第40話 またきた魔の手
オカシャンの大いなる賭けまであと一か月半。
あれらをオカシャンに触れさせないように僕は日々玄関に遺憾の意を表明しています。
そんな中、オトシャンの職場であの魔の手が流行り始めたと風の噂が入ってきました。
前回は、オカシャンが42℃を超える高熱を出してテンション高く大掃除を始め、オトシャンと自分自身の肺の音を聴いては、オトシャンを強制病院送りにした、あの魔の手。
オトシャンとオカシャンは前回、あの魔の手が襲い掛かってきたときは2回だけワクチン接種をして、丁度3回目の手紙が届いたところで感染が発覚したんでした。
オカシャンは幼馴染の研究者さんからワクチンの研究結果をこっそり仕入れていて、あの後、4回目まで二人とも接種して、5回目のお手紙が届いた所で約1年半ぶりにオカシャンが発熱しました。
僕たちのワクチンは一年に一回ですけどね。
今回オカシャンの発熱は大したことなく39℃止まり。
前回よりも3℃も低いですね。
もともとの平熱が37℃~ちょっと動くだけで38℃と高いオカシャンからしたら微熱ですね。
テンションはさして上がらないようです。
大掃除よりも、節々の痛さと咳が出始めてベッドから出てきません。
「オトシャンは隔離できない」のが分かっているオカシャンは自分が寝室から基本的に出て来ないシステムを採用しました。
オトシャンも念のため外出禁止となりました。
オカシャンはおうちの中でスマホを使ってオトシャンの体調の変化などを確認してはいました。
僕はどちらも行き来するからっていうのもあるようです。
僕が魔の手を体にくっつけて運び手にならないとは言い切れないのでしょう。
オトシャンは37℃程度で、咳はいつもしていますが、特に何もなく元気でいるのでテレワークでのみ仕事をすることになりました。
オカシャンは今、何百人と「あるもの」を介して接触する仕事なのでこれまた出勤停止命令が出ちゃったそうです。
オカシャンの仕事場では同時期にたくさんの仲間が発熱してしまっていたことを後で知るオカシャン。
お仕事相手から「あるもの」を介して貰ってしまうこともあるし、仲間がゴホゴホ咳をしながら我慢して出勤してきて貰ってしまうこともあるみたいです。
卵が先かニワトリが先かもうどこから来たのかなんてわからなくなったこのご時世、関係なくオカシャンは我慢してまで仕事にはいきません。
あの魔の手がパンデミック宣言を出される前、この国では風邪でも仕事に行くのは当たり前とされていました。
しかし、世の中は発熱だけでも出勤停止となり、働き方改革とまで言われる時代の変化が起きたのです。
それでも、未だに休まない美学を推奨しているところは少なくありませんが、
オカシャンが今まで、直接なり間接的になりお仕事してきたお相手はご高齢のそれなりに持病を抱えている方々や、お子さんまで幅広く、
今は職場の仲間にもご高齢の方々が沢山。
みんな優しくオカシャンの心の支えとなっているご高齢の仲間に移したくないのかもしれません。
オカシャン的にはお医者さんの「健康そのもの診断」はあるものの、微熱の39℃以外の「その他の症状」がある限り出勤停止命令が出続けてしまっても、僕と一緒に寝るのが大好きなので大丈夫そうです。
ここ数年魔の手は各地で大暴れしているようですが、身近なところでも、
オカシャンが今一番信頼しているオカシャンと大して年齢が変わらない先輩が魔の手によって危うく死んでしまうところだったのです。
奇跡的に復活を果たしたけども、先輩はまだ無理しだしそうで、
オカシャンは絶対にその先輩にだけは移したくないと心に決めていたのでした。
39℃の発熱から5日経って、検査を受けたオカシャン。
結果は「コロナ陽性でした。規定に沿って10日間の出勤停止と発熱の有無次第で出勤停止延長になります。」
オカシャンは実は、その連絡が来るまで今回は、ただの風邪かインフルエンザだと思っていたのです。
前回の魔の手はものすごく辛く大変な時間が長くつづいたので、今回は違うと思い込んでいました。
そのくらい前回と比べてオカシャン的には辛くなかったのでしょう。
慌ててオトシャンの健康状態を確認すると、オトシャンもケロっとしていました。
前回、肺炎を起こして入院して、快適な個室から大部屋に移動になってすぐに
「隣の人のいびきがうるさい、シャワーが浴びられないから帰りたい」などと言って半ば無理やり退院してきたオトシャンがなんと!
抗体が出来ているようです!
自分の身体だけに専念できる状態に安堵したオカシャンは、
前回は止められていた鍼を自分で刺して強制解熱をしていました。
僕はあんなもの刺されたくありません。
前回は外に出るためには37.5℃未満を1週間キープというミッションがありましたが、オカシャンは月をまたぐも発熱は続き、なかなか自由の身になれなかったのと、
今回はさっさと治してしまわないとオカシャンの大いなる賭けがキャンセルされてしまう!
それだけは回避したいオカシャンは通常の風邪やインフルエンザならお腹を下せば大方良くなるのでオレンジジュースを温めてよく飲みます・・・僕はあんなものよく飲めるもんだと思います。
でも、魔の手は更に進化していてオレンジジュースだけでは無理そうです。
オカシャンは掃除にも使うあのいい匂いのする液体でまた加湿を始めました。
それはパンデミックが起きた頃、アルコールが世の中から足りなくなって、代わりにとオカシャンが各所に寄付したりプレゼントしたもので、品質を自分の身体や効果が見えるもので実験しつくしていて、一か所の仕入れ先からしか仕入れない拘りの液体です。
半年程度しか効果がありませんが実は僕があのお風呂という辛い経験をした時からずっとオカシャンは掃除に使っていたものでした。
僕らが舐めても問題ないやつですが舐めようとするとオカシャンは止めに来ます。
オカシャンが止めるのは「じゃこさんオカシャンそこ今掃除したからー」というどうでもいいことが理由です。
僕が歩けば僕の一部たちは常に舞い広がるのです!
まぁ、だいぶ話が横道にそれましたね。
オトシャンは超軽症、オカシャンは軽症という今回は体の中の免疫力が頑張った結果だったと思っておくようです。
因みにオカシャンのまき散らすいい匂いのする液体は体内でも製造されていて、免疫力の要がウイルスたちを倒すのにも使われているものなんだとか僕の身体の中にも流れているみたいです。
そんなこんなで5回目のワクチン前の二人の再びの感染は意外とあっさりと終わりました。
オトシャンの肺も元気です。
そして、ついにオカシャンの大いなる賭けが来月に迫り、病み上がりの二人は先生のところに行くこととなりました。
僕はその大いなる賭けがあれらを遠ざける最終手段になると願いながら、
「このごはんそろそろ飽きました他のもっとおいしいごはんに変更してください!もう外出できますよね?」
と懇願していました。
たまにはすーちゃんもなんか言ってよ・・・。
一緒に言えばごはんのランクもあがるかもしれないじゃん!
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