第23話 いざ、新大陸!!

 スクランさんとの修行から二〇日後。

 俺は海岸沿いで、夕日が沈むのを待っていた。


 あれから割とすんなり魔力操作を覚えて、スクランさんも一人前だと認めてくれたのだ。


「驚いたよ、私の弟ですら半年はかかったのに」


「ありがとうございました。これでもう、バンパイアみたいなのが襲ってきても平気です」


「油断はするなよ。お前はまだ、戦闘経験がほとんど皆無だからな」


 一応、スクランさんと模擬戦闘のようなものはしたけれど、所詮は訓練。

 実戦ではない。


「はい」


 日が水平線の下へ消える。

 空が、完全なる群青色に染まる。


 月が煌めき、潮がどんどん、引いていく。


「スクランさんはこれからどうするんですか?」


「ん? ぼーっと過ごすさ。面倒を起こす気もないし、巻き込まれる気もない」


「そうですか。ロヲロヲさんにメッセージがあれば、伝えますけど」


「ないな。あんなやつ、思い出したくもない」


 そんなに嫌いなのかよ。


「ソウジ、最後に一つ忠告しておく」


「なんです?」


「この世界の住人、とくに人間以外に女神を紹介するのは控えろ」


 人間以外って、もはや人間以外しかいないんですけどね。


「なんでですか?」


「いちゃいけないんだ、本来。神話の存在なんて」


「はぁ」


 よくわからないな。

 神なんだから崇めればいいんじゃないのか?

 まあ、俺だったら絶対に崇めたくないけどね。アンフなんか。


 マヤハちゃんは別♡


「お!!」


 本当に海に陸地が現れた。

 さながら海を割ったモーセの如く。

 よーし、


「SUVの車召喚!!」


 悪路に強い四躯のSUVを召喚し、


「じゃ、スクランさんまたいつか!!」


 別れを告げて、乗り込む。

 エンジンをかけて、いざ出発。


 あ、せっかくならアンフを召喚してやろうかな。

 ダメだ、車が消えちゃう。


 なんだよ、せっかくのドライブ、あいつでもいいから隣に女の子でも乗せたかったのに。

 

 とかなんとか文句をたれていると、


「呼ばれた気がしてジャジャジャジャーン!!!!」


 助手席にアンフが現れた。

 こいつ、俺の思考を読んで自分からでてきたのか!?

 よ、よかった、今回はちゃんと服を着てるわ。


「ふふふ、ソウジさん。私を忘れちゃあいませんよね?」


「久しぶり。もちろん覚えてたよ」


「この前はよくもいきなり帰しましたね!! 私を何だと思っているんですか!! ソウジさんはいつもそう、私を都合のいい女だと思って……ぐす、ぐす、あることないことでっち上げて社会的制裁を受けてもらいます!!」


「グレーなネタやめろ。悪かったよ」


「それでもわざわざ会いに来る私、なんて慈悲深い女神なのでしょう。まあこうでもしないと? ソウジさんへの好感度、低いままですからねえ。まったく、本当にしょうがないですねえソウジさんという男は」


 このウザさ、懐かしい。


「それより、どうよ、はじめてだろ? 車に乗るの」


「そういえば……ぬわあああ!!!! なんですかこれ!! 動いちょる!! 箱が動いちょりますよ!!」


「お〜、期待通りの反応」


 へへ、せっかくだ、もっとビビらせてらろう。

 修行の成果を見せてやる。


 集中して、車に俺の生命エネルギーをまとわせる。

 現在時速50kmを、アクセル全開で200kmまで上げる。


「ちょちょちょ!! 揺れまくり!! 揺れまくりです私のおっぱい!! そういうプレイなんですかこれええ!! ノーブラなんで勘弁してくださいよ!!」


「まだまだ」


 魔力操作で車の性能をパワーアップ。

 石ばかりのデコボコ悪路で、さらに加速。

 ははは、スピードメーターを振り切った!! 時速何km出ているのかわかんねえぞこれ。


「うひょおおお!!」


「ソウジさん!! いくら私の好感度が上がらないからって心中はよしてくださいいいいいっっ!!!!」


 すげえ、速すぎて目が追いついてない。

 景色が全部色とりどりの線に見える。

 これでも、魔力操作で動体視力もアップさせているんだけど。


「これなら今夜中に海を渡れそうだぜ、アンフ!!」


「……」


「アンフ?」


 あ、気絶してる。

 さすがにビビらせすぎたか。


 でもスクランさん、こんなポンコツをこの世界の人外に紹介するなって、どういう意味だったんだろう?


「むにゃむにゃ、ソウジさん……もっと優しく揉んでください……」


「なんつー夢を見てんだお前は」


「そこは親知らずです……」


「どんなプレイしているんだよ夢の中の俺はよ!!」


 そんなこんなで、俺たち? はアルエース大陸へと上陸したのだった。




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※あとがき

一章終了ですね。


アンフって、愛が重そうですよね。

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