第19話 『え?あんたどうしちゃったの?』
だいぶ暑い季節になってきたみたいね。
外で生きていたあの頃は涼しい場所を探すのにも苦労したものだわ。
でも、オカシャンとオトシャンは心配症だから気温管理ができるように涼しい部屋にしてくれるのよ。
でも、あたしには少し寒すぎたりするから、そんな時は寒い時と同じように布団の中に入ったり、あたし専用のもこもこの寝床に入ったりして調整できるから困らないわ。
でも、オトシャンもオカシャンも帰ってくるまでは暑いみたいでだいぶ薄着になってきたわね。
あたしも見た目は変わらないかもしれないけど衣替えしたのよ。
ちょっと時間はかかるんだけどね。
毛玉も衣替えしたみたいだけど、見ているとあんまり動かないでぐったりしてるし暑苦しいわね。
「ねぇ、あんたそれで暑くないの?」って聞いてあげたら毛玉は
「暑いよ…でもそれを気取られたら恐ろしいことになるからオカシャンに言ったら怒るよ!」と真っ赤な鼻をして言うのよ。
オカシャンには多分バレバレよ…恐ろしいことね…なにかしら?
毛玉は抱っこが嫌い、あたしは抱っこ大好きだけどね。
病院も嫌い、あたしも病院は嫌いだけど…あたしたちのためみたいだし。
オトシャンとオカシャンが居ないのも嫌い、あたしは昼間はどうでもいいのよ、夜居ないのは寂しくて悲しくなるわ。
でもどれも定期的に発生する事案だから避けようがない。
もしかして、あの甘々なオカシャンやオトシャンが怒るって言うの?
ソファに意思表示しても怒ったりしないオカシャンとオトシャンが怒るの?
嫌われたらまたどこかに行かされるってこと?そういえば毛玉は丁度一年くらい前の暑い時期にこの二人のもとに来たって言ってたような気がするわね。
それは嫌よ!もうたらい回しなんて嫌!あたしも暑い姿はオカシャンに見せちゃいけないわね。
でも、うざったい毛玉の事は今夜にでもオカシャンに報告してやろう…うふふ。
そうなればあたしがオカシャンとオトシャンの愛情独り占めじゃないの!
あっさー!完璧な計画~。
「ねぇねぇ、オカシャンあいつだいぶ暑そうなのよ…グッタリしてあんまり動かないわよ」
オカシャンは「あらあらそうなの?それはそれは大変ね。いつも苦労してますね」とだいたい返してくるの。
夜には一日の報告をするんだけどね、だいたい毛玉の愚痴を言ってるから返事はだいたい同じなのよね。
そして、いつも「じゃこさんと仲良くしてくださいね」で締めくくられちゃうんだけどね。
特にあいつを叱ってくれたりもしないし、何も対策してくれるわけでもないんだけど愚痴を聞いてくれるだけでも、まぁいいかと思ってたのだけど、
その日の言葉は伝わったみたいで翌日オカシャンはいつものあの狭い箱を出したの!
もちろんあたしも一目散に隠れたわ。テレビの後ろに。
先客は居たけど、狭い箱が出た時だけは毛玉とは喧嘩もしないし音も立てない協定を結んでいるわ。
毎月行われる病院だ…そういえばもう一か月経ってるのね。
そして、オトシャンとオカシャンによって、まんまと見つかるあたしたち。
それぞれの箱に入れられて、あたしは今日はオトシャンの背中に背負われていつもの先生の居るところで武器を奪われて、目薬を点されて特に変わらないけど好きじゃない病院に行って帰ってきた。
すると、あいつがいつもなら同時に箱から出て美味しい匂いのするものを同時に食べているはずなのに居ないじゃないの。
そういえば、あいつを背負ったオカシャンも居ないじゃない!
もしかして、昨日あたしが言ったチクりで別居が始まったんじゃないでしょうでしょうね!?
心配しても仕方ないからオトシャンから美味しい匂いのするものを貰ってしばらく寝て待つことにしたわ。
オカシャンは6時間後くらいにあいつを入れた箱を持って帰ってきたわ…。
伝わってくるのは激しい怒り…あれ?あたしのチクりバレた?
でも帰ってきたんだからいいじゃない。
少しあたしよりも長い時間外に連れ出されたみたいだけど、よかったじゃないのたらい回しにされたわけじゃないなら。
って思ったんだけど箱から出てきたのはあの毛玉じゃなかったの!
裸同然のあいつだったの。
ああ、これが言っていた恐ろしいことなのね。
去年真っ赤な鼻をしてハアハアしていた毛玉を病院に連れて行ったオカシャンは先生に「暑いだけですね」と言われて先生になんとかならないか頼んだけど先生には解決できなくて
オカシャンのオカシャンに頼んであいつを夏仕様にしてくれる場所に連れて行ってもらったらしいの。
あいつは誘拐犯だと思ったらしいけど、結局このおうちに帰ってこれたらしいわ。
そこにはオカシャンよりも最強の強引さを持つ敵がいるらしいのよ。
それにしても、あいぐー、その姿は…あんたどうしちゃったの?
あたしより馬鹿でかい奴だと思ってたけど、夏仕様はあたしより少し大きいくらいね。
オカシャンにいつものやつを貰ってもご機嫌わるーい。
それを察してかオトシャンとオカシャンはごはんだけ置いて出かけて行った。
あたしと、この…毛玉だった裸族とタイマン…。
今なら喧嘩しても勝てそうな気がするけど、そういえばあたしも武器奪われたんだった。
仕方ないから裸族の愚痴でも聞いてあげよう。
「だからバレたらいけなかったんだ…大きなあの敵にまた会うことになるなんて…オカシャンめ。」
裸族は麻酔もなく、あの恐ろしい生ぬるいお湯をバシャバシャとかけては毛玉を平然とほぼ全裸にする人を恐れていたのね。
しばらくすると、怯えてたのがウソのようにルンルンと家中を走り回り始めたわ。
どうやら裸族になったら体が軽くて涼しくて、ついでに足の裏も滑り止めが効いて元気を取り戻したようね…。
勢いが増してちょっとあたしとしては何だけど…。
ちょっかいもかなり出してくるし…。
毛玉の時の方がまだおとなしかったような気がするわ。
なんか子供に戻ったみたいね…。
あたしの衣替えはこのままよね?違う日に同じ目にあったりしないわよね?
たぶん大丈夫だと思うけど…少し警戒しておかなくちゃ。あの箱には。
この毛玉改め裸族、見た目は小さい白いライオンね。
あたしのチクりのせいかもしれないからしばらくオカシャンがいうように仲良くしてあげようじゃない。
と言いながら毎日喧嘩になるあたしたちの日常はつづく。
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