第48話 天竜族

「モグモグ、パクパク、にゃー、ところでさ。ミネルヴァに質問があるんだけど……、モグモグ」

「もぐもぐ、パクパク、なに? フローラお姉ちゃん」


 フローラとミネルヴァが、食べながら会話している。

 器用だなー。


「こら、二人とも食べながら喋るのは止めなさい」


 ルイズお母さんが、注意する。

 あっ、なんか無意識に、『ルイズお母さん』って呼んでいた。


「ごっくん。にゃー、ゴメン……。あのさ、ミネルヴァって、生まれた時から、一人なの?」

「はいなの♪ 卵から孵った時には、誰もいないの。一人なの♪」

「じゃあ、ミネルヴァって名前は誰がつけたの?」


 フローラが、不思議そうな顔をする。


「自分でつけたの。たしか、孵化してから50年くらい経った頃につけたの」

「自分でつけたのですか?」


 ルイズが、驚く


「はいなの。物語に出て来た名前なの。素敵な名前だと思ってつけたの」

「もしかして、『ナルヴァンの英雄』?」


 エルフリーデが、尋ねる。

 ミネルヴァはコクリと頷いた。


 『ナルヴァンの英雄』は、ナルヴァン王国のお姫様ミネルヴァと、彼女を悪い魔法使いから助けた正義の騎士の物語だ。


 ミネルヴァは、一時期、人里に住んでいた事があるらしい。

 その時に、吟遊詩人が歌っていた物語で知ったそうだ。


「自分で名前をつけるとは……、何だか不思議な感じです」


 ルイズが、興味深そうに言う。

 俺も不思議に思い、仲間であるミネルヴァについて、もっと知りたいと思った。


「よければ天竜族についてもっと教えてくれないか?」

「もちろんなの♪」 


ミネルヴァが、説明する所によると、天竜族は卵から孵化した時は、人間そっくりの姿、つまり人化した状態で誕生するという。


 そして、生まれた時、すでに10歳児くらいの肉体をしているそうだ。


 誕生時には、既に天竜族や人間族の言葉を理解しており、一定の知識を保有しているらしい。


 そして、誕生した時点で、かなりの魔力を保有しているという。

 そして、数百年から数千年かけて成人となるそうだ。


 ちなみに自由に竜化できるようになるのは、個体差があるらしく、300年かかったり、1000年かかったり、バラバラだという。


「私は、角や、翼、尻尾は生やせるけど、まだ完全な竜化はできないの。逆に、角も羽も尻尾も隠して、完全な人化ならできるの」


 ミネルヴァの背中が光り、ドラゴンの羽が生えた。 

 同時に、お尻から尻尾も生える。

 短い時間なら飛ぶことも可能らしい。


 パタパタと可愛らしく、ミネルヴァの翼がはためく。


 やがて、魔法光を発しながら、ミネルヴァは翼と尻尾を消した。


 頭部の角も、魔法によって出し入れ自由であり、見た目は人間と完全に同じにできるらしい。


「そうか。だから人間とも交流できたんだな」

「はいなの♪ 自分から天竜族と名乗らない限り、人間だとしか思われないの」

「たしかに人間にしか見えません」


 ルイズが、感心した顔でミネルヴァを見る。


「うん。人間族の可愛い女の子にしか見えないにゃー♪」


 フローラが、ミネルヴァの頭を撫でる。


「ん。とても可愛い」

「愛らしくて、お人形さんみたいですよね」


 エルフリーデとルイズも、ミネルヴァの容姿を褒める。 

 なんだか、見てると癒やされるな。

 三人の綺麗なお姉さんが、末っ子の妹を可愛がっているような感じ。

 ……。


 あれ?


 ミネルヴァって、俺たちよりも年上だよな?

 話を聞いた限りだと、最低でも300歳以上では?

 ……。


 なんだか、頭が混乱してきた。

 まあ、いいや、ミネルヴァも妹扱いされて嬉しいようだし。

 ここは外見の年齢と雰囲気に従おう。

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