異世界転移したら人類滅んでました。〜性悪女神に煽られながらもがんばります〜

いくかいおう

プロローグ

 若くして交通事故で死んだ俺は、気づけば真っ暗な空間にいた。

 地獄? って感じでもない。

 地獄にしては殺風景すぎる。


 針山も、血の池も、鬼やら罪人の魂なんてのもない。


「まさか、夢? 実はまだ生きてましたとか?」


 俺が思考にふけていると、頭上から光り輝く女性が降臨なさった。

 長い金髪に古代ギリシャ風の服装。

 いかにもって感じの女。


 あ〜、これわかったわ。展開予想できますわ。


「私は女神」


 ほらね。


「あなたは生前、野良猫を保護したり、病気の老人を助けたり、まあとにかく徳を積んでいました」


「どうも」


「なので、別の世界で蘇らせてあげましょう。なにか要望はありますか?」


 おー、やっぱり異世界転生。

 本当にあるもんだなー。

 よかったー、生きてた頃たくさんアニメ見ておいて。


 割と動揺せず冷静に対処できるわ。


「えーっと、転生は嫌っすね。赤ん坊からやり直しとかしんどいんで、いまのままで異世界に行きたいっす。あとは……うーん、便利なチートが欲しいんですけど」


「いいでしょう。ではあなたを異世界に……あ」


「なんですか?」


「あー、いや、うーん」


 なんだよ、急に歯切れが悪いじゃん。

 まさか、しょうもない過去でも掘り返されたのか?

 そりゃ生きていれば、たまには小さな悪事くらいしちゃうけどさ。


 それで異世界転生はやっぱ無し、とか言われんの?


「うわあ、いやこれ、マジですか……。こりゃ参っちゃいましたねえ」


「なんすか、なんなんすか」


「えーっと、あなた、キャンプとか好きですか?」


「んー、そういうアニメは見てたし、憧れはありますね。やったことないけど」


「寂しがり屋だったりします?」


「そうでもないっすね。ひとりは好きです」


「じゃあいっか!!」


 え、なにが?

 めっちゃ怖いんですけど。


「では、異世界に飛ばします」


「ちょちょちょ、いきなり終わらせないで!!」


 問答無用で、女神様の輝きが増していく。

 眩しくて目を開けていられないほどだ。


 それに合わせて、だんだんと意識がぼんやりとしてきた。


「一応、伝えておきます。いまさっき、本当にいまさっきなんですけど、あなたが飛ぶ予定の異世界で……人が絶滅しました」






 こうして俺、八神ソウジの新たな人生が、はじまってしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る