第20話 スクラン
※前回までのあらすじ
偉大な魔法使いロヲロヲの手がかりを得るため、アルエース大陸に向かうことにしたソウジ。
途中、バンパイアに襲われるも、魔王の姉を名乗るエロいねーちゃんに助けられる。
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「魔王の、姉?」
この人が?
人間にしか見えないけど。
バンパイアたちの反応からして、相当強いのはわかるが……。
リーダー格がスクランを指差した。
「き、きさま!! 我々の邪魔をする気か!! 人間に加担するとは、とことん魔王軍の恥晒しだな!!」
「あぁん? 私は血が通ってるってだけで弟の部下でもなんでもないよ。だいたいさあ、プライドのせいで魔王軍と相入れず、人間とも馴染めない、結果こーんな蒸し暑いジャングルに身を潜めるハメになったアンタらの方が、よっぽど恥晒しじゃない?」
「黙れ!!」
「んで、魔王軍と人間が消えたから世界を支配するって、どんだけ小物なんだか、高尚なバンパイア族様は」
「それ以外愚弄するなら、許さんぞ!!」
「口ばっか動かしてないで行動で示しなよ。まあ、アンタら如き寝てても倒せるんだどね」
「くっ……」
こんだけバカにされているのに、バンパイアたちはまったく攻撃の素振りを見せない。
ビビってるんだ。
「ねえ、人間」
「え、はい」
「さっきのおもちゃ、貸してよ」
「おもちゃ?」
「弾撃ってたでしょ。あれで遊んでみたい。だから君を助けたんだし」
ピストルのことか。
言われるまま、ピストルを召喚する。
銃に詳しいわけじゃないが、たぶんアメリカなんかじゃ一般的なハンドガンだ。
「ふーん、いいねこれ。程よい重さ、色、形、かっこいいじゃん。君が作ったの?」
「あ、いや、俺が作ったわけじゃ……」
「なんでもいいや。使い方は、さっき君がやってたのを観察してたし」
引き金を引いて、リーダー格に向けた。
リーダー格が鼻で笑う。
それもそうだ。俺が撃ったとき、彼らにはまったくダメージが入っていなかったのだから。
「人間、使っていいだろ?」
「いいけど、でも……」
瞬間、耳が痛くなるほどの銃声と共に、リーダー格の頭部が吹き飛んだ。
「え……」
倒れるリーダー格の姿に、仲間たちは驚愕している。
「んー、音がデカすぎるのが気に入らないけど、慣れるか」
続け様に残る二人にも発砲。
一人は胸に大きな穴が空き、もう一人は、リーダー格同様、頭部が破裂した。
「ん、いいねこれ」
「な、なんで……」
ありえない。
さっきと同じ銃のはずだぞ。
マグナム銃でもスナイパーライフルでもない、ただのハンドガンなのに。
「乾燥地に入ってから、君を尾行してたけど」
気づかなかった。
「人間消滅の原因を調べてるんだって?」
「え、あ、まあ」
「やめときな。首を突っ込むと命がいくつあっても足りないよ」
「……」
「特に、アルエース大陸に入ったらね」
なんでも知ってるのか、こいつ。
「人間と魔王軍の両方が、突然消滅した。私だって何が起きたのか知らないけれど、あちこち巡るなら、今回みたいな状況がまた訪れる。消滅から免れた私みたいな魔物もいるし、人間嫌いの種族だって残ってる」
「あなたは、調査しているんですか?」
「消滅の理由? 調べないよ、私は魔王一族を捨ててるし、人間だってそんなに好きじゃないからね」
「じゃ、じゃあ、ロヲロヲさんって魔法使いのことは?」
「ロヲロヲか……。どうでもいいね」
スクランは銃を弄くり回し、力任せに分解する。
そして弾倉を手に取ると、ふーんと鼻を鳴らした。
「弾は限られてるんだ。便利なんだか不便なんだか」
「どうして、あなたが撃ったら威力が上がったんですか?」
「そんなこと聞いてどうする」
「えっと……」
「まさか、参考にでもするつもりじゃないだろうね? 強くなって、旅を続けようとでも?」
見透かされてるな。
「なんでそこまで知りたがる。死にかけたのに。どうせ、単なる暇つぶしなんだろ?」
「そうですね。でも、どのみち調査を諦めるにしても、強くなれるならなったほうがいい」
「なんで?」
「じゃないと、身を守れないからです。もし、適当な街で平和に暮らしていても、バンパイア族みたいなのが攻めてきたら」
「なるほどね。そりゃそうだ」
ていうか、俺以外の異世界転生者を捜さないとならないし、旅は続ける。
「うっ!!」
な、なんだ、突然腕に痛みが……。
やべ、そうだった、俺、バンパイアに手を切り落とされていたんだ。
絶望とか動揺とか興奮ですっかり飛んでた痛みが、今になって戻って来やがった。
「っつー!!」
「ははは、人間は脆いね」
やばい、マジで痛い。
涙が止まらん、立ってられない。
「そのまま横になって安静にしてな。せっかくだ、私が治してなるよ」
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