第39話 鬼は外!福は僕におやつをください!

オトシャンが居なくなって、オカシャンは毎日のように寝室で寝る前に大きな映像を見てはそのまま寝てしまったりしています。


朝になるとギャンギャンとうるさい目覚まし時計がなるようにもなりました。


僕がちゃんといつも瞼を叩いて起こしているというのに、僕に甘え始めたオカシャンは相当叩かないと起きなくて、仕方なく色んなアラームが鳴り響く朝が続いたある日。


オカシャンはお仕事場から出勤禁止と言われ病院に行き10日間のお休みを言い渡されました。


オカシャンは僕たちと、だいたいいつも同じ温かさです。


それでも、ちょっと何かあると僕らよりも少し体温が上がるようで、困ったことに体温の上がったオカシャンは酔っぱらっている時のように、ウザいのです。


そして、おとなしく寝ていてくれません。


仕方がないので、僕とすーちゃんとで交代でオカシャンの寝かしつけをすることにしましたが、なぜか交代したい時には来ない癖に、僕がそのまま寝ようとすると


「あんた邪魔よ!あたしがオカシャンの寝かしつけするんだからどっかいきなさいよ」とひどい事この上ない。


とりあえず、ごはんを食べたりしながらも、オトシャンの居ない今、人の傍で寝ていたい僕はすーちゃんがオカシャンの枕元でグッスリ眠ったのを確認して、


そーっとベッドに乗ってオカシャンの足元の近くで眠ることにしました。


お休みの数日間はオカシャンは外に出かけないので、関所の門番のおやつはなかなか食べられません。


「おい!出かけろ!」と玄関で文句を言っても


「オカシャンは出かけませんよー」としか返事が帰って来ません。


10日間の間に、オカシャンは精密検査を受ける事になりました。


そして、その結果はすぐに出ました。


オカシャンはなんと、


健康そのものだと医師が認める特異体質の体温が高い人と診断されました。


それからというもの、オカシャンは体温がいくら上がれど、その他の症状がなければ仕事をしていいという特例を貰ったのでした。


ゲン担ぎが大好きなオカシャンは特例を貰って、さっそく買い物に出かけました。


毎年何やってるんだかわからないけどやるやつです。


豆まきというものをやるのだけど、僕たちが食べられるものでもないし、そもそも僕は野菜は嫌いなので食べませんし、せっかくなら酒でも撒いてくれたらいいのに・・・。


毎年オトシャンがちょろっとやっていたけども、今年はそのオトシャンが居ません。


ここは、家長として僕が撒くか?砂のようにまき散らすことならできなくもないですよ。


僕は才能の塊ですからね。


おかしゃんは買い物から戻ると、夜を待ちました。


どうやらいつも豆まきは夜に行われるらしいですね。


夜には悪い鬼というものが来るのだといいます。


すっかり暗くなった頃、「ぴんぽーん」という音が鳴り玄関に誰かの足音が聞こえ始めました。


もしやこれが悪い鬼なのでしょうか?それにしてもこの足音は・・・。


玄関が開き、僕が見たのは!


オトシャンでした。


オトシャンに化けた悪い鬼なのでしょうか?


「ああ、じゃこさん」とオトシャンに化けた悪い鬼は話しかけてきます。


悪い鬼が化けていても、僕はオトシャンが好きだからついつい擦り寄ってしまいます。


オカシャンはオトシャンに化けた悪い鬼を見ると、四角い箱に入れた豆を渡しました。


オトシャンに化けた悪い鬼はその箱から玄関に向けて「おにはーそと!」


いや、お前鬼ちゃうんかい!


リビングに向けて「ふくはーうち!」各部屋やベランダまで撒いて、


大きな海苔巻きを食べて、帰って行きました。


どうやら、オトシャンは本物のオトシャンだったらしいです。


それにしても、オカシャンはこのためだけにオトシャンを呼んだのでしょうか?


オカシャン曰く、オトシャンは今年だけはどうしても豆を撒かなければいけない年だということです。


それからは時々オトシャンが来たり、二人とも一緒に外に出かけたりすることもありましたが、基本的にはオトシャンはオカシャンが寝付いたらいなくなりました。


それを何回か繰り返しているうちにオカシャンがそういうスタイルの生活は嫌だからもう、お互いにお互いを忘れてしまおう。


と提案したらしく、慌てたオトシャンはベロンベロンに酔っぱらったまま急ぎこのおうちにやってきました。


でも、話し合いにやってきたはずのオトシャンは話し合うことなく寝始めてしまい、


オカシャンはその姿に「何しに来たの?」と言うと


オトシャンは激怒して帰って行ってしまいました。


本当に僕にもおやつひとつくれないで、何しに来たのでしょう?オトシャンは。


オトシャンはしばらくまた来なくなったと思いきや、配達される荷物などの都合で来たり、


オカシャンが仕事で居ない間に家でテレワークの時には僕たちの面倒をみるようにと、オカシャンとすれ違いの時間で家に居たり居なかったりもするようになりました。


そして、健康そのもの!とお医者さんから太鼓判を押されたはずのオカシャンに死が近づき始めました。


僕たちは近くの誰かが死にそうな時には、よくわかるのです。


オカシャンは日々死にたがることはあれども、オカシャンにあれらが触れるとそう簡単には逃げられず、死んでしまうでしょう。


すーちゃんも警戒していていつもオカシャンの傍であれらから守ろうとしています。


僕は高いところに上り、じわりじわりとオカシャンの近くに迫りくるあれらを


「おい!こら!オカシャンに近づくんじゃない!」と文句を言って追い払おうとしています。


当のオカシャンは諦めたような顔で手のひらを見つめては、


「変革の時か・・・これはそう簡単には避けられなさそうだねぇ」とオカシャンにも見えているのか一歩ずつ近づいてくるあれらへの対策を考えていました。


オカシャンに、もしものことがあれば、僕らは誰からごはんを貰うんでしょうか?


翌日オカシャンは病院に行きました。僕たちのいつもの病院じゃありません。


人間の病院です。


オカシャンはこのまま放置すれば死にます。


そう言われて、オトシャンに連絡をして相談と最後となるお願いをしました。


オカシャンは日頃から自分がいつ死んだとしても周りが困らないようにとあらゆる策を練って生きています。


産まれた者はどんな生き物でも必ず死に向かって生きていくものですからね。


それでも、死にたがりなオカシャンがまだ死ねないと考えている理由は、僕たちの事でしょう。


僕たちのごはんやトイレいろんなものはオカシャンが手に入れてきて、いつでも飢えることなく安心して暮らしてきました。


オトシャンは以前、呆然として窓を開けっぱなしにしたことがあるから、オカシャンは少し心配なんだと思います。


あの日は特別な日でした。空を独り占めしたような気分を思い出します。


そしていつの間にか暑い季節になった頃。


もう諦めていますが嫌々、大きな敵の居る場所で毎度おなじみの戦いが繰り広げられまた、負けました。


そして、立て続けの健康診断!僕は毎回なのに、なぜすーちゃんは一度もあの敵に出くわさないのだ!理不尽だ!


オカシャンの最後のお願いによりオトシャンは一時的にこのおうちにいるようになりました。


オカシャンがあれらに負けないための策を練り、オトシャンにその間の僕たちのお世話をマスターさせるためのものでもありました。


オカシャンは今ものすごく心身を物理的にハードに削られる仕事をしています。


お仕事の人たちには事前に伝えてあるらしいのですが、オカシャンにとってもこれはかなり大きな賭けになりそうです。


新たに何かあってもいいようにと僕たちの事やそのほかのことを書き記しています。


そんなオカシャンがあるお薬でとっても前向きに・・・いや・・・変態度が上がっていくといった方が正しいようなそんな感じに変わってきました。


ただ、そのお薬はものすごく高価らしくオカシャンはビックリしていましたが、とても快適そうだったのと、


あれらも、少し近づく速度が遅くなってきたような気もします。


僕はオトシャン子です。でも、オカシャンも好きです。どちらも長生きしてもらいたいです。


あれらが来る玄関には僕の遺憾の意を供えてやりました。


それなのに、オトシャンもオカシャンも遺憾の意を片付けてしまうので、あれらにはなかなか伝わりません。


すると、またオトシャンとオカシャンにあの魔の手が襲い掛かってきたのです。


もしかして、この魔の手で?オカシャンが!?


僕は発熱するオカシャンの熱さまし担当で温め担当です。


今回はあれらの動きもちゃんと見ておかないといけません。


どうなる!?オカシャンはあれらに勝てるのでしょうか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る