜか実家に帰らないオトシャン。
オトシャンとオカシャンには、この後、この事件発覚の半年も前から予約している大事な旅行が迫っているらしいの。
それをキャンセルするわけにはいかないオカシャンは、数日ならばと許可を出したけど、オトシャンは数日どころかすっかり日々変わらないまま居座っているわ。
あたしはどっちでもいいんだけど、毛玉がオトシャン子だからオトシャンが居なくなる度に不安定になっていくのは見ていてウザいわ。
オカシャンは「これを最期の思い出にするか、どうするか」と話をしていたけど相変わらず目を瞑り無言なままのオトシャンには何も伝わらない。
その姿の時は話を聞いていないらしいの。
どうなるのかしら・・・その旅行とやら。
ん?旅行?その間誰があたしたちのお世話をしてくれるっていうの?
もしかして、大変なのってあたしもなのかしら・・・!!!
「旅行は僕を囲む会の誰かが泊まりでお世話しにくるし、とろとろの舌の止まらないやつも貰えるんだよ。」
と食の権化はあまり旅行の心配はしていなかった。
どうなるの・・・この夫婦も・・・旅行も・・・。
不安だわ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます