第21話 女神の強さ?

 意識が水底から吸い上げられるように目覚めていく。

 まぶたを開けて上半身を起こす。


「ここは……」


 硬い地面、土の壁や天井。

 洞穴か?


 日の光が洞穴の中に差し込んでいる。

 ふと、切られたはずの右手を見やれば、まるで何事もなかったかのようにくっついていた。


「ホントに手、治ってるし……」


 しかもきちんと動く。

 あのスクランとかいう人がやったのか。


「お腹減った……」


 とりあえずトイレがしたい。

 立ち上がって外に出る。


 どうやら、俺はまだジャングル地帯にいるらしい。


 しかしあの人、どこへ行ったんだろう。

 だいたい、ここはジャングルのどの辺だ?

 まあいい。地図だと南下を続けていれば海に出る。そこから海が干上がる沿岸部まで移動しよう。


 太陽の位置を確認すれば、方角もわかるしな。


「ふー」


 とまあ、用を済ませて一息ついていると、


「おはよう」


 後ろから声をかけられた。


「うわああ!!」


「おいおい、ちゃんと前を隠してくれよ」


「ス、スクラン!? さん……」


 いきなり出てくるなよ。


「腕は治してやったぞ」


「あ、ありがとうごさいます。俺、どんぐらい寝ていたんですか?」


「だいたい三日くらいかな」


 よかった。

 まだ新月まで二〇日以上ある。

 十分間に合う。


「それで、強くなりたいんだって?」


「え!? 強くしてくれるんですか!?」


「身を守る術を学びたいんだろう? 私もいろいろ考えたが、別の世界から来たおかしな術を使う人間となると……呆気なく死なれては面白くない」


「そりゃどうも」


「まあ、私に教われば向かう所敵無しさ。なんせ、かーなーりー強いからね」


「そうみたいですね」


 魔王の姉、らしいし。


「ロヲロヲさんよりってことですか?」


「あいつがスライムなら、私はゴブリンってとこかな」


 ん? どういう例えだそれ。

 すっげーわかりづらいけど。


「ぶっちゃけ今の世界じゃ私が最強だよ。太古まで遡って、天使やら女神とか出てきたら話は別だけどさ。はっはっは」


「女神ってそんなに強いんですか?」


「そりゃ神だからね。戦ったことないから知らんけど」


 本当かよ。

 女神って、アンフのことだろ?

 デコピン一発で大号泣しそうだけど。


「意外です」


「なあに、んな女神なんてもはや神話のお伽話の存在だから、私の前に現れることなんかないけどさ」


「アンフ召喚」


 女神を召喚してみた。

 お、今日は普通に服を着て普通に立っているな。よしよし。


「もー、なんですかいきなりー。これからランチだったのにー。ははーん? さては私に会いたくなったんですね。困ったもんですよ、好感度低いのに。勘違いされちゃ困りますねー」


「はいはい」


 スクランの様子を伺ってみれば……目を丸くして口をぽかんと開けていた。


「また新しい女性ですかあ? まったく、ソウジさんって節操がないですよね。とはいえ、最終的には私を選ぶってわかっているので、怒ったりはしませんけどね、はははあ!!」


「はいはい。てかアンフよ」


「なんですか?」


「アンフって強いの?」


「強いの定義が曖昧ですけど、天界腕相撲大会なら一五六位でした」


 弱そうだな。


「まあ、これでもB級女神なんでえ、その辺の下等生物よりかは強いですけどねえ!!」


「何級まであるの?」


「CからSです」


 下から二番目かよ。


「わかった。ごめんな、もう戻っていいよ」


「え、なんですか、もっと話さなくていいんですか? 好感度上がるチャンスですけーー」


 上がらなくていいので帰ってもらった。


「てなわけで、あいつ女神です」


「……こりゃ、驚いた」


「本当に強いんですか? あんなのが」


「強いよ。はっきり言って、私はあの子を殺せない」


「マジすか」


「逆に、あの子も私を殺せない。あの子が女神として、闘争本能や戦闘技術を身につけたなら、話は別だけど」


 つまり、平和ボケしているけど潜在能力は凄まじいってことかよ。

 急に怖くなってきたな。あんまり怒らせないでおこう。


「なーんか、自信なくしちゃったかも。……君とあの子は、どういう関係?」


「えーっと、端的に説明するなら、腐れ縁です」


「ふーん。まあいいや。気を取り直して、教えてやるよ、強くなる方法」






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※あとがき


一応、アンフちゃんはメインヒロインなので、最終的には主人公とくっつけるつもりでいたんですが……どうもくっつきそうにないですね。

ウザいですもんね。ウザかわいい。

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