第7話 究極のスーパーメイド、ラスプちゃん
「え……」
突如出現した無表情メイドに、俺の視線は釘付けになってしまった。
そりゃそうだろう。だって、人がいるんだから。
もしかしてこいつが、アンフの言っていた女の子なのか?
どうみても地毛っぽい青い髪だけど、俺と同じ世界の住人ならありえない髪色だ。
「あの、えっと」
「わたくしはダーチア城専属スーパーメイドのラスプと申します」
「あ、ども、八神ソウジです」
いま待て、待て待て待て、こいつおかしいぞ。
玄関が吹っ飛ばされて、わけわからん奴が入ってきたはずなのに、どうして平然としていられるんだ?
「玄関、爆発したけど」
「そのようですね」
「驚かないの?」
「主人や客人をもてなす。それがわたくしの役目ですから」
それ以外のことは管轄外ってか。
「命令上、正面玄関から入られた方は、お客様と認識させていただきます」
「あんまり正しい命令じゃないよ」
「ご用件をお伺い致します」
「まずハッキリさせたい。君は人間なの?」
「いえ、わたくしは、偉大なる大魔法使いロヲロヲ様によって製造された、究極の自律型魔法人形です」
「そういうことか……」
人じゃないから、まだ存在しているんだ。
納得したぶん、がっかりもデカい。
表の鎧兵たちと同じなんだ。
十中八九、鎧兵たちもその魔法使い様が作ったのだろう。
「ちなみに」
「ん?」
「わたくしのIQは250です」
「そ、そうなんだ。やばいね」
IQなんて概念があったんだ。
この世界の基準的に250はすごいのか?
「ちなみに」
「あ、うん」
「全世界料理コンテストサンドイッチ部門3年連続優勝。世界最高峰の格闘大会『アイジン』ベスト8。数学大会レハー国代表選手。第58代クイズ王の称号があります」
「ほんとかよ。うさんくさすぎるだろ。マルチ商法で詐欺る奴みたいな肩書きの多さじゃん」
「事実です。私は究極のスーパーメイドなので」
「そ、そう」
自己主張が強すぎだろ。
かなりナルシストなんだろうな、このメイド人形。
「ちなみに」
「まだあるのかよ」
「素手で水中にいるサーメーと戦いボコボコにしました」
「嘘つけ」
「時速150kmで走るモンスター、チータリアンを追いかけ回してボコボコにしました」
「絶対嘘だろ」
「ものすごいジャンプをして超巨大カラースをボコボコにしました」
「そいつらに何の恨みがあったんだよ!! 陸海空を制覇してんじゃねえ!!」
「それで、城にはどういった目的で?」
「急に話の温度変わるじゃん」
言いたいことだけ言って満足しやがって。
「あー、実はさ」
図書室に行きたいと頼むと、ラスプは快く案内してくれた。
城にはもちろん、誰もいない。
魔法人形メイドは、こいつ独りだけのようだ。
廊下を歩きながら問いかける。
「なあ、なんで誰もいないんだ?」
「わかりません」
「調べないのか? 不安じゃないのか?」
「管轄外ですから」
寂しい。って感情があるのだろうか、こいつに。
「ラスプを作った魔法使い、ロヲロヲさんは、まだ生きているの?」
「わかりません。2年前、わたくしを製造したのち旅に出てから、会っていません」
「そっか……。悪いな、不躾な質問ばかりして」
「いえ、わたくしはただ、主人やお客様に従うだけですから、怒ったり苛立ったりしません」
の割には、自分語りしているときは楽しそうだったけど。
「つきました」
ラスプが扉を開ける。
だだっ広い部屋。数え切れないほどの棚に、隙間なく本が収納されていた。
「おぉ〜」
「読みたい本がありましたら、わたくしが持ってきますが」
「いや、じっくり選ぶよ。しばらくこの城にいていい?」
「もちろんです。お腹が減りましたなら、わたくしが用意致します」
「食い物あるの!?」
「パンを焼いて差し上げます。足りなければ、塩漬けにして保管している肉や野菜もございますよ」
「いいね〜」
さすがは究極のスーパーメイド。
今夜も宴だな。
「ちなみに」
「…………」
「地球に降り注ぐ流星群をすべて粉砕したことがあります」
「嘘つけ」
「地面を殴って地震を止めたことあります」
「絶対嘘だ!!」
「事実です。究極のスーパーメイドなので」
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