第4話 かわいい僕は誘拐されました

だいぶ暑い季節になってきました。


僕は暑いのも寒いのも苦手です。


このおうちの温度はある程度一定の温度ではありますがそれでも僕のファッションではなかなか息が上がってしまいます。


ある日、オトシャンだけが居て、オカシャンが居ないときにオカシャンに少し似た家政婦さん?が現れ僕を狭い箱に入れて連れ去りました。


これは、誘拐というやつなのではないかとオトシャンに訴えかけましたが、オトシャンは誘拐犯に僕を差し出しました。


なんて酷いオトシャンなんだ…そして、僕はこの後どこに連れていかれて、何をされてしまうんでしょう。


不安でいっぱいでした。


ブーンという何度か聞いたことのある音と共に少し揺れて気分が悪い場所で散々「ここから出せ!僕はどこにも行きたくない!」と抗議をしましたが、


どうやら誘拐犯は僕の言葉が聞き取れないようで出してくれる気配はありませんでした。


揺れる気持ち悪い場所から何とも言えない匂いのする場所に移動し、そこにはとても大きな大きな家政婦さん?いや、敵が待っていました。


それから二日間ほど僕は敵によって拷問を受けていたのです。


水をかけられたり、ほぼ丸裸にされたり、散々の抗議はしました。


出せるものはすべて出しました。


それでも、敵は臆せず僕の大切なファッションを奪い、僕は丸裸のまま狭い箱に戻されました。


すると、誘拐犯が僕を連れ戻しに来て、今度は誘拐犯のおうちに運び込まれました。


誘拐犯のおうちには4人も他の人が囚われていて中には老人も何人かいました。


僕は彼らと話をする間も与えられず大きな部屋に案内されました。


しばらくするとなんとそこに現れたのは…オカシャンでした。


オカシャンは誘拐犯になんと紙を渡していたのです。


僕は悟りました。このすべての悪事を企てたのはオカシャンだと。


あんなに信じていたのに…酷すぎる。


僕はその部屋の誰も入ってこれないような場所に奥深く潜り込みオカシャンに対しても怒りを言葉にして示しました。


差し出されたとろとろで舌が止まらなくなるあれはかろうじて捕まらない距離から食べました。


でも、許せません。激おこです!


ところがオカシャンは家政婦さんが入れないような場所に潜んだはずの僕のところまで潜り込んできたのです。


そして無理やりに捕まえてまたあの狭い箱の中に入れて誘拐犯と一緒にブーンという音と共に揺れる場所にまた連れて行きました。


ほぼ裸に剥かれた僕はここからどこに売られてしまうのか心配です。


心配ばかりしていましたが、ついた場所はなんとオカシャンとオトシャンの居る、僕のおうちでした。


そこから一日僕はオトシャンともオカシャンとも距離を置き、引きこもるように隠れました。


また何かされるんではないかとビクビクしていました。


一日経ってお腹もすいて、僕はオトシャンがくれた美味しいごはんを食べてたらなんかどうでもよくなってきました。


それからしばらくとっても体が軽くて暑くないし、吐き気もない、歩きやすくもあって快適だなと裸生活もわるくないじゃないかという気もしてきました。


鏡に映る僕は世界最強ともいわれる憧れの彼にそっくりです。


なるほど、これはいい。


辛い思いはしましたが、息の上がる暑さからは免れ、今はとっても気持ちがいいので今回だけはオカシャンの悪事も見逃してやることにしました。


それでも時々寒いと感じる時には賑やかな家政婦さんや執事さんが沢山居る場所の後ろに少し暖かい場所があるのでそこで温度を調整していました。


いつの間にかオカシャンがそこに毛布を敷いてくれるようになり僕のお気に入りの寝床になりました。


そういえばオトシャンはあんまりファッションが変わらないけどオカシャンはほぼ裸生活をおうちではしています。


お揃いにしたかったのかもしれません。


それにしても、あの敵は、大きなあの敵は僕が怒ろうが暴れようが全く動じることもなく2日間もかけてこの僕を虐めつづけました。


次会った時には反撃してやろうと心に決めました。


その後、暑い季節には必ず、その敵に会うことになり、毎回完敗することになるとは、その時の僕は思いもしませんでしたが。


そして、オカシャンは続けざまに「病院」に僕を連れて行き健康診断というものを受けさせました。


僕は健康そのものでした。


「病院」の執事さんは「先生」と呼ばれていて、僕にとても馴れ馴れしいです。


何度か大暴れしましたが、オカシャンはだいたい4か月に一度のペースで「病院」に連れて行くのでまぁ、そういうものなんだと少々、本当に少々諦め始めました。


それでもあの狭い箱が出てきた途端に僕は身を潜めます。が捕まってしまうのです。


嫌だ!と叫んでいるのに聞く耳を持っていません。


全く、少しは僕の言うことに従ってもいいんじゃないかと思いました。


そして季節は少し涼しくなっていき、オトシャンとオカシャンの生活ペースにも慣れたある日、いつもなら帰ってくるはずの暗い日にオトシャンもオカシャンも帰ってきません。


僕のごはんはまぁまぁありますが、このまま帰ってこなかったらどうしようと大慌てしてても仕方ないので、


僕はごはんを少しだけキープしながら食べて寝ていました。


すると暗い二日目に二人とも帰ってきたのですがまぁ、オカシャンが無理やり僕を捕まえては無理やりキスをしたりなんやかんやと、うるさく話しかけてきます。


オトシャンはというと…もう寝ています。


美味しいごはんはくれましたが、二人はどうやら酔っぱらっているようです。


僕を一人家に残して酔っぱらうとはけしからん。


明るい日になったら無理やりにでも起こして説教してやらねばならないな!と思い、吐き気もしないのに僕はオカシャンの耳元で嗚咽を奏でて起こす癖がつきました。


オカシャンも毎度それで起きてくるんだから簡単なもんです。


僕の大変だった暑い季節が終わり、穏やかな季節が始まると思っていたら、まさかあんなことが起きるなんて。


想像もしていませんでした。

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