第26話 2020年到来
新年を迎えるほんの数日前には僕の苦手な掃除機が家中を動き回り、オカシャンもオトシャンも家中を行ったり来たりして掃除をしています。
大掃除というものらしいです。
指揮官はオカシャン。
オトシャンはすぐ休憩しようとするので「る〇ば」と呼ばれています。
一個の場所を掃除し終わると「るん〇"」ことオトシャンは定位置に座りじっとします。
充電しているらしいです。
それでもスイッチの入りっぱなしのオカシャンは「おい!〇んば!」とオトシャンに次の指示を出します。
いつもは窓を隠す大きなカーテンも僕の匂いまで消して洗われます。
すーちゃんは掃除機が移動するたびにどこか違う場所に移動します。
くノ一のようにススススッと。
僕は高いところで身構えて危ないなと思ったら逃げます。
去年の年越しにはオトシャンがいないのに、オカシャンが大出血をするという出来事がありましたが、今年はどうやらオトシャンは年越しにいるようです。
大掃除が終わると、オカシャンは年の初めにしか食べないものを沢山作り始めます。
オカシャンは形から入るタイプでかっこいい入れ物を貰って以来、毎年なんか色々チャレンジしているようです。
その間オトシャンはお出かけしたりの自由時間です。
そして、家族揃っての年越しは夜の早い時間から始まります。
まずはオトシャンが手掛ける「年越しそば」から始まります。
僕たちは去年あまり食べなかったので今年は器に盛られたとろとろの舌の止まらないやつと小袋のおやつを添えたもので年越しそば代わりだそうで大喜びです。
長く一緒に居たい人と食べる年越しそばを食べた後は
前日までに作り上げたオカシャンの趣味「おせち」をつまみに飲み会が始まりました。
オトシャンとオカシャンが呑み比べたら圧倒的にオカシャンの方が強いのです。
僕もすーちゃんと一緒に呑み(舐め)比べたら僕の方が先にグデングデンになっちゃいます。
お腹いっぱいでお酒も飲んだらあとは寝るだけーそんな僕とオトシャンはよく似ている気がします。
呑んだらご機嫌よくなって更に酒をよこせーっていうすーちゃんはオカシャンにそっくりです。
賑やかな人たちがいる場所は「てれび」という遠く離れた場所の人たちを見るものらしいのでここには居ない人たちだということも知りました。
それを見ながらオトシャンはてれびの前で眠って年越しをしています。
オカシャンは隙間のできたおせちの箱の中身を補充して満足げに僕と遊んで寝室で眠ります。
翌朝には「あけましておめでとう今年もよろしくねっ」と撫でられてお年玉というものを貰いました。
少し量は少ないけど、ナニこれ!新しいとろとろの舌の止まらないやつ!めちゃくちゃ美味しいじゃないか!
僕もすーちゃんもペロリと食べました。
今年もよろしくねとすーちゃんに言ったけど、新年早々叩かれました・・・。
年始から喧嘩するとその年は喧嘩の多い年になるっていうのに・・・すーちゃんはまだ僕に心を許さないから僕は応戦するのみです!
そうして賑やかな新年を迎えた僕たち家族でした。
オカシャンのこだわりで年始はお金を遣わないというルールもあり、基本的におうちでみんなで過ごす時間が増えるのですが、
一週間もしないうちからまたいつもの日常が帰って来ます。
随分とオトシャンもオカシャンも忙しそうでグッタリと疲れて帰って来ます。
オトシャンは遠くまで仕事に行っていて、オカシャンは基本的には近くに仕事に行ってたり、たまに遠くに仕事に行っていたりしても毎日ちゃんと帰って来ます。
僕も一年半以上一緒に居るので二人が居ない時間を有意義な時間としてのんびり過ごすことを楽しむようになりました。
以前の僕なら寂しくて寂しくて叫んでいたでしょう。
でも、僕も大人ですからそんなに叫ぶことはもうありません。(文句以外は)
世の中が少しずつ変わり始めたのはお年玉をもらって間もなくのことでした。
始まりは僕が居る場所から遠く離れた場所でした。
てれびが伝えてくるニュースに世界中の人々が頭を抱えているようでした。
オカシャンに至っては仕事が今までで一番順調だったようで
仕事先のこれからの変化を予想してあらゆる対策を考え実行に移しました。
オカシャンのお仕事は人と触れ合わなければ成立しないお仕事です。
触れ合う人が僕のご飯代をくれます。
オカシャン個人のお仕事と会社と二足の草鞋を履いているのですが、
今回の騒動、どうやら人との触れ合いに大きなデメリットがあるようで、
オカシャンは個人の方のお仕事先に迷惑をかけたくないので、まず個人の方のお仕事を中止しました。
それでも毎日のように会社の方には行きますが、触れ合うお相手もこの騒動を恐れたりで誰一人来てくれなくなっていきました。
オカシャンはそれらも想定して世の中から不足している「ますく」というものを、
会社にある材料で家から持って行った裁縫道具などで見た目だけでも「ますく」に見える付け心地のいいものとして、会社の人に試してもらいながら作り方を考えたりして
大量生産しようと提案し上司から許可を貰いましたが、暇な時間が多くなるわりに手伝ってくれる人は少なく、なぜかオカシャンに許可を出したはずの上司は「手作りなんて気持ち悪いから誰も貰わない」などといい、
オカシャンは休憩時間だけでも作り続けようとしましたが、
「そんなもの作られるより寝ていてもらった方がいい」とオカシャンの作業を邪魔して、箱の中で何時間もオカシャンを眠らせたのです。
家では僕たちがいるため作業はできず、オカシャンはサービス残業をしながら作っていました。
途中からオカシャンの同期の人が手伝ってくれるようになって、
やっと来てくれた触れ合う人たちに無償で渡すことができました。
触れ合う人たちは騒動のため、なかなか今までのようには来ませんでしたが、オカシャンと同僚の人の作った「ますく」はすぐになくなってしまいました。
そして、上司に「ますくはもっとないのか?」と言われたところから違和感を感じ始めたオカシャンでした。
上司は触れ合う人たちに「こんなに布すらも手に入らない時期にマスクを配布してくださってとても助かります」と言われて
オカシャンに言った「手作りなんて気持ち悪いから誰も貰わない」という言葉を忘れ、オカシャンを何時間も箱の中に閉じ込めて作成を邪魔したことも忘れ、
「ますく」を受け取った人からの感謝の言葉にただ酔いしれているのだそうです。
その後オカシャンがますくの作業を再開しなかったのには理由がありました。
世の中の大企業さまがマスク作りに乗り出してきたので、流通が始まった以上、
オカシャンには次が見えていました。
そう。長い時間引きこもっていられる人は少ないという事。
オカシャンのお仕事は家の中の僕たちへの愚痴で分かりますが、オトシャンのお仕事にも変化が出ました。
オトシャンのお仕事はめちゃくちゃ忙しくなったのです。
それでも、いつもなら昼間にでかけていくオトシャンがずっと家に居ながら誰かと話しています。
お友達ではありませんここに居ません。てれびと話しているような感じです。
すーちゃん曰くてれびはここに居ない人で会話もできないはずなので、
オトシャンは誰と話しているのでしょう?
てれびのようなものみたいです。
基本的にはオトシャンしか使わないその薄っぺらいてれびのようなもの、パソコンというらしく、それを使ってオトシャンはテレワークという形態のお仕事の仕方ができるようになったそうです。
そのため、僕も半強制的に会議に参加させられたりしてちょっと日常が変わってきました。
世界規模の未曾有の事態でオトシャンとオカシャンは何ととんでもないことを始めたのでした。
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