第34話 見たことも聞いたこともない大きな姿と大きな声その名は・・・

オトシャンとオカシャンはお部屋の模様替えが好きです。


黒きレディすーちゃんが来たばかりの時もそうだけど何かと家具を増やしたり移動したりととにかく物を増やしては移動を繰り返します。


この新しいおうちに来て一年が経ち広々としたリビングはまた大きく様変わりすることになりました。


リビングだけではありません。


リビングも寝室になり、僕が今まで登って上からオカシャンを起こしたりオトシャンを起こしたりしていたベッドの枠に僕のお気に入りのラベンダー色のカーペットが敷かれどうやら僕専用の小上がりという遊び場になったようです。


それだけではありません・・・。


いつもなら外に遊びに来ていた鳥たちが全く来なくなり、窓越しの井戸端会議も出来なくなってしまいました。


そしてとにかく臭い!!!!!!!!!!!


オカシャンはベランダから持ってきたものを一斉に洗っては、あの立ち入ってはいけない恐ろしいお風呂という場所を、詰まらせたりして慌てふためいていました。


洗って乾かしたものは各所に山積みにされてしばらく経っていますね。


登るには僕には高すぎます。


僕は出来ないと分かっている冒険はしないタイプです。


え?僕が高いところから落ちた?誰ですかそんなことをバラしたのは・・・!


僕は聡いので、そそそっそそそそそんなことはしません。


きっと僕の評判を落とそうという策略でしょう。


そんなことで落ちる僕の評価ではありません。


ちょっと脱線しましたが、どうやら長い時間をかけて模様替えが行われているようなのです。


特に昼間はまぁ、ぎゃんぎゃんと五月蠅くて、臭くてたまりません。


臭さは夜も関係ありませんが、オトシャンとオカシャンもこの臭さには悩まされているようです。


まぁまぁ動き始めたオカシャンではありますが、相変わらず以前ほど外には出て行きません。


それでもたまに出かけて行くと、模様を変えて帰ってくることがあります。


僕に近い毛色になって帰ってきたりします。


イメチェンてやつでしょうか?僕の意思に反して暑い季節にまたしても、あの敵に今年もやられてしまったようにオカシャンも誰かに毛色を変えられたのでしょう。


毛色も変わり、家具の配置も変わり、無駄に山積みされたものが場所をとり、そして、小上がりと分断されたベッドのふわふわの方はリビングの端でオトシャンだったりオカシャンだったりが寝るようになりました。


僕たちが遺憾の意を示したソファはお供えをやめこたつの近くに移動され、そこでよくオトシャンが寝落ちしていることもあります。


僕は寒がりで暑がりというとてもデリケートなので、基本的に温度調整をするにはオカシャンと一緒に寝るのが一番丁度いいのです。


オトシャンは寝返り事故多発なので基本的に一緒に寝ませんが、こたつやソファで寝落ちしている時にはなぜか寝返りしないので、そっと近くで寝ていたりもします。


時折大きなベッドでオトシャンとオカシャンが僕の居場所もなく寝ていることもありますが、そういう時は僕はお気に入りの場所を寝床を見つけてあるのでそこでぬくぬくと眠ります。


それでも何日も大きなベッドに二人が居ると僕は一緒に寝るのがすーちゃんしか居なくなり、そしてそのすーちゃんと一緒に眠ろうとすれば喧嘩にしかならないので、だいたい数日でオカシャンがリビングにあるベッドのふかふかで寝ます。


今回の模様替えによってリビングには今まで僕のポカポカポジションだったまぶしいけど暖かいライトはなくなり他の部屋にもあるような白っぽい照明が配置されました。


ただそれはただの照明ではなかったようです。


どうやらテレビのような映像を白い壁に映しているようなのですが、


丁度そこに小上がりになったベッドの枠があるので僕は色々触ってみましたが壁は壁のままでした。


テレビよりも何倍も大きく、音も降り注ぐその照明はあるものを召喚しました。


僕はその声を聴くなりビックリして飛び上がりました!


この家の中には絶対入ってこないであろう「ぞう」がそこに居ました。


「ぱおーん」という大きな声に僕の中に眠っていた?野生の血が危険を察知しました。


あれは恐ろしい生き物だ。


因みに僕の憧れの王様「らいおん」も居ましたがその声は僕にはいつもの僕やすーちゃんの戯れと変わらず聞こえたので特にビックリするに値しませんでした。


「ぞう」あれには出くわさないようにしないと・・・。


そうか、鳥たちがベランダに遊びに来なくなったのも五月蠅くて臭いのももしかしてこの「ぞう」が襲ってきているからなのかもしれません。


「ぞう」こそがもしや本当の王様なのか・・・。


ほぼ毛も生えていないのにケガもしないのだろうか。


ビックリした僕を見てオトシャンとオカシャンはそれから「ぞう」を召喚することはなく、だいたいいつもオカシャンが見ているようなアニメやドラマなどが大画面で見られるようになったという使い方をされた照明器具でした。


すーちゃんは臭さが気にならないのか、こたつの中からとにかく出てきませんがたまに「うるさいわよ!毛玉!」と僕のせいにしてきたりします。


理不尽です。


そして、世の中の人たちが少しずつ動き出した頃、オトシャンとオカシャンはまた夜な夜な呑みに出かけて行くのでした。


まぁ、呑みに出かけられるようになっただけでも、オカシャンは少し元気になったのでしょう。


遠くまで行くことが出来ないので、近場で新しい場所を見つけ、オカシャンが行かなくてもオトシャンだけ行くなんてこともほぼ毎日のようにありました。


オカシャンはまだそこまで毎日元気ではないのでしょう。


基本的に家から一歩も出なかったりもします。


というよりほとんどが家から一歩も出ないのがだいぶ続いています。


そして、オトシャンとオカシャンの喧嘩も増えてきています。


困ったものですが僕もすーちゃんとの喧嘩はいつもの事なのでまぁいっか。


と思ったりしていますが、煌びやかな寒い季節サンタクロースさんは今年は僕に何をくれるのでしょうか?


すーちゃんとの生活ももう3年になりましたか。


オカシャンは度々子守歌に「じゃこさんすーちゃん仲良くしてくださーい」と言い続けていますが3年経てど、まぁこんなものです。


家族だから仲がいい訳もなく、でも嫌いなわけでもなく、こうして居るのが当たり前みたいになっているのが家族なのかもしれません。


家族で「ぞう」の侵略を食い止めなんとか生き残るんだ!


そう思いながら僕はサンタクロースさんから貰ったといういつものピンクの紐や美味しい生クリームを一口だけ。


あとは、とろとろの舌の止まらないやつのすっごく美味しいベロンベロンしてしまうやつで、


今年もなんか色々あったけど、美味しいものも食べたし、まぁいっかと嫌なことも忘れて新年を迎えるのでした。


五月蠅くて臭い「ぞう」との戦いはまだまだ終わってはいないようで、忙しない年越しになりましたが、山積みになっていたベランダから持ってきたものはオトシャンがベランダに戻したようです。


いつもの大掃除も、窓の掃除など協力したり分担したりも家族の役目だそう。各々が得意なことをやればいいだけです。


僕の担当はオカシャンの寝かしつけと添い寝、そして癒しを与える事ですね


すーちゃんはなんでしょう?僕の喧嘩仲間かな?


オトシャンやオカシャンには湯たんぽ代わりと言われているので温め係でしょうか。


確か昔、泣くのが担当というのも聞いたことがある僕も夜な夜な、ないているからそれも担当ですね。


僕は本当に多才だ。我ながら働き者だと思います。


そしてついに、我が家に到来してしまった火の粉に僕はもうどうしたらいいか分からなくなるとは、まだこの時は思いもせず「ぞう」の事だけ気にしていたのでした。

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