第18話 美食と僕

オカシャンは基本的に怪しいものをよく食べています。


オカシャンの主食はなぜか食べさせてもらえないけどとっても気になります。


真っ赤な色がするなんだか目が染みるような食べ物を好んで食べているようで僕には食べられないと思っているようです。


それ以外にもオカシャンはだいたい怪しいものを食べています。


オトシャンはおうちに帰ってきてから食べる事が少ないけどだいたい酔っぱらって帰ってきます。朝に。


桜の終わるころどうやらオトシャンとオカシャンが贅沢なものを食べる日があるらしいのです。


オトシャンがどこかで買ってきたそれは何とも美味しそうで僕は居てもたってもいられず、オカシャンにトントンとすると、


オカシャンは「成分どうかなぁ?」と悩んで調べて


「じゃこさんスイーツ男子だねぇ!」と指先にちょっとだけそれを乗せてくれました。


言っておきますが、僕は野菜が嫌いです。夜ご飯に野菜が混入されたものが出た時には二度と口にするものか!とその種類のごはんはストライキするくらいです。


なのでオカシャンがくれた今回のものは野菜ではないのです!


名前を「純生クリーム」というようです。世の中には野菜から作られるフレッシュクリームなんてものがあるらしいですがあれはいけません。


僕の口には合いません。


その純生クリームは最高級ですか!?というくらいにとてもとても美味しかったのでおねだりをしましたが3回でストップされました。


オカシャンがそんなに生クリームが好きならば、と紙パックに入った生クリームを買ってきましたが甘くない生クリームなんて美味しくありませんよ。


僕らには甘さを感じられる機能がないなんて言われているみたいですが僕は甘いものが好きです。


生クリームの他にも甘いもので好きなのがカスタードクリームとバニラのアイスクリームです。


バニラビーンズというツブツブが入っているとより一層美味しく感じます。


野菜だろって?バニラビーンズだけは特例です。


いつもオカシャンの熱すぎるくらいの手から貰うのでアイスクリームはすぐ溶けてしまいますがそれでも好きです。


僕たち用のケーキというものもあるらしいのですがあれも僕にはただの野菜です。


お断り!


年越しそばも結局のところ野菜嫌いな僕には合わないから残したんですけどね。


家族のお祝い事がある時には立派なスイーツがどうやらこのおうちには来るようです。


オカシャンは僕と同じで、甘いものが好きなんですね。


オトシャンはそこまで甘いものは好きではないようですが、きっとオカシャンのために買ってくるのでしょう。


たまにオトシャンが甘いものを作っていることもあるし。


仲はいいんですけどね…この二人。


時々別々の場所で寝たり、まったく会話をしなかったり、大喧嘩をすることも時折あります。


そんな時はいつでも僕が間に入って仲裁しているけど、まるで僕と黒きレディのような関係なのでしょうか?


僕はどっちのことも好きだからどちらも仲良くしてほしいとは思うのですが。


すーちゃんもオトシャンも頑固なところがあるし、僕もオカシャンもしつこいところはあるから、晴れ時々大雨みたいな関係なのでしょう。


でもきっとこれが家族ってやつなのですね。


喧嘩しても仲直りして、仲良くしている時は一緒に遊んで、そしてまた喧嘩して…。


そういえば、最近は朝のすーちゃんは寝ぼけているのか、僕にも優しい気がします。


数分だけ。


ああ、すーちゃんは生クリームを差し出されても食べませんでしたね。


その代わりすーちゃんは僕とは逆に野菜が好きみたいで、オカシャンが好きで生で食べる苦い味のしそうなパセリという野菜も盗んで食べるし、一番の好物は黒さを補いたいのかわかりませんが、


海苔という僕には理解も出来ないもので、オカシャンがオトシャンとたまにやる手巻き寿司というものの時は、


生クリームを欲する僕のようにオカシャンへのアピールがすごい!


焼きのりというものはパリパリしているのか食べているすーちゃんを見ているといい音を出して食べています。


そういえば日頃のごはんもいい音を出して食べるよねぇ…すーちゃん。


僕はなぜかごはんは丸のみしちゃうからゴックンって音しかでません。


まぁ、だから吐き戻すらしいのですが、噛むのが苦手なんですよね。


そこはオトシャンに似たことにしておきましょう。


オトシャンもほぼ噛むことなく丸飲みで早食いです。


オカシャンはごはんはゆーっくり食べている。食べている時も僕やすーちゃんが話しかけると食べるのをやめて遊んでたりするし、おうちにいるたくさんの人たちを見ながらオトシャンとあれこれ話したりしながら食べています。


小さいころからずっとそうらしいです。


すーちゃんはそういえばそんなに吐かないな…僕も噛む練習をした方がいいですかね…。


そんな時オカシャンがとろとろの舌の止まらないやつではない僕たち用のおやつを見つけてきました!


すーちゃんが外で暮らしていた時から歯肉炎というものらしくて歯をきれいにするための大粒のおやつなんだとか。


でも、肝心のすーちゃんは「あたしこんな大きなもの口に入らないわ」と言って食べません。


それじゃ僕が!おお!これは!これなら僕でも噛めますね!


そして歯茎にいいらしいです。


スイーツ男子で美容男子です僕は!


ただ、そのおやつはサンプルだったらしく2回くらいしか出て来ませんでした。


すーちゃんが食べないというのが問題らしいです。


僕は食べますよ…。


オカシャンはとろとろの舌の止まらないやつの他にもいろんなおやつを買ってきました。


その中でも小袋に入ったものはとてつもなく美味しいのです!


オカシャンが一つ一つくれるおやつを僕は丸飲みで食べてしまいます。


オカシャンは「じゃこさん美味しい?」「もうひとつ食べる?」と聞いてくるので僕は勢いよく頷きます。


「じゃこさんよく噛んで食べてね」とも言うからとりあえず頷きますが、噛めるのはほんの数回。


僕は噛むのが本当に苦手です。


小袋のおやつ美味しいじゃないか!ただ問題はこの小袋が食べられるのは僕が無意味にオカシャンに抱っこされた後限定という謎のルールがあるのです。


パブロフの犬のように僕を躾けようとしている魂胆は丸見えです。


僕はそんな簡単には思い通りになりませんよ。


だけど、なぜだろう…抱っこは回避しつづけてもいつか捕まってしまいます。


何秒か抱っこさせてあげたら大暴れして逃げるのに…そのあとあの小袋をオカシャンが持って寝室に移動すると体が勝手について行ってしまいます。


そしてペロリと平らげるとオカシャンは小袋をグシャグシャと握りつぶす。


それは終わりのサイン。


すぐさまその場を立ち去り僕は安寧の地にて眠るのでした。


パブってなんかないよ!僕は!パブっていませんからね!


ただ美味しいものが好きなだけなのです。


さて、そろそろ危険を感じますね…。


オカシャンがだいぶ薄着になってきました。


黒きレディも一緒だろうか…?黒きレディが来たのは赤い服を着た老いた執事さんがいい子にプレゼントをくれるという日。


あの日は寒かった。


でも今は…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る